第15話 境界の守護者
「え〜と、あと一個ボタン押せば完了だから・・・」
「・・・ねえ、なんでこの子達、人の話全然聞かないの?俺、泣いていい?」
「バカなこと言ってないで、急いでアイツら止めるわよ!?このままじゃ、アタシ達の境界がどうなるか分かったもんじゃないわよ!?」
調律者と境界側の二人?がコントっぽいものを繰り広げる中、
「さて、どうしたもんかねえ。一応、休戦中ぽくなってるけどねえ」
「フム、ワレトシテハ、ショウショウアソビタリナイノダガナ」
トリックスターと穏やかな会話を繰り広げる、3分の1程の肉体となった多声の王。
なぜ生きていられるのかはわからないが、彼の基準ではこの程度の損壊ではまだまだ遊びの範疇らしい。
「キミも一緒にコーヒーを飲むのはどうだい?」
「コーヒー?ナンダ、ソレハ」
「この世で一番味わい深い飲み物さ」
「ホウ」
「どうだい?たまには戦闘以外にも遊びを求めては?案外面白いかもしれないよ?」
「ソウダナ、セッカクダカラゴショウバンアズカルトシヨウカ」
そういうと、多声の王の体がみるみる小さくなり・・・少年のような姿となった。
「それがキミの正体かい?」
「いや?体を構成する要素が足りなくなったから仕方なくこうなっただけだ」
言葉遣いが流暢となった多声の王。
やはり、彼といえども体の3分の1を失うというのはかなりの痛手だったようだ。
「ふー、これでなんとかなるな」
額の汗を拭う境界。
境界を吹っ飛ばす理由がなくなったのだから、自爆する理由がなくなったのでほっとしている様子。
「あんたは何もしてないけどね」
境界の相方がつっこむ。
「で?いつこのボタン押すの?」
「「もう押さないっつてんでしょうが!?」」
ーーーーーー
「くくく、こりゃあ、愉快なメンツだねえ」
ハカセMr-IIが堪えきれず笑いをこぼす。
研究室に戻ってきた“全員“。
いつも通りコーヒーを楽しむトリックスターに、おすすめの銘柄のコーヒーをもらう多声の王。
慎重に味を吟味する人間大の胃薬に、形状の安定しない手でコーヒーをつかんで口に運ぶ境界の二人。
ささっとコーヒーを用意して家族揃ってコーヒーを飲むアイルとハルとミカ。
胃薬MrーⅡをコーヒーで流し込むタケルを心配そうに見守るハカセ。
調律者達は・・・相変わらず自由に動き回っている。
「・・・この混沌・・・」
「・・・あえて言わずにおこうか、ふふふ」
楽しそうな彼らは放っておいて、
「で?あんたらは誰なんだい?」
「ん?」
なんか普通にコーヒーを楽しんでいた境界の二人に問いかけるハカセMrーⅡ(ちなみに胃薬はスルー)。
「ああ。一応、境界の管理者をやっている」
「へえ。管理者、ねえ。“ああいうやつの“管理もやってるのかい?」
そう言って指差す先にいたのは多声の王。
だが、ハカセMrーⅡの問いに、
「いや、あんな奴は知らん。“創った“覚えがない」
「ふうん」
手に持つライトノベルをパタパタとしながら考え込むハカセMrーⅡ。
「じゃあ、こいつらについては?」
そう言って、軍の研究資料から拝借した混沌側の機体の写真を見せると、
「ん?ああ、デブリか」
「デブリ?君たちはそう呼ぶのか」
「ああ。境界の中で時たま生まれる、意思も薄弱とし、形状も安定しないデブリ。それを適宜処分するのが俺たちの仕事なんだが・・・」
「その処分、うまくいっているのかい?」
境界側の返答にギラリと射抜くような視線を向けるハカセMrーⅡに、
「・・・お察しの通り、最近、急激に増え出してな。処分が追いつかないんだ」
「それがこっちに出てきて迷惑してるんだけどねえ」
「・・・それは申し訳ない」
「原因はわかっているのかい?」
「現在調査中だ」
「つまり、何もわかっていないと」
「・・・」
「まあまあ、そんな辛気臭い顔しないで。こっちの銘柄も試したらどうだい?」
空気を読まず、あるいは読んだ上であえて茶々を入れるトリックスター。
「トリックスターじゃねえが、何か力になれるかもしれないし、俺たちも会話に参加していいか?」
と、いつものように首をつっこむハル。
「とは言っても・・・」
「そもそも境界ってなんなんだ?」
まずはそこから話を始めようと、境界とは何かを聞いて見るハル。
「んー、言い方が難しいな。あれはそう簡単に説明できるようなもんじゃないんだが・・・一言で言えば、魔女の大釜だな」
「魔女の大釜?」
「ああ。管理者とは言ったが、全部を管理してるわけじゃない。そいつとの管轄も違うくらいだしな」
「そそ」
そう言ってもう一人の境界の管理者を指差す。
「俺の管轄してるところはここしばらく何もなかったんだが、どうやらやらかしたやつがいたらしく・・・」
と、そこまでいったところで、
「緊急警報!!仮称“巨大脅威“レベルの混沌機体が接近しています!!その数・・・不明!!」
「さて、こりゃあ、コーヒーブレイクしている時間は終わりのようだね」
最後の一口を飲みきり、トリックスターは戦闘準備に移る。
「整備の方は?」
「まだ終わってないよ!砲門がまだ半分死んでるよ!!」
「TYPEHも修理に回してくれ!」
「了解!」
アークの修繕も終わっていない段階での敵の襲撃。
「さて。ま、なんとかなるでしょ」
ハカセMrーⅡは余裕の笑みを浮かべ、画面いっぱいに展開されている敵部隊を眺めていた。




