n番目の異世界から
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何度も通い慣れた病院から帰寮する。
カウンセリングに採血など、各種検査……俺の立場では仕方がないとは言えども、体力も精神も疲弊するのは避けられない。
それでも通院を拒むことはできないし、今のところ抗うつもりもない。
俺は異世界人なのだから。
だから、この異世界のひとびとは俺のことを意思疎通が可能な変人ではないかと疑っている。
もしそうであれば、この世界のひとびとを悩ませ、ときに悲劇をもたらすヘンピトの研究に一石を投ずることになるかもしれない。
常識をそなえた大人は、未成年に見える俺を憐れんでくれるが、一部の大人は好奇心に満ちた目で俺を見てくるか、あるいは排斥しようと躍起になっているらしい。そうでない他の大人は俺には無関心だ。
そういった態度に、いちいちこちらが反応を返すのはもう疲れた。
俺はもう何度もこんなことを経験している。
ただ、「漂流」を続けてもうどれほどの時間が浪費されたのかは、すでにおぼろげになっていた。
そうして時間を浪費しているというのに、それでも失敗ばかりを経験している気がする。
私という仮面をかぶって、異世界へ行ける方法を探し回って、ひとの好い人間の気を引くように振る舞って――。
けれど失敗しても、残るものはあるのだということは、少しわかった。
――あのとき。三人が迎えに来てくれて、「異世界へ行く」という肌感が急速になくなった。出入りができなくもない異界ではなく、不可逆の異世界へ行くという感覚を得てから、こんなことになるのは、初めてだった。
……相変わらず、いるべき場所は、いてもいい場所はわからないけれど、帰ってきてもいいと言うのなら、この世界が俺の帰る場所だって思いたい。
ここにいたい。
……スマートフォンを持ち、チャットアプリのアイコンをタップする。
その中にいつもの日常があるのを見て、そっと安堵の息を吐いた。




