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夢幻酷法〜Starting Story〜  作者: SOR
1章 はじまりの!
5/18

約束の髪飾り

「あなたが相田如紗(あいだきさ)ね。湯加減はどうだった?」

「と、とても良かったです。スッキリしました」

「そう、それはよかった」


あの後、私はミロック城に常設してあるお風呂へ入った。

それはもう言葉に出来ないほど豪華で、さっき起こったことなど忘れてしまうくらいだった。

さすがミロック。


「私はアヤメ、八代目ミロック王よ」


ミロック王!?

そんな人が私に声をかけてきた!?



「あ、相田如紗です!あのアヤメ先輩…」

「アヤメでいいよ」

「えっと…アヤメさん、後ろにいるスーツの方々は?」

「ああ…これは気にしないで」


ボディガードだろうか。

黒いグラサンをした男の人が二人立っている。


「えっと憂間京?くんだっけ。

彼なら今むつきと優とで話をしてるよ。

お風呂上がったら連れてくるように言われたんだけど」

「ありがとうございます!それじゃ私もそっちに…」

「急がなくてもいいからね」


アヤメさんは優しい声で言った。


「何があったか優からなんとなく聞いた。

それにミロックに来たの初めてだったんでしょう?

大変だったわね、もう少し休んでいって」

「あ…」


アヤメさんの言葉を聞いて、私の中で何かがプツンと切れた。

改めて何が起こったのか全て思い出したのだ。

気がついたら私はアヤメさんに抱きかかえられながら泣きわめいていた。


痛かった、辛かった、悲しかった。


あんなに理不尽だと思ったことはなかった。

アヤメさんは黙って私のことを抱きしめてくれた。

落ち着いた後、急に恥ずかしさがこみ上げてきて私はそっとアヤメさんから離れた。


「すみません、私…」

「ううんいいの。よく耐えたね」


その言葉にまた泣きそうになる。


「誰かを頼っていいのよ如紗。

私はあなたの味方、悩みがあるならなんでも聞いてあげる。我慢しちゃダメ」

「はい…」


私は涙を流しながら少し笑った。

ミロックの王ってこんなにすごい人なんだ。

あれだけ沈んでいた気持ちが一気に晴れていく。


「よし、もう大丈夫?」

「大丈夫です、ありがとうございます!」


アヤメさんは私を勇気づけ、頑張れと背中を押してくれた。

京くんと同じように一生尊敬できる人と出会った瞬間だった。




アヤメさんに案内され、私は京くんたちがいる部屋へたどり着いた。

予想とは反して少し明るい雰囲気だったが、私が入った瞬間に空気が重くなった。


「相田、だったな。

すまない、まさかこんなことになっていたなんて…」


卯月先輩が頭をさげる。


「なんで卯月先輩が謝るんですか。私は大丈夫です」

「如紗ちゃんは強いなあ。

ところで優、アヤメさん。ちょーっと用事があるんだけど」

「用事?それなら後にし…」

「今じゃないとダメなんだよね??」


威圧をかける如月先輩に何かを察したアヤメさんは卯月先輩を引っ張り出した。

なんとなく勢力関係が垣間見えたな…

二人きりになった私は、京くんに目をやる。

彼はずっと下を向いたままだった。


「京くんあのね、私何も気にしてないよ」


返答のない京くんに向かって私は続けた。


「辛かったし悲しかったしみじめだった。

でもあの時感じたのは、住民に対する怒りや嫉妬じゃなかったよ」


そこまで言うと、京くんは私の身体を抱きしめてきた。それはとても強い力だった。


「ごめん…ごめん如紗…お前のことを守ってやれなかった…」

「うん…」


そっと京くんの身体を私も抱きしめ返す。


「悔しい…自分が悔しい…あれだけ言われて何も言い返せなかった……。

悪いことなんてしてないのに、言い返せなかった…悔しいよ如紗……」

「うん……」


京くんは涙を流していた。

これじゃさっきの私とアヤメさんみたいじゃん、立場は逆だけど。


「…泥は取れたか?」

「取れたよ、聞いてよ京くん。ここのお風呂すごく綺麗なんだよ。それで…」


京くんはそっと私の頬に触れる。

その手はとても温かかった。

まるで大切なものを丁重に扱うように京くんは頬を撫でた。

それがくすぐったくて、くすぐったくて。


「ミロックの人たちはみんなあんな感じなのかな」


私は京くんに尋ねた。


「今回みたいに直接動くのはあんまりないが、日常茶飯事ではあると思う。

裏で何を言われているのか分からない」

「私、変えたい」


京くんの手を握りしめて私は言った。


「ミロックを変えたい、四醋剣はそんなものじゃないって伝えたい」


身体を離すと京くんは笑いかけてくれた。


「それが、如紗の夢?」

「そう、かもしれない。実行務の夢もあるけど」

「それは俺の夢だろ、如紗のじゃない」

「それじゃこの思いが夢に繋がるなのかな…なんか恥ずかしいな」

「俺も応援する。必ず成功させよう」


京くんと指切りをした。


「Be Quietのように組織を作ればいい。

四醋剣保持者で俺たちと同じような思いを抱いている人を集めた組織を」

「そんなこと出来るの!?」

「申請とかいろいろ手続きは必要だけど、不可能じゃないよ」

「やろう京くん。明日からまた話し合いだね!」


さっきまで2人で泣いていたのに、今はもう笑っている。

こうやって毎日人は成長していくのかもしれない。

平凡な私の毎日は、確実に変化を起こし始めていた。



「それで、メンバーはどうするんだ?俺を入れてもまだ二人だぞ」

「そもそも四醋剣を持っている知り合いがほとんどいない…」

「如紗はそうだろうけど俺もいないな。そこまでミロックに出入りしているわけでもないし」


ポンッと脳内に仁奈の顔が浮かぶ。


「…Be Quietだし多少は物知りかも?」


どうやら私の考えていることが伝わったらしく、京くんも頷いた。


「行ってみるか、仁奈のところに。きっとBe Quietの基地にいると思う」

「あっ先に行っててくれる?」

「別に良いけど。場所分かるのか?」

「アヤメさんにお礼がしたいんだ、話聞いてもらったし」

「ほう、もうミロック王と馴染みになったのか」

「ほんと偶然だけどね」

「ならアヤメ様から場所を聞くといい。俺は先に行ってるぞ」

「分かった」

「如紗、くれぐれも気をつけるんだぞ」

「大丈夫だって、もう子どもじゃないんだから」


京くんは大げさに私の手を握るとミロック城を後にした。

さあ早くアヤメさんに会って京くんの後を追おう。


それにしても、四醋剣保持者を集めた組織か…

まだ口約束だけではあるけど必ず実現させたい。

京くんはいろいろ手続きが必要だと言っていた。

ということは、Be Quietみたいに組織名も必要になってくるのかな。


どうしよう、私壊滅的にネーミングセンスというものがないのに。

この辺もまた京くんと相談しよう。


部屋を出ようとすると何か人影が見えた。女の人のようだ、もしかしてアヤメさん?


「アヤメさん、さっきはどうもありがとうございました!」


私は大きく頭をさげる。

その人影は私に気がつくとこちらへ向かってきた。

近づくにつれて私の顔は青ざめる。

この人、アヤメさんじゃない…!?


「ゴメンね」


女の人はそうとだけ呟くと私の頭に何かをぶつけた。

一瞬クラッとなった後そのまま地面に倒れこむ。

どういう…こと…?

薄れ行く意識の中で派手なマントが目に入ってきた。





「何もここまですることなかったんじゃ…直接的には関係ないだろう」

「そうかもしれないけどこれくらいして当然よ」

「まあそうかもしれないけどさ。

なんか悪いことしてるみたいで気が引けるなあ…」


男女の声が聞こえるが、如月先輩と卯月先輩ではない。

私はゆっくりと目を開ける。そこにいたのは…


「あ、あなたたちは誰??」

「あっ起きた?確かさっき会ったよな。

俺はツキ。Be Quiet医務班に所属している」

「同じくBe Quiet医務班に所属しているツミよ。

よろしくね相田如紗ちゃん」


思い出した、この人たちは仁奈に突っかかってた人だ。

身体が動こうとするのを何かが拒んだ。

ロープが巻きつけてあったのだ。


「簡単に言うと生贄?って感じかな」

「あははっ生贄なんていい言葉ね。

その通り、あんたはニーナを釣るための生贄」

「なんで、なんでこんなこと…」

「あんたにはどれだけ努力しても上にあがれない者の痛みなんて分からないでしょうね」


ドスのきいた声でツミは言った。


「ニーナはほんと憎いけどこの子は別に悪くないんだよな。申し訳なさがあるよ」

「そんなの捨てちゃいなよツキ。どうせこいつらもニーナと同類よ」

「あ、俺さっきで市場で聞いたわ。

確か四醋剣保持者でリンチにあいかけたって…」

「マジで!?やっぱすごいじゃんニーナって。

類は友を呼ぶとはまさにこの事だね」

「仁奈のことを、悪く言わないで」

「はあ?」


私は小さい声でそう言った。


「大人しくしてたら離してやるのに反抗するつもり?

あんたを誘拐したのには理由があるのよ」


来い、とツキが合図をすると裏からがたいのいい男の人たちがゾロゾロと出てきた。


「あんまりそういう現場には居合わせたくないから、始めるなら言ってねツキ」

「俺だって嫌だよ、呼んだのはお前だろ」

「つ、ツキさん…この娘ですか…その、捕食してもいい女っていうのは……」

「その言い方気持ち悪いからやめて。

意味合い的には合ってるけど」


ま、まさかこの状況って…


「普通に可愛いのにもったいねえよなあ」


そう言うとツキは私のアゴをつかむ。

んぐっと声が出る。


「つ、ツキさん…俺らもう……」

「待て、早まるな。約束の時間が過ぎてからな。

俺らの目的はニーナの呼び出しだ」

「そういえばあんたら束縛系が好きとか言ってたっけ」

「お恥ずかしながら…」

「仲間の性癖を聞いちゃうとか最悪なんだけど、ほんとニーナは許さないから」


それは仁奈は関係ないのでは??


「というかこの趣味の悪い髪飾りはなんなの。

ほんと目障りなんだけど、ダサすぎ」

「待って、離して!」


ツミは私の髪のリボンを外そうとする。


「抵抗するってことはこれよっぽど大事なものなんだ」


この髪飾りは、小さい頃加羅くんからもらったものだった。

周りの人からはダサいとか散々言われたけど、それでも加羅くんが似合ってると言ってくれたからずっと身につけていた。

加羅くんとの、思い出の髪飾りなんだ。


「ツキ、ツミ!こんなことするなんて卑怯よ!!」

「おっヒーローのお出ましだあ〜」

「仁奈…」


仁奈は肩で息をしながら叫んだ。


「如紗は関係ないでしょう!?

なんで、なんでこんなことをするの。

狙うなら私だけを狙えばいいじゃない!」

「それだけじゃ面白くないのよ」


ツミは冷たく言い放った。


「面白いことも聞けたし、ねっ?」


そう言うと私の髪を引っ張る。

お目当はもちろん、あの髪飾りだ。

抵抗しようにも手足が縛られていて動けない。

スルッと髪飾りがツミの手に渡る。

ニヤリとしたツミは、窓の外からその髪飾りを放り投げた。

ザーッという音が聞こえてくる。どうやら雨が降っているらしい。


「あ〜すっきりした。でも本体を殴らないと目的を果たしたとは言えないわね」

「ツミ、このことQuiet様が知ったらどうなるか分かってるの?」

「馬鹿ねえ、上手くやるに決まってるでしょ」


ツミと仁奈が話している間にツキは私を縛っているロープをさらに締め付けた。

ロープがカラダに食い込んで痛みが増す。


「さあ、どうする仁奈。

命乞いしてあげたらこの女は解放してあげる。

早く頭を地面につけなさい、コネでごめんなさいって。

実力がなくてごめんなさいって」


な、何を言ってるんだこの人は!?

結局は仁奈への鬱憤を晴らしたかっただけ?

まだそんなに出会って時間は経っていないが一つだけ確信していた。

それはもし仁奈が土下座をしても、ツミは絶対に許したりしないということだ。

その証拠に、今ツミはこの女『は』解放すると言った。

私が解放された後、仁奈はどうなるんだろう。

…考えたくもない。

それはきっと仁奈にも伝わっているはずだ。


「…分かった」

「仁奈!?」


仁奈はそれだけ言うとその場で座り込み正座をする。

その様子をツキとツミは嬉しそうに見ていた。

こんなのおかしい、おかしすぎる。


「早く地面を舐めなさいよ!!

ごめんなさいって命乞いをしなさい!!」


仁奈の手が震えているのが見える。

そして微かに口が動いた。


『なんで、どうして』


確かに仁奈は小さな声でそう言った。

今日のことがフラッシュバックする。

あの時、住民から敵意を向けられた時に感じたのは、怒りでも嫉妬でもなく自分の無力さだった。

分かっていても結局自分は何も出来なかったんだ。

それと同じ思いを今、仁奈が噛み締めている。


「如紗ちゃん、仁奈!そのまま伏せろ!!」


どこからか大きな声がする。



『四季剣解放、新月!』



その声がした次の瞬間、大きな地響きが起こった。

しかし私と仁奈を綺麗に避けるように起こったのだ。


「な、なんだこれは…」


地面の振動が身体まで来ているのかツキとツミはその場で座り込んでいる。

そんな二人に加羅くんは警察手帳のようなものを見せつけた。


「実行務候補の三宅加羅だ。

もうすぐ実行務もBe Quietもここに来るだろう。大人しくしておけ」

「じ、実行務だと?お前みたいなひよっこがっ…」

「そんなひよっこに捕まるお前らはなんだっていうんだよ」


そう言うと、加羅くんは私のロープを解いてくれた。


「大丈夫か如紗ちゃん。…ってロープの跡残っちゃってんな。あとでりゅうさんに来てもらうか」

「りゅうさん…?」

「ああ、卯月(うづき)りゅう。あの優さんのお兄さんだ」


そういえば、加羅くんは卯月先輩のもとで動いてるって…


「ねえあんた、ちょっとは私の心配もしなさいよ」

「悪い悪い、Be Quietのニーナ・テンバーさん」

「そんな風に呼ばれるのは気に食わないわね」

「いやあでも間に合ってよかった。

ちょっとでも遅れてたら土下座するところだったもんねえ」

「うるさい、余計なお世話。

それに土下座なんてするつもり初めからなかったわ」


仁奈は汚れた服をパンパンと手ではたいた。


「ところでさ、如紗って馬鹿なの?

四醋剣使っちゃえばあんな奴らぶっ倒して自分だけでも逃げられたのに」

「そうかもしれないけど、仁奈を放っておけなかった」

「だそうですよテンバーさん」


仁奈はバツの悪そうに目を逸らす。


「…仁奈でいい。ごめんね如紗、私のせいで…」

「そんなこと思ってないよ」

「でもツキとツミは如紗を利用して私をおびき寄せた。生贄だなんて言って…」


仁奈は握っていた手紙を私に見せる。

そこには『大切なお友達をケガさせたくなかったらすぐに来い』という脅迫文があった。


それを見た加羅くんが、これはしっかり証拠として受理されるねえと言う。


「仁奈こそ私のことなんか気にしなくても良かったんじゃないの?こんなの罠だってすぐに分かるよ」

「如紗を一人になんて出来るわけないでしょ!?」


いきなり叫ぶと仁奈は私を抱きしめてきた。

そしてかすれた声で訴えかけた。


「結局、みんなの言うとおりなんだ…。

すごいのはファンセント・ガーネであって私じゃない。

いざという時何もできないのよ。

何も力を持たないことより、力があるのに目の前の大切な者を守れない方がよっぽど悔しいよ」


…この人だ、私の全てがそう言っている。

違うと思っていてもそれを伝えることが出来ない、そんな無力さを抱えてこの人も生きている。

仁奈はこれから生きていく上で必要な存在になる。


「加羅いるかー?確かここって聞いたんだけど…」

「りゅうさん!こっちっす」


りゅうさんと呼ばれた男の人はそこか〜と手を振りながら近寄ってきた。


「そんじゃさっさと終わらせるぞ。

四季剣解法、清和(せいわ)


りゅうさんは四季剣を解放し、切先をこちらに向ける。

すると不思議なことに私の身体の中の疲労が一気に取れていった。

まるで丸一日ぐっすり寝たような気分だ。


「どうだ?調子は」

「すごい…疲れが抜けていきます」

「そりゃよかった!俺の四季剣は攻撃手段じゃなくて、こういう治癒能力に特化しているものなんだ」


京くんの四醋剣と似た能力…


「アロマセラピーみたいなイメージなんですよね」

「そうそう、さすが加羅しっかり勉強してんね!

あれ不思議だろ。ああいう癒しを与えたいってずっと思ってたんだ」

「アロマ、セラピー…?」


確か匂いで人の身体と心を癒すことが出来るものだ。

四醋剣もみんなの中でそんな存在になってくれればいいのに。


…四醋剣のアロマセラピー?

といっても四醋剣だとちょっと長いし四季剣と被ってるな。

アロマセラピーのアロマも意味合いが違うし…


「シーズ、セラピー…」

「如紗ちゃん何か言った?」


私はそのまま加羅くんの手を取った。


「シーズセラピーだよ!決めた、私シーズセラピーを設立する!」

「シーズセラピー?なんだそれ、俺にも聞かせてくれよ」


りゅうさんが聞いてきた。仁奈も聞きたそうにしている。


「ミロックでの四醋剣の認識を変えるんです。

アロマセラピーのように人々の心を癒す、そんな存在にしたいんです」

「四醋剣を、ねえ…」


りゅうさんは難しそうな顔をした。もちろんこれも想定内だ。


「簡単なことじゃないのも分かっています。

でもそれが私の夢なんです、叶えたいんです」


加羅くんも私のことをじっと見つめていた。


「仁奈、仁奈にもシーズセラピーに入ってもらいたいんだ」

「私が!?私はBe Quietだよ。それに四醋剣なんで持ってないし…」

「持ってるかどうかが重要なんじゃない、心が大切なんだよ」


仁奈にも大きな夢があった、Be Quietとしての誇りも。


「ふふっ、いいよ。私如紗のこと好きだし」

「えっ!?」


なぜか加羅くんが反応した。


「如紗のそういう所ずっと好きだった。

こんな私なのに見捨てようとしなかった。

初めからそんな気がしたの、如紗は私の人生を変えてくれる人なのかもしれないって。

あ、京への告白は前座ね」

「ぜ、前座…??」

「ついていくよ、如紗の夢に」

「仁奈…!」


仁奈は満面の笑みを私に向けてくれた。


「うんうん、若いって良いね。

そういうことなら俺から話をつけておくぜ。

きっとみんな賛成してくれると思う」

「ありがとうございます、りゅうさん!」

「んじゃまた書類とか書いてもらうと思うからよろしくな。それじゃ俺はこれで」


再度お礼を言うとりゅうさんは部屋を出て行った。


「あれ如紗、そういえば今日髪飾りはつけてないの?」

「あっ…」


先ほどのことがフラッシュバックする。

ツミに髪飾りを取られて、それで窓から…

雨はまだ降り続いていた。


「ごめん加羅くん…さっき投げ捨てられちゃった…」

「あの髪飾り、加羅からもらったの?」

「おう、小さい頃如紗ちゃんにあげたんだ。

まあでもいいよ、また新しいの買ってやるって」


そう言うと加羅くんは気にするなと私の頭を撫でた。


「あの髪飾り、全然センスないし新しいの買ってもらったら?

あっでもまた加羅が買うのならダサくなるのか」

「うるせえよ!俺が似合ってるって言うんだから仕方ねえだろ!?」

「で、加羅はどうすんの?」

「へっ?」

「シーズセラピー。どうせ誘うつもりなんでしょ、如紗」


私は加羅くんをまっすぐ見た。


「でも俺四季剣だぜ?猿と犬が一緒にいるようなもんだ」

「ううん、仁奈にも言った通り四醋剣を持っているかどうかでメンバーを決めたくない。

むしろ四季剣保持者がいることで分かることだってあるし。

志を共にした人たちでシーズセラピーを作っていきたい」

「なら入るか」

「早っ」


加羅くんの言葉に仁奈はギョッとする。


「んじゃこれで如紗ちゃん含め三人ってことだな!」

「いや、もう一人…」

「…もしかして憂間か?」

「まあそりゃそうでしょうね、京は如紗の恋人なんだし」

「えっ何それ、俺聞いてないんだけど」

「あら〜幼なじみなのに聞いてないの?信頼されてない証拠ね〜」

「京くんは恋人じゃないです…」

「そんな真っ赤な顔しながら言われても説得力ないよ?」

「恋人じゃないけどシーズセラピーには入るというか…」


私は加羅くんの顔色を伺った。


「俺は気にしてねえよ。

むしろ突っかかってくるお子様はあっちの方だし」


さあ帰るか〜と加羅くんが呟いた。


「なんだみんなここにいたのか」

「京くん!?」


なぜかずぶ濡れの京くんが中に入ってきた。


「なんで傘持ってるのに雨に濡れてんの京」

「ちょっと壊れちゃって」

「確かに憂間ってことごとく運から見放されてそうなタイプだよな」

「ああ?なんだと??ヤンのか?」


一昔前のチンピラみたいなこと言ってるなあ…


「あれ、如紗ちゃんドアのとこになんか落ちてるぞ」

「私の髪飾り…!」


私は濡れている髪飾りを手に取った。やはりここから落ちたのかもしれない。

そう思い触っていると、何か水草のようなものが付いていた。ということは川に落ちてたのかな…

だとしたらなんでこんなところに?


「早く戻ろう。風邪引きそうだ、俺が」

「憂間は傘もさせねえのか。さすがお子ちゃま。お世話してあげまちょうかね〜」

「いい加減にしないとぶっ飛ばすぞテメェ。表こいよ」

「残念ながら俺はこれからまだ仕事があるんで〜」

「何を一丁前に」

「私もまだ任務残ってるから二人で先に帰っといて。

また後で集まりましょう」


仕方ないなと背中を向けた京くんの背中には、髪飾りと同じ水草が付いていた。

もしかして京くん、傘が壊れたんじゃなくて…


「ねえ京くん。その髪飾りどこにあったの?」


京くんは私に背を向けたまま言った。


「…大事なものならちゃんと持っとけよな」

「えっなんて?」

「だから!!三宅との大事なものなら大切に持っとけって」

「…もしかしてだけど妬いてる?」

「ち、違うわ!!」


真っ赤にして否定する京くんにつられて私も赤くなる。


「でもその髪飾り俺は似合ってると思う」

「えっ…」

「あ〜もう、早く帰るぞ!シーズセラピーの書類書くんだろ!?」

「なんで知って…いつから聞いてたの!?」


何も答えない京くんの背中を、私は顔を真っ赤にさせながら叩いた。


「というかこの髪飾り似合ってないとか言ってなかったっけ…」

「言葉のあやってやつだよ」

「素直じゃないなあ…」

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