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夢幻酷法〜Starting Story〜  作者: SOR
1章 はじまりの!
2/18

分かち合う夢

前回のあらすじっ☆

私、相田如紗(あいだきさ)!高校三年生!

偶然拾ったキーホルダーはなんと四醋剣という武器だったらしく、それを見た憂間京(ういまきょう)くんと謎の人物に襲撃されてしまった!

そしてなんか成り行きで四醋剣保持者になってしまった私は経緯を憂間くんから聞く。そして一段落して帰宅しようかと思っていた時、公園に通りがかったのは…


「あれ、如紗ちゃん?如〜紗〜ちゃ〜ん〜?」

「なんだお前」

「お前こそ誰だよ」


憂間くんは睨みを効かせる。

私はというと、頭が追いつかず少しパニックになっていた。


「忘れちゃったの?加羅(から)だよ如紗ちゃん。三宅加羅(みやけから)

「ほ、ほんとに加羅くんなの…?」

「ほんとだって!なんだつれないなあ、幼なじみじゃないか」

「相田さんの幼なじみ?こいつが?」

「人に指を差すな、無礼者が」

「うん、加羅くんは小学校卒業までお隣さんでいっぱい遊んだりしてたよ。

ただ留学で離れ離れになっちゃって」

「なのに忘れるってか?俺は如紗ちゃんのこと忘れたことはなかったぜ」

「その程度の存在だったってことだろ」

「なあ如紗ちゃんさっきから何こいつ?」

「だ、だってほら見てよ!」


私はケータイに入っている小学生の頃の加羅くんの写真を見せた。

憂間くんが少し引きながら言った。


「これ同一人物?」

「ね?驚くでしょ?わかんないよこんなの」


ケータイの中には仄かに面影は残っているが、とても地味な雰囲気の加羅くんが映っていた。


「そりゃあ六年近くアメリカにいたら黒い髪も金色になるよ」

「なんか性格もオープンになったような…」

「アメリカだからな」

「便利な言葉だな、アメリカ」

「でもなんでこんなタイミングで?」

「ああ、如紗ちゃんと同じ大学行きたいなと思って」

「大学…」


ズンッと心に重しがかかる。

進路のことちょっと忘れかけてたのに…


「たぶん高校も如紗ちゃんと同じとこ通うと思うよ、卒業まで」


卒業までってもう10月だよ、と突っ込みたくなったけど私は飲み込んだ。


「そっか!突然だけどまた会えて嬉しいよ加羅くん」


とりあえず話題をそらそうと私は笑った。


「俺も嬉しいよ如紗ちゃん。でも全然変わってないな」


くしゃくしゃと私の頭を加羅くんはなでた。


「そりゃ加羅くんに比べればね」

「言うじゃねえか」


久しぶりの再会を喜んでいると、どこからか視線が刺さった。

後ろに振り返ると憂間くんがこっちを見ていた。


「ところでこいつ誰?もしかして如紗ちゃんの彼氏?」

「ちっ「違うよ」


あれ、私が否定する前に憂間くんが全力で否定してる。

それはそれでちょっとさみしいんだけど。


「だよな〜!俺まだ約束覚えてるからな」

「私も覚えてるけど…」

「おう、ならよかった」

「覚えてるけど果たすのと覚えてるのはまた違うっていうかなんというか…」


もごもごと口をこもらせて私は言った。


「でも俺があげた髪留め、まだしてるじゃん」

「それ、お前があげたのかよ」

「そうだよ、黄色似合ってるだろ如紗ちゃん」

「…趣味悪い」

「ああん!?」


特に髪をいじらない私だったが、いつも右側にオレンジ色の髪留めをしていた。

留学に行って寂しくないようにと加羅がくれたものだ。


「あ、そうだおばさんにお土産持っていけってお母さんから言われてたんだった。

帰ろうぜ如紗ちゃん」

「えっちょっ、ちょっと待っ…」


私の腕を引くと加羅くんはとんでもない力で私を連れ帰った。

呆然としている憂間くんが見える。

あとで謝罪のメールをしておこう…






「おばさんただいま!加羅だよ!」

「あら加羅くん!!?びっくりした、おかえりなさい!」

「うちのお母さんも近所の挨拶まわり終わったら来るって」

「ええもう聞いてるわ、今日は夜ご飯も食べていってね」

「わーい、ごちそうさんっす!」


靴を脱ごうとする加羅くんは、玄関の写真立てを見てあるものに気づいた。


「…ほんとに持っててくれたんだな」

「あっこ、これはその直し忘れてずっと置いてるというかなんというか…」

「やばい…マジで嬉しい……」

「?加羅くん?」

「へへっなんでもない。ありがとう如紗ちゃん。おばさんトイレ借りていい〜?」

「突き当たりを左ね」

「変わってないから知ってる〜。それじゃ如紗ちゃんまたあとで」


玄関に立てていたのは子どもの頃、加羅くんと私で書いた似顔絵だった。

画用紙には私と加羅くんの名前が書いてある。

私にとってとても大切なものだった。



『私、大きくなったら加羅くんのお嫁さんになる!』

『んじゃ俺は如紗ちゃんのお婿さんだな』

『忘れないように名前書いとこうよ』

『いいよ!それじゃ俺と如紗ちゃんの二枚描こう!

大事に持っとくんだぜ!」



当時加羅くんが私のことをどう思っていたかは分からない。

ただ、私が加羅くんを好きなのは確かだった。

いつも優しくて明るくて、私のそばにいてくれる加羅くんが大好きだった。


「…まあ、こんなこと今更本人に言えるわけないけど」


私はそう呟き靴を脱いで家に上がった。





「誰にメールしてんの?」

「今日公園で会った男の子だよ」

「あのなんか地味なやつ?くせっ毛だし前髪長いし」


そりゃ加羅に比べたらね。


「前髪は気になるよね、今度言ってみようかな」

「あの時は誤魔化したけど、本当は付き合ってるとかじゃないの如紗ちゃん。

なんか真剣な話してたっぽいし」


私は慌てながら否定した。


「ほんとに違うよ!

というか話し始めたのも最近だし、そんな感情を向こうが持つかどうか」

「…あっちは好意透けてたけどな」

「え?光一が蹴ってた?」

「如紗ちゃん耳鼻科行った方がいいぞ」

「し、失礼な!」


はっはっはと加羅くんは笑った。

まるであの頃が戻ってきたようだった。


結局その日は夜遅くまで加羅くんと話をした。

子どもの頃の懐かしい話をしたり、アメリカに行ってからの話をしたり…とにかく楽しい時間だった。


ああ、私はまだこの人のこと好きなのかなと思った瞬間もあった。

でもそれ以上の感情は不思議と沸いてこなかった。

あの頃抱いていた感情はもう、ない。


「…いつまでケータイ見てんの如紗。もうすぐ加羅くん帰るわよ」

「いや〜まさかケータイに負けるとは」

「現代っ子ねえ如紗ちゃんも」

「えっもう帰るんですか!?」

「日本の家の片付けが終わってないのよ。また遊びにくるわね」

「ええ、いつでもいらして。加羅くんも連れてね」

「ありがとうございます!

それじゃ如紗ちゃんまた明後日学校で」

「うん、おやすみなさい」


あれなんかサラッと気になること言ってなかった?

もう転入してくるの!?


さすが、行動力の化身。私とは大違いだな…

ということは、通学も一緒…になるのかな。

嬉しいはずなのになぜかモヤモヤが晴れなかった。

これまでのモヤモヤとは違う、理由の分からないモヤモヤ。


部屋に戻るとまだ白紙の進路希望調査表が机の上に置かれていた。

眠気と疲れでまぶたが下がってくる。

提出いつだったっけ、まだあった気がするな。

私はカバンの中へと用紙をしまった。





「べ、別に迎えに来なくても…」

「迎えにっていうか家隣だし、トイレ行ってるようなもんだよ」

「例えがよくわからないなあ…ゆかっていう子も一緒なんだけどいい?」

「おういいぞ。仲良くしとかないとな、俺も同じとこ行くんだし」

「あっ話をすれば」


おーいと私はゆかちゃんに手を振った。

私の隣に人がいることに驚いたゆかちゃんは慌てて走ってきた。


「Who is this!?」

「ゆかちゃん、キャラブレてるよ」

「ご、ごほん。えっとあなたは…?」

「今日から転校することになった三宅加羅です。如紗ちゃんの幼なじみ的な」

「あら〜!そうだったのねごめんね如紗、私空気読めなくて」

「…え?」

「それじゃまた後で〜!」

「ゆかちゃん!?」


一目散に学校へと駆けて行った。

彼女は何か大きな勘違いをしていないか…?


「まあ仕方ない、行くか。遅刻すんのも嫌だし」

「そうだね…あっ」


話をしていると前に見覚えのある姿が見えた。


「おっ憂間じゃん!」


私が声をかける前に加羅くんが絡みに行く。


「おはよう憂間くん…」

「うぜえ」

「ひっ!?」


ものすごい顔でガンを飛ばした憂間くんはそのままスルーして行ってしまった。


「悲しいねえ、俺は仲良くしたいだけなのに」

「加羅くんほんとにそれ思ってる?」

「思ってる思ってる、マジで!」


どうしよう。

まだまだ四醋剣に関して分からないことだらけで今日話をしようと思ってたのに、憂間くんと微妙な感じになってしまった。

はあ、こんな調子じゃ先が思いやられるな……





『如紗ちゃんごめんね、ちょっと部活のOB訪問誘われたから行ってくるわ!先帰っといて!』


加羅くんからのそんなメールを見たのは放課後だった。

OB訪問に誘われるってなんなんだ…転校初日だぞ…

あ、でもこれは憂間くんに近づくチャンスかも。


「あっゆかちゃん、憂間くん見てない?」

「憂間ならもう帰ったよ、なんかお母さんの調子が悪いとか」

「えっそうなの!?」

「うん、あそこ片親だからねえ…いろいろ大変なんじゃない」

「…なんで憂間くんのこと詳しいの?」

「そりゃ同中だったし」

「なるほど…」

「そんなことより如紗、加羅くんほっといて憂間と浮気?良くないなあそういうの」

「誤解だよ!!」


加羅くんは予想通り、もう学校中で噂になっている。一目惚れをして告白をした後輩もいるそうだ。


クラスが離れたことだけが唯一の救いかもしれない。幼なじみだとバレたらめんどくさいことになる。

どうしよう、今日の放課後は何かしら予定があると思ってたから拍子抜けしちゃった。

…憂間くんの家寄ってみようかな。





ポツポツと憂間くんの自宅へと向かう。

場所知らないけどまあなんとかなるでしょうと楽観的に歩いていると、大きな病院があった。


そういえばこの辺で病院といえばここしかない。

お母さんの調子が悪いとゆかちゃんも言っていた。

もしかすると憂間くんに会えるかもしれない。

私は病院付近のベンチに腰を下ろした。




ついでに憂間くんのことについて整理しておこう。

四醋剣保持者で、異世界ミロックにおける四醋剣の立場をよく思っていない。

そしてそのミロックをまとめている実行務長である卯月優(うづきゆう)先輩に惹かれ自分も実行務を目指している…



あれ、ちょっと待って。これって大丈夫なのかな?


実行務は王とは別だが、国の代表であることに変わりない。

もちろん住民の声を聞き入れることが大切になってくるだろう。


ということは憂間くんはどうなる?


ミロックの人たちは、四醋剣を悪として捉えている。その悪そのものを持っている憂間くんに実行務になる未来なんてあるのか?

もし卯月先輩がいいと言っても、それを住民は許すのか?


この事を本人が気づいていないわけがないだろう。

ということは憂間くんは、叶わない夢を追いかけ続けている…?



悪、と私は声に出してみる。

そもそも悪とは何なのだろう。

この前襲ってきたBe Quietの女の人だってミロックを守るためにやったのだ。


もし自分が四醋剣の被害に遭っていたら、Be Quiet側に立って憂間くんを攻撃しただろう。

かと言って、四醋剣が絶対的に悪いなんてことはないのだ。


あの時、女の人が私じゃなくて憂間くんを襲ったのは

まだ私が四醋剣を持っていると確信が持てなかったからだろう。


だから傷つけなかった。

彼女の目には迷いの色があった。


憂間くんも四醋剣を解放して、周りに被害を与えないように場所を変えた。

別の空間を作り、特定の人物だけを巻き込む。

それをフィールド化というらしいと憂間くんから聞いた。


…この二つのどちらかを悪とするなんて、そんなこと私には出来ない。


「え!?相田さん!?なんで、ここに…」

「ちょっこぼれてるこぼれてる!」

「うわあああ!」


憂間くんは落とした缶ジュースを慌てて拾った。

手にはスーパーの袋が握られているが、そこまで多くは買っていない。

せいぜい一人分といったところか。


「えっと、おばさんのお見舞い?」

「…の帰り。今から戻って晩ごはん作る予定」


ということは病院に行くつもりじゃなかったんだ…

もしスーパーが違う場所にあったら、待ちぼうけを食らっていたところだった。


「相田さんはここで何やってるの?誰かのお見舞い?」

「いや、そういう訳じゃないよ」


憂間くんを待っていた、なんて口が裂けても言えない。


「…うち、おいでよ。今日はほんとに誰もいないから」

「へ??てもお邪魔なんじゃ…」

「俺しかいないって」

「で、でも申し訳ないし…」

「だから来て欲しいって言ってるだろ!」


沈黙が流れる。アホーアホーとカラスが鳴いた。


「まだ話したいことあるから…来て欲しい…け、けど時間ないなら別にいいよ……」

「行かせていただきます…」

「あ、ありがとう…」


みなさん、これが現代の男女の高校生がする会話ですよ。覚えておいてください。





ギクシャクしながら憂間くんの家に到着する。

昔ながらの味が出ている建物だ。


「お、お邪魔しま〜す…」

「別にかしこまらなくてもいいよ、俺しかいないし。

中から返事聞こえてきたらどうするの」

「やめてよホラーじゃんそれ」


よいしょっと買ってきたものをキッチンに置くと、憂間くんは戻ってきた。


「それで、うちのお母さんが具合悪いのは誰から聞いたの?」

「ゆかちゃんから…ごめん、勝手に」

「あいつか、ウワサとか好きだもんな。まあいいけど」

「お母さん大丈夫なの?」


私の問いに憂間くんは少し目線をそらしながら言った。


「俺も病弱気味でさ、お母さん譲りなんだよ。

昔から肺が弱くて。最近は調子良かったんだけど」

「そっか、急にまた悪くなっちゃったのかな…」

「いや、本当は良くなんてなかったのかもしれない」


憂間くんは立ち上がると棚からアルバムを取り出した。


「俺んち四人家族なんだ。お父さん、お母さん、俺。あとここに写ってる弟がいる」


写真には憂間くんと瓜二つな男の子が写っていた。

…可愛い。


「お父さんは俺が五つの時に亡くなった。

(いく)…弟は地方で一人暮らししてるよ。高校生だけど」


五つの時ということはかなりの間、憂間くんのお母さんは女手一人で育てていたことになる。


「…そんな顔するなよ、俺は別に同情されたくて言ったわけじゃない」

「分かってるよ」

「そうか、なんか飲むだろう。ジュースあったと思うから持ってくる」


憂間くんはまた立ち上がるとキッチンへと戻って行った。

他にも何かあるのかとアルバムのあった棚を覗いた私は目を見開いた。

そこにあったのはノート、参考書、レジュメ…全て実行務に関するものばかりだった。

参考書以外全て手書きだ。

夢なんて一言じゃ語りきれないほどの思いがそこにはあった。



絶対に叶わない夢なのに、ここまでするの?

もしかして憂間くんはそれでも諦められないんじゃないの?

そして、その助けの手をどこかで求めているんじゃないの?

だからこうやって、事情を知った私を連れてきたんじゃないの?



「相田さんどうしたの?何かぼーっとしてること多いけど」

「憂間くん、私に手伝わせて欲しい」

「何を?」


私はまっすぐな目で憂間くんを見つめると、改めて言い放った。


「私に、夢を手伝わせてほしい」

「夢?実行務のこと?」

「そうだよ」

「…ああ、相田さんも気づいたんだね矛盾に。

別に俺はいいんだこのままで。満足してるよ」

「それならどうしてそんな顔をするの?」

「…っ……!」

「まだ何も具体的なことは考えてないし分からないけど…

でも必ず叶えさせてみせる。こんなのおかしいよ」

「変なヤツだとは思ってたけど、筋金入りだね」


フッと憂間くんは笑うと、急にリビングを出て行った。

そして処分と赤文字で書かれた大きなダンボール箱を持ってくると、封をしていたガムテープを破り中身をぶちまけた。


中には棚にあったものとは比べものにならないほどの実行務に関する資料が山ほど出てきた。


「これが、俺の思いだよ」


私はおもむろにその一枚を手に取る。

そこにはなぐり書きしたノートがあった。

中に書いてある文字からは怒りのような悲しみのようないろんな感情が込められていた。


「断ち切らなきゃ断ち切らなきゃって自分で言い聞かせてたけど、結局捨てられないんだよ。

ほんとに情けない奴だ」


憂間くんは口ではそう言いながら、とても大切そうにノートを手に取りページをめくった。


「…なんで泣いてんの」

「泣いてないよ、憂間くんの気のせい。

ちょっとあくびしただけだから」

「めんどくさい」


憂間くんは私に近づくとそのなぐり書きしたノートを見つめた。


「俺のことは京でいい。手伝ってくれるんだよね?

言ったことは忘れないから」

「ここまでしといて見過ごせるわけないじゃん」

「それもそうか」


私は涙を拭い、言った。


「憂間、京くん。改めてよろしくね」

「…如紗」

「えっ!?」


急に名前で呼ばれ私は変な声が出てしまう。


「あそこにある参考書取って」


ダンボールをひっくり返してしまったから参考書が山積みになっている。

京くんはその中の一つを指差した。


「あっこ、これね…この赤い表紙のやつ?」

「そう、それ」

「結構年季入ってるね。はい、どう…」


最後まで言葉を紡ぐ前に、京くんに口を塞がれる。時間がゆっくりと流れた。


「隙ありすぎ、そんなんじゃあいつらにすぐやられちゃうよ」

「きょ、京くん何を…?」


唇を離した京くんは今まで見たことのないような顔をして笑った。


「今日はもう遅いから送っていくよ」


なにが起こったのかわからなくて、声にならない。


「ほら立って、俺は別に泊めてもいいけどそういうわけにもいかないだろ」

「…帰る」

「うん、割と即答だったね」


ガチャっとドアが開く音がする。

鍵を閉めようとする京くんを私は止めた。


「一人で、帰れるから、大丈、夫」

「ならいいけどその話し方は直しておけよ…なんかあったことすぐバレるぞ」

「わ、わかってるよ!」

「それじゃまた明日」


京くんは優しく笑いながら手を振っている。

なんでこんな余裕なの!?

いや、逆だ逆。どうして私はこんなに余裕がないの!?

触れた唇を抑えながら私は帰り道を歩いた。

もう私の頭の中には憂間京という存在で埋め尽くされていた。


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