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夢幻酷法〜Starting Story〜  作者: SOR
3章 四季醋戦争編
14/18

リーダーと絆

ピヨピヨ…。小鳥の鳴き声が聞こえる、朝が来たみたいだ。

私は重い身体を起こすと、ケータイを見る。

一通のメールが入っていた。


『今日、ミロックへ行ってきました。

ミロック国の実行務候補として、卯月先輩が認めてくれました。

これからは基本的に俺も卯月先輩の下で動くみたいです。ありがとう。

憂間京』


「ありがとうってなによ…」


まるで小学生の日記のようなメールを見てフフッと笑うと、私は大きく背伸びをした。

机の上にプリントが置かれていたが、いつもの進路希望調査ではなかった。


この前行われた実行務会議での四醋剣保持者の集計が出たのだ。

今後はこれを参考にしながらシーズセラピーの活動を決めていく予定だ。

書類を大切に抱えた私は、シーズハウスへと向かった。




シーズハウスの前までくると、冬利さんが女の人と話をしていた。


「冬利さんこんにちは」

「ああ、相田か」

「そちらの方は?」

「俺の幼なじみ…といったところか」

「何それ、幼なじみでしょ?」


腰まである長い髪の女の人はかがみながら言った。


「初めまして、青木廉(あおきれん)です」

「あ、青木…?」

「さすがに相田も知っているか」

「知らなかったらちょっとショックだけどね」


青木というと、仁奈の実家である望月家よりも権力がある青木財閥ではないか。

その跡取りである娘の名前は確か廉といった気がする。


「そ、その廉さんがどういった用事で…?」

「あのねシーズセラピーに入りたいの」

「シーズセラピーに!?」

「ええ、あなたの頑張りを見てると応援したくなって。聞いてみれば冬利もいるみたいだし」

「別に断ってもいいんだぞ相田」

「そんなまさか!廉さんがいいのでしたらぜひお力を貸してください」

「…とリーダーはいってるけど?」

「そういうなら俺も止めないよ」

「決まりね♪」


今日からよろしくと廉さんは私の肩を叩いた。

あの青木財閥の娘が参加してくれるなんて…!


「冬利から聞いたわ、新入りはトレーニングルームで技を披露するんでしょ?」

「はい、そんな感じにはなってます」

「それじゃ私のも見せないとね」

「おい廉、何を考えて…」

「はいはい男禁制よ、行きましょっか」


廉さんに連れられてトレーニングルームへ向かう。

冬利さんどうしたんだろう…?


「これが例の案山子ね。


さすが白空さんたち、ほんと精巧に作られてる。

これにダメージを与えればいいのね?」

「はい!そしたら数値が出るのでそれを見て…」

「でもちょっと怖いから、先に如紗やってくれない?」

「私からですか?」

「うん、シーズセラピー代表の四醋剣技見てみたいわ」


そういえば最近同じようなことを言われた気がする。

特に断る理由もないので私は四醋剣を解放した。

背後に人気を感じる、魔人だ。

魔人は案山子に容赦なく殴りかかる。

そこに表示された数値を見て、私は唖然とした。


「さ、3000…!?」

「ふーんこんな感じなのね。ありがとう!次私がやるわね」


この前解放した時と桁が違う、どうして…

そんな私を置いて廉さんは解放しようとした。

しかし声が小さかったからか、かけ声は聞こえなかった。

廉さんの四醋剣から伸びたムチのような紐は、かかしに襲いかかる。


その一つ一つの数値は、全て五万を超えていた。

そう、かつての私の四醋剣よりもはるかに大きいダメージが出ている。

インフレがすごい、サ終間近のソシャゲ??


「す、すごい…こんな大きなダメージが出るなんて」

「すごいでしょ?私の四季剣は」

「………えっ?」


廉さんは剣を見せて言った。


「四醋剣だと思った?

私は四季剣の使い手よ、紛れもなくね」

「でもあんなダメージ四醋剣でも出せな…」

「違う、あなただから出ないの」

「え…」

「シーズセラピーのリーダーとかいうんだからさぞかしすごい人だと思ってたのに、そうでもなさそうね」


廉さんの目は冷たく光っていた。


「あんたにリーダーの資格なんてあるの?」

「わ、私は…!」

「夢とかそういう綺麗事はいらないわ」


後で書いてもらおうと思っていたシーズセラピーの名簿を私から奪い取り、廉さんは思いっきり踏みつけた。


「子どもの馴れ合いで成り立ってる組織なんてすぐに壊れる。

その前にどうするべきか、リーダーなら考えておくことね」







「こうやって国ごとに四醋剣保持者の割合を見ていくといろいろ分かることもあるのねぇ」

「確かに興味深いな」


甘夏と冬利さんが資料を見ながら言った。


「…如紗、なんかあった?」

「う、ううんなんでも!」

「もしかして廉から何か言われたのか?」


冬利さんは心配そうに聞いてくる。


「ほんとになんでもないですから」


ごめんなさい、と愛想笑いをしながら返した。


「それより祝日だっていうのにシーズセラピーにいるのあたしたち3人ってどういうこと!?」

「加羅くんはリオン国、仁奈はBe Quietの任務があるし京くんは実行務候補としてまた頑張ってるみたいだから…」

「三人じゃ文殊の知恵くらいしか出せないよ」

「知恵は出せても行動に移せない、か」


あまりにも悲しすぎる。


「やっぱもう少しメンバー増やすべきだよ如紗」

「そうだね…視野に入れておくね。

私調べ物があるから出かけてくる」


そういうと私はシーズハウスを出て行った。


「…なんかあったね如紗。今までなら分かった!ってすぐメンバー探すために飛び出してるのに」

「廉にもう一度話を聞くか。

あいつ、シーズセラピーに入りたいって言ってたんだけど、今日も見かけないし」







こうやってウジウジするのは本当に私の良くないところだ。

ただ結局、言葉ほど心を動かすものはない。

私はそう思っている。


『夢とかそういう綺麗事はいらないわ』


私には夢がなかった。目標も、やりたいことも。

でも四醋剣に出会って、ミロックと出会って、京くんと出会って。

ここでシーズセラピーを作ることこそが、私の夢だとばかり思っていた。


でもシーズセラピーを作ったって具体的にやりたいことが浮かんでこない。

答えはもう出ていたのだ、これは私の夢じゃない。

それに廉さんは気づいていた。


「どうしようかなあ…」


私と他のシーズセラピーのみんなとの思いの強さの違いは明白だろう。

リーダーなんて、してもいいのだろうか。


ふらふらと歩いているとウエスタさんのカフェまで来ていた。

そういえばここで、いろんなことがあった気がする。

仁奈と話をしたのも、甘夏に会ったのもここだった。ここに入ればまた何か見つけられるかな…


「はあ…やっと見つけた…如紗さん!」

「いっくん!?」


私がウエスタさんのカフェに入ろうか迷っていると、偶然通りかかったいっくんが声をかけてきた。


「如紗さん、今時間とかありますか?」

「う、うん大丈夫だけど…」

「相談に乗ってもらいたいんです」

「相談?」

「これです」


いっくんの手の中にあったのは四醋剣のキーホルダーだった。


「この四醋剣がどうかしたの?」

「俺のなんです」

「え?いっくんは四季剣保持者だったんじゃあ…」

「気付いたら四醋剣になってたんです!!

もうどうしたらいいのか分からなくて…」


四季剣が四醋剣に変わった?

そんなことってあり得るのか?


「それでシーズセラピーである如紗さんに相談しようと思って。

もしミロック王が四醋剣持ちだと住民に知られたらすぐに反乱が起きます」

「分かった、とりあえずシーズハウスまで来てもらえるかな」


いっくんは私の問いに大きく頷いた。

まだはっきりしない気持ちのまま私はシーズハウスへと戻った。




トレーニングルームへ移動した私は、さっそくいっくんの四醋剣を見ることにした。


「能力的にはちょっと上がったくらいね…まだ完全体にはなってないよ」

「それにしても妙だな、四季剣が四醋剣に成り代わるなんてことがあるのか」

「私もそう思います、聞いたことないですよね…」


甘夏と冬利さんも頭を抱えた。

いっくんが先ほど言った通り、もしこれがバレると大変なことになる。


「とりあえずこの件はこちらに預からせてくれないか?

あまりミロック王が頻繁にシーズセラピーに出入りしているのも良くない」

「分かりました、ありがとうございます」

「異変があったらすぐに連絡してねいっくん」

「はい、頼りにしてます如紗さん」


そう言うといっくんは帰って行った。

四季剣に四醋剣技が乗り移る事例は聞いたことがある。

しかし姿形から四醋剣になるのは異例すぎる。

なんとか、しなくちゃ。

ミロックの為に。








シーズセラピーを出た僕は手の中の四醋剣を見つめた。

いいや、正確に言うと今は四季剣だ。

なぜか如紗さんに会った時だけ四醋剣になる。

今日はそれを確かめに来たのだ。


僕の予想は当たりだった。

この四季剣は如紗さんと関係している。

初めて会った時、彼女の握手をしたがその時何か異様なものを感じた。


まるで如紗さんの手を通じてエネルギーをもらっているかのような…


「郁じゃない、シーズセラピーに何か用事?」

(れい)さん、いえ特に何もないですよ。零さんこそ見つけられましたか?」

「全くね、まず手がかりが少なすぎるわ。

MR2(えむあーるにじょう)なんてとっくの昔になくなったはずなのに」

「ミロック政府反対組織、でしたよね。

どうして今になってまた活動を始めたのか…」

「むつきも優も何も言ってないけど理由は明白なんだよね」

「というと?」

「シーズセラピーをミロックが公認したこと。

それが反感を買ってるって噂よ」

「そうですか…」

「他にも私情が絡んでるとかね。

まだ本当かどうかは分からないけど」

「このこと如紗さんたちは知ってるんですか?」

「まさか、知らないわよ。

私たちもバレないように気を遣ってるんだからね」

「如紗さんが知ると、また思い詰めそうですしね」

「本当よね、あの子にはむつきくらいの度胸とメンタルの強さが欲しかったわ」

「むつきさんは強すぎですよ、いろいろと。

比較しちなダメです」

「ふふっ、それもそうね」







「ダメだ…見つからない…」


図書館に入り浸りながら私は大きなため息をついた。

四季剣が四醋剣に代わる?

そんなこと聞いたことがない。もはやお手上げだった。


そういえばマリックに四季剣の創設者がいたっけ。それなら聞きにいってもいいかもしれない。

ただ、一人で行くのは不安かも…


「おっきいため息ついてどうしたん?」

「ファッ!?」


い、いけない。某ネタを使ってしまった。

あれ、この人は…


「覚えとるかな、ウエスタさんのカフェで働いてる」


確か何度か見たことがあるような。


「相田如紗さんやんな?偶然やね」

「ど、どうして私のことを?」

「そりゃもう有名人やからな、シーズセラピーの創設者やし。まさかこんなとこで会えるとは」

「すみません…」

「え、なんで謝るん?」


シーズセラピーの創設者、それがどれだけの意味を含んでいるか私はまだ分かってなかった。

廉さんの言葉がまた頭をぐるぐる回る。


「…俺でよければ相談乗るで?どうしたん?」

「マリックに行きたいんです!!」


途中の過程をすっ飛ばして要件だけ伝えた。


「奇遇やな、俺もマリックに用があってん。

それなら一緒にいこか」


すごい予定調和。

こういう時って大体同じ場所に行く用事があるんだよね。


「俺の名前は難波(なんば)みなみ、よろしくなあ如紗はん」

「き、如紗はん…?」

「ああ、俺京都出身でな。なかなかクセが抜けへんねん」


この関西弁もそのせいだったんだ、なんか独特な雰囲気の人…

とりあえず私はみなみさんと一緒にマリックへ向かうことにした。


「マリックも変わったもんやで。昔はもっと荒れてたのになあ」

「荒れてたんですか?」

「そりゃあもう荒廃地やったわ。

争いは耐えんし空気も淀んどるし、何より王であるマリックが曲者やったからな」

「一代目王ですよね?」

「せや。今はもう二代目になってるんやけどな」

霜月(しもづき)みなさんでしたっけ」

「みなさんがマリック王を更正させたゆう話や」

「そ、それってもしかして…」


みなみさんは立ち止まると小声で耳打ちをした。


「二人はデキてるゆう噂やで」

「はっ!!?」


ややや、やっぱりそうなんだ…


「ここがマリック城や。そんじゃ俺はこれで。

ウエスタさんのとこにいつもはいるからまた来てなあ」

「えっ!?」


中まで来てくれないの!?と言う前にみなみさんはさいなら〜と手を振って行ってしまった。

ザ・マイペースな人だ…


「ここに何か用事?」

「ギェッ!?」

「なにその鳴き声」


振り返ると茶髪でくせっ毛の強い男の人が立っていた。


「あの、みなさんは今いらっしゃいますか…?」

「いるよ、話がしたいならどうぞ」

「そんなあっさりいいの!?」

「本音出てるよ」

「す、すみませんつい…」

「あはは、俺の名前は出背圭太(でせけいた)

昔はサラ国にいたんだけどいろいろあってマリック王の元で動いているんだ」

「サラ国にいたんですね」

「うん、君は?」

「相田如紗です!ミロックでシーズセラピーを…」

「ミロックかあ、懐かしい響きだなあ」

「懐かしい響き…?」

「俺、よくむつき先輩にちょっかいかけてたからさ」

「えっ?」

「知らない間にホックを外したりとか、気が抜けたむつき先輩の写真を撮りまくったりとか、毎日パンツの色教えてもらったりとか」

「は、え、ん???」

「まあそういうことだからむつき先輩によろしく言っといて」

「はあ……」


如月先輩にお土産話が出来たなあとしみじみ思いながら、私はマリック城へ入って行った。

マリック城といってもミロックほどの大きさではない。

二階建てでもないし、シーズハウスの少し豪華バージョンといった感じだ。


「おかえり圭太、後ろの方は?」

「お客さんらしいっすよ。みなさんに話があるみたいで」

「皆さん?」

「いや、みなさんです。マリックさんこのやりとり気に入ってますよね??俺もう飽きたんすけど」

「如紗じゃない」

「みなさん!」

「皆さ「もういいですって」


こんにちは、とみなさんは私に向かって挨拶をした。

おそらく圭太さんと話をしている人がみなみさんが言っていた一代目マリック王なのだろう。


「ほーう、この子がミロックで話題の…若いな」

「なんか変態みたいだからやめてください」

「私に話があるのよね?」


圭太さん完全にブーメランなんだけど。

後ろの男二人を無視してみなさんは椅子に座った。

すごいスルースキルだ。


私はいっくんの今置かれている状況をみなさんに説明した。

途中からマリックさんと圭太さんも話に混ざってくる。


「なあみな、これって…」

「ええ、少し違うけどそうだと思うわ」

「でもやばくないっすか?大事件ですよもしそうなら」


三人が口々に言う。一体何の話だろう…


「如紗、竜のことは知ってる?」

「師走先輩ですよね、知ってます。

四醋剣に乗っ取られそうになったっていう…」

「あれと同じだと思うの」

「えっ!?」


突然のことに私は驚きを隠せなかった。


「でもあの時は四季剣が四醋剣に代わるなんてことはなかった。

確かにあのまま乗っ取られていれば四醋剣になってたと思うけど…」

「それに厄介なのはその疑いがあるのが現ミロック王ってことだ。

それにまだ就任したてなんだろう」

「如紗、まだ仮説だけどこのことが公になるとシーズセラピーは一番にヘイトを買うわよ」

「それだけじゃないっすよ。ミロック王にも非難が飛びます」

「そんな…ミロックが……」

「他に何か気づいたこととかはない?

ミロックには私たちも世話になってるの。出来る限り協力はしたい」

「今は特に…」

「そう…また何かあったらすぐに連絡してきなさい」

「ありがとうございます」


その言葉とは真逆に、私の心は揺れていた。

これはシーズセラピーの問題、ましてやミロックの問題なんだ。

やはり自分で解決したい。


もう一度礼を言った後、私はミロックへ帰ることにした。

ミロックとマリックの国境、そこへ着いた時に異変を感じた。





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