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夢幻酷法〜Starting Story〜  作者: SOR
2章 実行務編
12/18

助手席と九代目

「あの〜…」

「「…」」

「お二人さん?」

「「……」」

「にらめっこしてるわけじゃないですよ?」

「「………」」

「こりゃだめね」


甘夏はそういうと首を振った。

冬利さんと合流したところまでは良かったのだが、顔を合わせてからお互いうんともすんとも言わない。


「ウジウジしてるんじゃないわよ男のくせに」

「甘夏も男だけどね…」

「えっ男なの」


いいのか京くん、冬利さんと再会してからの初発言がそれで。

割と大切なシーンだぞ今。


「あたしには分かるわ、オネショタ担当でしょ京って」

「何の話してるの甘夏」

「悪いな、あいにく俺は相手に困ってねえんだ」

「京くん????」

「嘘だ〜まんざらでもないくせに。

とりあえず歌舞伎町でも一緒にぶらぶらする?いい店教えてあげるよ」

「本当に何の話をしてるの甘夏!?」

「……」

「京くんもそこ迷わないで」

「おい、俺を置いていかないでくれないか」


冬利さんが少しイライラしながら言った。


「話す気がないなら俺から話そう。あれからどうなったかを」

「…聞くよ」

「意外と素直」

「俺たちの親父は今何をしてるか知ってるか?」

「知らないよ」

「そうか、ならそこから話そう」








「今日はドライブ?」

「何いってんだよ冬利、登山に決まってるだろ」

「ははは、京くんの言う通り登山だよ」

「なーんだつまんないの」

「冬利はなかなか登山を好きにならないなあ、京はすぐ食いついたのに」

「今度来るときは郁くんも連れて来られればいいな」


今でもはっきりと覚えている。

親父が車の運転をして、助手席に京が座っていた。

景色を見たいと言っていたからだ。

京の後ろに京の親父さん、親父の後ろに俺が座っていた。


少し急なカーブにさしかかろうとしたその時、大きな岩が落ちてきたのだ。

地響きがするほどだった。


危険を察知した京の親父さんは、すぐに京を守ろうと前の席に飛び込もうとした。

京の小さな身体はシートベルトをすり抜けそうになっていたからだ。

間一髪のところで吹き飛ばされるのを止めた京の親父さんは、その勢いのまま車の外へ投げ出された。

それに、親父も巻き込まれた。


「お父さんは…お父さんは無事なの!?」

「大丈夫よ冬利、安心して」

「京は…」


パトカーや救急車の音が聞こえる。

俺は小さくなって震えている京に目をやった。

近くにはぐちゃぐちゃになった車の破片が散乱している。


「京くんもすぐお母さんが来るからとりあえず私たちは行きましょう」

「なんで、京を置いていくの?」

「大丈夫だから、ね?いいから早く」







「おふくろの大丈夫は大丈夫じゃなかった。

事実京の親父さんは死に、俺の親父は意識不明のままだ」

「意識不明!?」

「おそらく親友を失ったショックだろうと医師が言っていた。

そして回復の兆しはない、とも」

「そんな…」

「京、お前は親父を守ろうとして自分の父親が死んだと思っているんだろう。

だがあの配置じゃありえないんだ、お前を守ろうとして親父さんは死んだ」


京くんはぐっと歯を噛みしめていた。

そこにはいろいろな感情があった。


「お前だけ辛い思いをしているわけじゃないんだよ京」

「…なんだよ、俺も辛いんだぞって言いたいのか冬利は。

不幸自慢をするためだけに俺を呼んだのか?」

「違う、一つは親父さんの誤解を解くためだ」

「誤解だって…?」

「息子である自分を捨てて、大親友を守ろうとして死んだと直後のお前は言っていた。

だけど真実はそうじゃない、息子である京のことを一番に助けようとした」

「……」

「助手席にいたお前を助けて、そのまま親父と一緒に巻き添えになったんだよ」


京くんは何も言わない。



「それにもう一つ、辛いのはお前だけじゃない。

俺だって同じなんだ。

不幸自慢をしたいとかそういうことじゃない。

同じ思いを分け合ってるんだよ、京。

お前だけが背負う問題じゃないんだ」

「冬利…」

「俺たちがこんなことで仲違いしてどうするんだよ、天国で親父さんが泣いてるぞ」


冬利さんはそう言うとそっと手を差し出した。

その手を京くんはじっと見つめる。


「俺は…俺はずっとお前が憎かった。

俺から親父を奪っておいて幸せそうに生きているお前が。でもそれは」


冬利さんの手に、京くんは自らの手を重ねた。


「きっと嫉妬の裏返しだったのかもしれない。

冬利も同じ思いで今まで生きてきた」

「これで全部チャラだ、京。きっと親父さんも見ていてくれてる」

「ああ…」


涙ぐみながら少しずつ言葉を交わす二人を見ながら甘夏は言った。


「素直じゃないわよねぇ、京もお兄ちゃんも」

「ほんとにね。甘夏も苦労したんじゃないの?」

「そりゃあもう散々。肩の荷が下りたわ」


ぴょこぴょこと二人に甘夏は近づいていく。


「で、お兄ちゃん。お兄ちゃんももちろんシーズセラピーに入るよね?」

「えっ冬利も四醋剣保持者なのか?」

「ああ、一応な」

「お兄ちゃんの四醋剣はあたしのパワーアップバージョンで、七つまで何でも叶えられるんだ!」


上位互換ということかな。

さすが兄妹といった感じか。


「シーズセラピーか、悪くないだろう。

厄介な弟の世話も見ないといけないからな」

「今弟強調したでしょ」

「気のせいだ」

「というか、冬利に妹がいたの全く知らなかった…」

「いや弟だから、現実逃避をするな京」

「な、何はともあれ笹田冬利さん、甘夏。改めて、シーズセラピーへようこそ!」


こうしてまた新しいメンバーを迎え入れ、シーズセラピーは六人となった。





「お疲れ様〜!最近顔出せなくてごめ…誰?」

「あんたこそ誰?」

「は?」

「仁奈お疲れ様、新メンバーの笹田冬利さんと甘夏」

「ほー!スカウト始まってるのね。私の方が先輩なんだから敬いなさいよ」

「でもあたしの方があんたより可愛くない?

なら私の方が上の存在だと思うけど」

「は???」


仁奈と甘夏は仲良くなりそうな感じ。


「とりあえずなんとか今六人だね…」

「そういえば加羅は?」

「あいつも実行務で忙しいんじゃねえの、リオン国で正式に決まったんだし」


少し触れづらい話ではあったが、一番初めに言葉にしたのは京くんだった。

もう吹っ切れたのだろうか。


「そっかあ。でもそろそろ戻ってくるんじゃない加羅も」

「なんで?」

「なんでって、ミロック王が変わるからよ」

「「「えぇーっ!?」」」

「…もしかして知らないの?」

「俺は知っていた」


冬利さんが新聞を持ってくる。

見出しには大きく『九代目ミロック王、お披露目会近日!』と書かれている。


「ということはアヤメさんがミロック王から降りるってことね」

「次のミロック王かあ…誰だろう」

「如月先輩の知り合いなんじゃないの」

「一切情報が回ってこないからなあ」


こうやってまた歴史が動いていくんだ…!

どんな人だろう、純粋に楽しみ。


「ね〜え如紗、如紗も気になるでしょう次のミロック王」

「え?そりゃ気になるけど…」

「だよねぇ?ミロック王だもんねぇ?」


甘夏と仁奈がなぜかタッグを組んでいる。

ミロック王ということはシーズセラピーとしてこれから関わってくる可能性はかなりあるだろう。

詰め寄ってくると二人は続けた。


「気になって気になって夜も眠れないわあ…!?」

「そうよねぇ仁奈…夜も12時間しか寝れないねぇ…!?」

「おふくろにも言われてるだろう甘夏、もう少し早く起きろ。早寝早起きは生活の基…」

「ところで如紗、私たちなんていう組織だっけ?」


冬利さんを華麗にスルーして甘夏は言った。


「シーズセラピーだけど…」

「忘れていたわ、そうよシーズセラピーよ」

「忘れないで仁奈」

「し・か・も!ルチア様とも卯月さんとも顔見知り!」

「さらにさらに如紗はミロック界の王たちとも対面済み!」

「…何が言いたいんだ」


京くんも口を開いた。

はあ、とため息をつくと私は結論を出した。


「つまりシーズセラピー名義でミロック城へ行って、あわよくば次の王に会いたいと」

「「イエースッ!」」

「お前たちが考えそうなことだな…」


やれやれと京くんは言った。

それを見ていた冬利さんは待った、と前に立ちふさがった。


「そういう権力を振りかざすような真似は俺は好きじゃないな。そう思わないか相田。

確かに俺たちはミロックの幹部と知り合いかもしれない。

かと言ってそれを利用するようなことは、職権濫用に値す…」

「お兄ちゃん何やってんの?行くよ〜」

「…ッ!?待て置いていくな!おい!!」





ミロック城へ来たところまではよかったのだが、やはり人間後ろめたいものがあるとどこかに隠れようとするのである。


「ちょ、ちょっと押さないでよ京」

「押してねえよ。冬利が押してんじゃないのか」

「おいやめろ、仁奈の後ろには誰もいないだろう」

「えっ?冗談きつ…え?マジ?」

「こんなことせずに堂々と入ればいいのに」

「ほんとよね〜権力がどうとか言ってたお兄ちゃんも結局来てるし」

「あ、あれはだな…やはり気になるというかなんというか…」

「うんうん、気になるよな〜。でも運がよかったな!ちょうど今そのミロック王、来てるんだぜ」

「ほんとに!?それじゃ会えるね、あいさつくらいはして…」


全員が仁奈の後ろを振り向く。

明らかに会話に一人多い。一番後ろにいたのは…


「し、師走先輩…」

「やほやほ〜。

監視カメラに如紗ちゃんたちが映ってたから見てこいって優に言われてさ」

「なんでこれだけの人数がいて鏡賀先輩たちが作ったカメラのことに気づかなかったの」

「どれだけ会いたいんだよ俺たち」

「まあまあ気持ちも分からんことないからね。

とりあえず案内するぜ」


師走先輩に連れられていつもの客間にたどり着く。

そこには卯月先輩とアヤメさんと、もう一人男の子が座っていた。

というかこの男の子って…


「きょ、京くん?京くんが2人!!?」

「瓜二つなんだけど。京って双子だったっけ?」

「シーズセラピーと実行務候補生とミロック王の掛け持ち!?

すごいな憂間、身体張るな」

「お兄ちゃんとの確執がなくなったからってこと?

あたしには無理だな」

「良いか京、いくらやりたいことだろうと休憩はしっかり取らないといけないぞ。

身体を壊すと元も子もないからな」

「ちげえよ。笹田兄弟は話をややこしくするな」

「えっ待って男なの?」

「竜先輩、その話はまたいずれ…」


目の前にいる京くんそっくりの男の子。

ただ静かに騒いでいる私たちを見つめている。


「もしかして、(いく)か?」


冬利さんが言う。

郁って確かさっき話に出てきた京くんの弟の…


「なんでここにいんの?高校は?」

「兄さん!?最悪だ、こんなとこで会うなんて…」


うわああと京弟は近くにあった布団をかぶる。

なるほど、中身まで憂間の血を引いていると。


「優、もしかしていっくんに言ってなかったの?お兄さんいるって」

「ところでアヤメ、サプライズって大事だと思わないか?」

「ただの嫌がらせじゃないの」

「ちょ、ちょっと待って。ここにこいつがいるってことは…」

「ああ、九代目王は憂間郁(いく)だ」

「「「「「えぇ!!?」」」」」

「いっくんって呼んでください…」


それ今言うこと!?

2次元あるあるの周りが身内で固められていく説が立証されてしまう…!

この物語はフィクションです!


「でも郁、そんな人前に出られるような性格じゃないだろう。お前も俺と同じで引っ込み思案な…」

「だから自分を変えようと思ってここに来た」


いっくんの目は真剣だった。

私はその目を前に見たことがある。

そう、京くんがもう一度実行務という夢を叶えようと決意したあの時の目だ。


「じゃあ本当に京の弟が…」

「冬利さん、ですよね。母から話は聞いています」

「初めましてになるのか。これからよろしく頼む」

「こちらこそ」

「これからシーズセラピーは王とも密接に関わってもらおうと思っている。

まあアヤメもそこそこ相田と仲良くやってるらしいが」

「そうね、ミロック国内の組織だし王とのつながりは大切だね」

「というわけだ、これからまた忙しくなるだろうが頑張ってくれ。以上」


あれ、話が強制的に終わってしまった。


「どうせならいっくんもミロックに慣れるという意味でシーズセラピーの本拠地まで行ってみたら?」

「あ、シーズホームっていう名前に決まりました」

「そうなのね、じゃみんなとそのシーズホームに行ったらどう?」

「でも僕まだスピーチ原稿が出来てな」

「行 っ て き た ら ?」

「はい、行ってきます」


こ、怖いなあ…

というわけでアヤメさんの言葉通り、私たちはいっくんを連れてシーズホームへ向かった。

到着するなり、とりあえず私たちはいっくんに向けて自己紹介をすることにした。


「えっと、改めまして。シーズセラピー創設者の相田如紗です。それでこっちは…」

「俺は自己紹介する必要があるのか?」

「い、一応?」

「はあ…憂間京だ」

「うんよく知ってる。それで兄さんの隣にいるのは?」

「望月仁奈です!Be Quietに所属してます」

「ああ、ニーナ・テンバーか。話は聞いたことがある。あとは冬利さんにその妹さん?」

「甘夏だ。あと妹じゃなくて弟な」

「水差すようなこと言わないでよね〜。甘夏です、いっくんよろしくね!」

「よろしくお願いします」


そこまで話し終えた後、いっくんは数を数えはじめた。


「シーズセラピーって六人でしたよね?一人足りなくないですか」

「ああ、加羅くんが今実行務のお仕事で抜けてるよ」

「リオン国のですか、なるほど」


状況は分かりました、といっくんは言った。

京くんに似てることは似ているのだが、どことなく雰囲気が違う。


「優さんから聞きました。

この組織はリオン国実行務の三宅加羅預かりになっていると。

でも僕が正式に就任すると、その権利はこちらのものになります」

「え?それじゃシーズセラピーはいっくんの思い通りになるってこと?」

「まあ、そういうことですね。

加羅さんがミロックとの関わりが薄くなったことが理由だと思います。

リオン国の実行務がミロック発のシーズセラピーを管轄下なんて変でしょ」


真っ当な理由すぎる。

京くんの実の弟だしそこまで変なことはしないと思うけど、ちょっと不安だな…

まだいっくんという人がどういうものなのかもよく分からない。


「それじゃこれからあなた達の四醋剣を見せてもらえますか?

逐一提出するように言われましたので」


ピラッといっくんは一枚の紙を見せる。

トレーニングルームに移動するということかな。


「僕は後から行きますのでみなさんは先に行ってください」

「な、なんで先に行かせるのよ」


仁奈は少し引き気味に言った。


「創設者の方とお話がしたいので」

「わ、私か。みんな先に準備してて。かかしの設置とか」

「そういうことなら行ってるね」


ぞろぞろとみんなが部屋を出て行く。

話ってなんだろう。


「えっと、あなたの名前なんでしたっけ」

「あ、相田如紗です」

「如紗さん、なんか怯えてません?」

「ままままさか!」

「一応僕はあなたより年下なんですからどっしり構えてくださいよ」

「すみません…」

「まあ特に話はないんですけどね」

「えっないの!?」

「ただ少し二人で話してみたくて」


そう言うといっくんは笑った。

ああ、本当に京くんに似てる…

なんかちょっとドキッとしてしまった。


「いっくんに敬語使われてると京くんに言われてるみたいで変な感じ」

「そうですか?」

「別にいいよ敬語使わなくて」

「分かりま…分かった」

「うん、よろしくね」


私たちはなんとなく流れで握手をした。

その時、ハッといっくんは目を見開いた。


「どうかした?」

「い、いやなんでも…そういえば如紗さんって兄さんとどういう関係なの?」

「えっ」

「もしかしてそういう…?」


うーんと唸りながらいっくんは顔を覗き込んでくる。

ま、まずい。まずいというか気まずい。


「まだ話してるの?みんな待ってるけど」

「…兄さん、すぐ行くよ」


どうやらドアの外で待機していたのか京くんの声が聞こえた。助かった…

いっくんは私と握手した右手をじっと見つめていた。




トレーニングルームへ私たちがつくとすぐに四醋剣お披露目会は始まった。

かかしに表示される数値をいっくんは正確に書き込んで行った。


「これで全員終わったかな」

「冬利さんの四醋剣は甘夏の上位互換みたいな感じなのね」

「そ、そこ触れないでよ仁奈!ちょっと気にしてるんだから…」

「ごめんごめん。冬利さんは甘夏の下位互換なんだな〜って思っただけだよ」

「四醋剣の話だよね?ね?人の話じゃないよね?」

「郁は四季剣を持っているか?」

「はい。僕は四季剣ですけど」

「どうせなら見てみたい、次期ミロック王の四季剣技とやらを」

「そんな大したものじゃないですよ。あくまで標準的な四季剣です」


いっくんは四季剣を取り出した。



『四季剣、解放!』



四季剣から光が溢れる。

その光はかかしに当たり、2000という数値が出た。


「あれ?四季剣って解放する時に名前を叫ぶんじゃなかったっけ」

「如月先輩でいう正春とかだね。そういうのはないの?」

「異名が付くのは四季剣と使い手の思いが一つになってからです。

お恥ずかしながら僕はまだ四季剣を持って日が浅くて…」

「そこまで四季剣と仲良くないってことね」

「雑魚じゃねえか」


だからダメージもそこまでなのか。

四季剣にもいろいろあるもんなんだなあ。

あと京くんが少し私情を挟んでいますね。


「はあっはあっ…みんなここにいたのかよ!

リビングにいないから探して…あれ、なんか人多くね?」

「加羅くん!」


仕事からそのまま来たのか、実行務の制服を着たままだ。


「…俺夢でも見てるのかな。

なんか憂間が二人いるような気がするんだが」

「夢じゃないわよ加羅。よく見なさい」


加羅くんはいっくんの方へ近寄る。


「お前、卵焼きには何派だ?」

「ケチャップ以外ありえない」

「おうおう噂は聞いてたぜ九代目ミロック王!

俺は三宅加羅、よろしくなっ!」

「こちらこそ、末長く仲良くしてください」


加羅くんといっくんはがっちり腕を組んでいる。

京くんとは合わないのにいっくんとはウマが合うんだ…

というか、どういうコミュニケーション???


「いや、それを差し引いてもなんか多いな。

お前ら誰だ?」

「やだこわ〜い。お兄ちゃん助けて〜?」

「あっなんかごめん。怖がらせるつもりはなかったんだけど」

「助けるも何もお前の方が体育会系だろ甘夏。握力だって強いし」


そ、そうなんだ……


「それはそうと加羅、さっきいっくんが言ってたんだけどシーズセラピーの管理について聞いた?」

「ああ聞いたぞ、ミロックの実行務が受け持つってやつだろ」

「えっ?ミロック王じゃないの?」

「は?」


いっくんは慌てて手帳を開く。

ちらっと横から見ると『シーズセラピーの管理はミロックの実行務に任せる』と汚い字で書いてあった。


「…ということらしいです」

「大丈夫なのミロック王。文字汚すぎるけど」

「ミロックの実行務って誰のこと?優さんは実行務長だし…」

「一応その候補生としての枠には俺がいたけど今は空いてるんじゃねーの」

「つまり…」


全員の視線が京くんへ注がれる。


「い、いやでも俺まだ四醋剣没収されてるし」

「優さんに?」

「いや如紗に」

「なんで如紗!?」

「いろいろありまして〜…」


沈黙が続く。


「…俺、もう一度卯月先輩のとこ行ってみる」

「だってさ如紗、早く行ってきな」

「え!?」

「まあその間シーズセラピーは俺たちが見ていよう」

「そうねえお兄ちゃん、愛には勝てないもんねぇ」

「何この流れ」

「如紗」


京くんはいつの間にか私の目の前にいた。

その目は付いてきてくれるか、という目立った。


「…まあ拒否権なんてないけど」

「ちょ、ちょっと京くん!?」


京くんは私の手を引くと、シーズハウスを飛び出した。

目指すは、ミロック城。


「いってらっしゃーい、夕飯までには帰るのよ〜」

「仁奈がそういうセリフ言ってるのすごく似合う」

「何、ババアって言いたいの?」

「なんか駆け落ちみたいだな」

「あの加羅さん」

「ん?なんだいっくん」

「如紗さんの四醋剣の技って、召喚だけですか?」

「そうだと思うぜ。というかあれ以上の能力持ってたらぶっ壊れすぎる、一度解放するだけで死ぬレベルだよ」

「そう、ですか…」

「どうかしたのか?」

「ちょっと聞いてみたかっただけです、ありがとうございました」



京くんの弟である憂間郁(ういまいく)がミロックに現れ、また少しずつシーズセラピーは変化を起こしていた。

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