期待と不安
『美佐の邪魔だけはやめてよね?』
そう言った市川は、この五人のリーダーは自分だと言わんばかりに、この場を仕切始める。
「まず初めに、さすがのあんた達でも大丈夫だと思うけど、二次審査の概要については理解できてるわよね?」
「私は大丈夫だ」
「私も」
「わ、わたしも…」
市川の問に、私を含め、安藤さんと河野さんは問題ないと答える。
だが…。
私の隣りに座っているユシャは明らかに動揺している。
「はあ…」
大きなため息をつく市川。
「足手まといにだけはなってほしくはないし、私がもう一回説明してあげる。けど、一回しか説明しないから」
正直、自分の中では内容を理解していると思っていても、間違って解釈してしまっている可能性もある。
自分が考えている内容とのすり合わせが出来るという点では、ユシャを利用したみたいな形になってしまって申し訳ないが、大変ありがたい。
「二次審査は、ダンスと歌についての審査」
面倒くさそうにしながら、二次審査について話し始める市川。
市川の話す内容を纏めるとこうなる。
審査自体は二週間後に行われる。
それまでに、チーム内でなんの歌を使用するかをきめ、自分たちで振り付けを覚え、審査の日にそれを審査員の前で披露する。
直ぐに二次審査が行われると思っていた自分にとってはとても助かる。
前世で私は、ダンスや歌なんてやったことはないし、現世での私もおそらくそんなには変わらない。
いや、記憶の片隅にある、真桜としての記憶の感じだと、歌は下手な部類だ。
よく私は、アイドルオーディションに出ようと思ったな…。
話を戻して、二次審査について、『選曲』『振り付け』ともに私達に一任するということだが、一つだけ条件が出された。
それは、必ず一人にワンパートずつ歌とダンスで目立つパートを作ること。
グループでやると言っても、あくまで個々の能力をみるためのオーディション。
当然と言えば当然だろう。
「と、簡単に言えばこういう事だけれど、わかったかしら?」
「はい! 大丈夫です!」
元気よく返事するユシャ。
内容は決して難しいものではないし、さすがのユシャでも市川の説明で理解はしているとは思うが、なぜか、この子の事になると、心配になってしまう。
「さ、あなた達スマホを出しなさい。今後についてはLINNで決めましょう」
そう言われ、私達は反論することもなく、市川の言われるとおりに連絡先を交換し、今日は解散することになる。
「なんだか、すごい人でしたね」
会場から離れ、向かうの駅が一緒だった私とユシャ。
帰る途中にユシャが、急にそんなことを呟く。
「でも、私もあのくらい堂々と出来るようになりたいです。それに、見た目もとても可愛らしい方でしたね」
確かに、市川もユシャに負けずとても可愛らしい少女だった。
特に、アイドルとしては最高な、身長は低めで、幼目な顔立ち、声もアニメ声と、オタク受けど真ん中なタイプだ。
それに、よくはわかならないけど、市川からは、『何が何でも絶対にアイドルになるんだ』と気概を感じる。
第一印象としての市川は正直最悪かもしれないが、市川はきっと私達のためにもなる”何かを持っている”と思わずにはいられない。
--ブブッ
突如、スマホが鳴る。
ユシャも同じだったらしく、同時にスマホを覗くと、LINNにメッセージが届いていた。
メッセージを送ってきたのは、市川。
『明後日九時、渋谷駅前に集合。遅刻・欠席は許さないわ』
「さて、どうなることか」
メッセージを見た私は、期待と不安をいだきつつ、そう一言だけ呟いた。
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