一次審査合格者発表
「す、すまない…」
私は、この子に何度驚かせられたら良いのだろうか。
魔王である私を討滅したのは、屈強な精神と肉体をもつ伝説の男勇者ではなく。
人付き合いが苦手て、可愛いものが好きな、性格天然の女勇者だった。
「大丈夫ですよ!! あの時は、真桜さんの前で声出したことも、装備で隠れていた顔や身体、見せたことなかったですもんね」
「まあ、そうではあるけど…」
「そこの二人、どこ行ってたの。他の参加者は既に会場へ向かっているわよ!」
あまりの衝撃に気づいていなかったが、オーディション会場の控室に戻ってきていたらしい。
控室を見渡すと、私達以外の人は見当たらず、既にオーディション会場へ向かったとの事だった。
「す、すみません!! 真桜さん、早くいきましょう!!」
「お、おう!!」
* * * * * * * * *
「すみません。遅れました!!」
「すみません!」
部屋へ入り、私とユシャは謝罪の言葉ともに頭を下げる。
部屋の中には、私達を審査していた審査員が椅子に座り、その前に100人近くのオーディション参加者が並ぶように立っている。
突如部屋に入ってきた私達を一斉に見る参加者たち。
その参加者たちの顔には様々の表情が伺える。
遅れてきた私達に対して、『遅刻するやつが受かるはずがない』という余裕の笑みを浮かべて私達を見てくるもの。
私達のことなんか気にしてられないくらいに、緊張の面持ちのもの。
そんな数多くの視線にやられているのか、ユシャは焦った表情をしている。
「少しとは言え遅刻は遅刻。芸能界において遅刻なんて以ての外だ。だが、今回のところは見逃す。早く列に並びなさい」
「はい。すみませんでした。ほら、ユシャ。いくぞ」
「は、はい!!」
幸い、審査員からは今回の遅刻はあまり気にされていないらしい。
私とユシャが列に並ぶと、椅子に座っていた審査員のうちの一人が立ち上がる。
「それでは、第一審査の合格者を発表します。番号順で発表しますので、呼ばれなかった方は、その場でお帰りください」
審査員から淡々と告げられる説明には、少し冷たすら感じる。
「2番、6番、7番」
私の番号は『11番』
ユシャの番号は『12番だ』
確かに、成り行きで受けたオーディションとはいえ、何もせず逃げ出す事はいやだが、やることはやった。
この合格発表の瞬間においては、特に思うことはないと思っていた。
だが、現世の、真桜としての私の夢。
呼ばれないかもしれないという不安が心臓の鼓動を早くする。
「10番」
次、呼ばれなかったら、”不合格”
「11番、12番」
呼ばれた!!
嬉しくなって隣のユシャを見ると、ユシャも同じことを思ったのか、私の方を見ていた。
「君たち二人は、さっきの遅刻もある。このあとの審査は少し不利とはなるが、それは実力で取り返すように」
「「はい!!」」
「そこし話がそれたが、続きを発表する。18番、24番--」
それからも淡々と告げられる合格者の番号。
番号が呼ばれじ悲しい顔を受けべながら帰っていくものもいれば、余裕な顔して帰っていくものもいる。
「91番。以上、合計40名。第一次審査の合格者とします。先程も申しましたが、呼ばれなかったものはお帰りください」
不合格者が部屋から退出仕切ったこと確認すると、合格者を発表した審査員は椅子に座り、代わりに他の審査員が椅子からたちあがる。
「次の二次審査では、皆さんのダンス力。歌唱力を審査します。これより五人一組のチームを作ります」
審査員がそう告げると、スタッフらしき人が部屋に箱を持って入ってくる。
「彼女の持つ箱には、1から8の番号が割り振られた札が入ってます。それを一人づつ引いていき、同じ番号の札を持つ方とグループになっていただきますので、番号が若い方から順番に引いて行ってください」
五人一組での審査か…。
別に誰とグループになっても問題はないが、どうしてか、ユシャが心配でならない。
出来れば同じグループになりたいが…。
そんな事を考えていると、札を引く順番が回ってくる。
箱の中から札を引くと、書かれている数字は『6』。
『6』はよく、不吉な数字と言われているが、元魔王のワタシからすると、幸運を呼ぶ数字と言っても良いかもしれない。
札を引いたので列に戻る。
ユシャも引き終わり列に戻ってくると、私の方を見て顔の近くで両手の指を三本ずつ立てて、口で『6』と教えてくる。
やはり『6』は幸運を呼ぶ数字で間違えないな。
『私もだ』口パクで言うと、伝わったのか嬉しそうな顔をしている。
それから少しして、全員が札を引き終わり、同じ番号を持っている参加者たちで集まる。
「えっと、私、一ノ瀬 ユシャといいます。よろしくお願いします!!」
「私は、三澤 真桜。よろしく」
各々自己紹介をしていく。
物腰柔らかそうな、お姉さん感の強い、安藤さん。
何言ってるかわからないくらいに小さな声で自己紹介する、気が弱そうな河野さん。
そして--。
「市川 美佐。あんたたち、なんでもいいけど、美佐の邪魔だけはやめてよね?」
明らかに自己が強く、チームワークとはかけ離れていそうな”市川 美佐”。
『6』という数字はやはり、悪魔の数字だったのかもしれないと、彼女を見て、私は思い直す。
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