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両手剣士ケインの奮闘 ~始まりはだいたい宿屋から~  作者: ペンネーム宇津井健


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第4話 ジョブチェンジ、ランクアップ、表現が難しい

 一旦ギルドを出て何をしようか。そう言えばニャームの戦い方を知っておかないとだな。スカウトでも最低限の狩りくらいはするだろう。


「ニャームは普段どうやって得物を狩るんだ?」


ビクッと肩を震わせてぎこちなく俺に首を向けてポツリつぶやく。


「私、狩りができるほど強くないので」


「そうか、得物はあるか?」


「持っているのはこれです……」


 とつぶやいて俺に短剣を差し出した、随分使い込んだ()()()()()だな、これを得物として使うのは無理があるだろう。


「ふむ、それならニャームの得物を買うか」


「え、でも」


「いいから、武具扱ってるところを案内してくれないか」


「はい……『絶対後悔しますよ』」


 後悔なんてしてやらねえよ。ニャームには光るものがあると確信しているんでな。







「いらっしゃ、なんだニャームちゃんじゃん、今日は誰のお使いだ?」


怪訝そうな顔しやがるなこの店主。まあ今のうちのそのツラ堪能しとけ、驚かせてやるからよ。


「なあニャーム、これを握ってみてくれ」


 ニャームに差し出したのは安物のダガーだ。5000ジルなのでかなりのお値打ち品だ。俺が触った感じでは結構軽い武器だが、ニャームにはどうか?


「うーん、軽くはないですね」


「そうか、試しに振ってみるといい」


「えいっ」


 勢いよくブンと振られたダガー。扱いはなってないが、これは鍛え甲斐があるんじゃないか?握り方は正解だ。


「良い振り方じゃないかニャーム。握ったのは初めてか?」


「見たことある武器なので」


「おい店主、こいつをもらうぞ。ニャーム、果物ナイフはここに置いていけ」


「え?それだと果物の皮剥くときに」


「これからはそれもダガーでやるんだ。ダガーは覚えると便利だぞ?」


「まいど。その果物ナイフはうちじゃ買い取れないから持って帰んな」


「ほう、買取できないか。まあそれなら持って帰るか、ただニャームはそのダガーを持ち歩けよ、こいつは俺が使う」


「え?え?」


「よし、次はダガーに合わせた防具だな。防具店へ案内してくれ」


「えーと、はい……あの、いいんですか?私やくたた」


「たつ、立たせる。安心しろ、とりあえず行こう」


「はい、さっきのギルド通り過ぎるんですけど」


すたすた歩いていく俺たちに店主が「知らねえぞ」なんて言ってる言葉なんか俺には届かない、聞こえてたとしても届くことはない。ニャームには俺の相棒になってもらうんだ、ここからは容赦無しに踏み込んでいくぞ。







 防具店でも店主に同じことを言われたニャームだが、そんなことはお構いなしだ。ニャームに合う防具を俺が選び俺が金を出す。何を選べばいいのかわからない様子なので俺がスパッと決めた。動きやすく急所を守る防具がいい、動きを制限するものではなくいざという時だけ作用する防具の方が逆に安全だからだ。重く広く守るより、ニャームには身軽に動ける防具の方が絶対に生存確率が跳ね上がる。肉が付かないなら付くまで食わすし付くまで鍛える。しなやかな筋肉をつけるためにも食事に気を使わなければならないがそんなことは俺の苦にならない。金なら出す、ニャームの為なら惜しくない、そう思わせるモノを持っているからだ。近接戦闘特化、暗殺向きな存在感の薄さと気配の消し方の熟知、あの見てても消えるあの(すべ)があるなら色々裏をかけるんでな。


「買い物もすべて終わったわけじゃねえがそろそろ1時間だ。ギルドへ行こうか」


 荷物だけは持つと言ってきかないのでそれだけは譲った。まあおっさんとはいえ異性に着てた防具で何するんだと思われるのもなあ。


ギルドに到着して中へ入ると「いかにも」な奴らが幅を利かせてやがる。


「通りたいんだが」


一睨み、ほっせえ奴らばっかだな。ここにいる全員まとめて倒すのに3分かからんぞ。


「通りたい?通れよ」


こいつらギルド内で武器を構えやがった、何のつもりか知らねえが喧嘩は買うぞ。


「そうか、そうさせてもらうぞ。ギルド内で武器構える意味は分かってるのか小僧共」


「ハッ、知らねえから教えてくれねえか?」


「教えてやろ」


言い切る前に来やがった、血の気の多い奴らめ。正当防衛成立、殺されても文句なしだ。まあ今は殺さずに無力化で我慢してやるけどな。


「……クソが」


「口は減らねえなこの小僧、こいつだけ殺すか。死ぬ前に教えてやる、ギルド内での喧嘩は禁止、殺すか殺されるかだぞ。まさかだが知らなかったのか?」


 反応を見る限り知らないらしい、この町は平和だ。


「さてニャーム、いきなり仕事が発生した。この小僧の右腿をダガーで薄く斬ってみろ」


「は、はい!?」


「ぶった切れとか難しいことじゃない、サッと切って流血させるだけでいい。騙されたと思ってやってみろ」


「は、はいっ!!」


 素直な子だ、ちゃんと薄く切ってちょっと血が出た程度で済ませられている。その加減は意外と難しいことを知らないニャームと、お値打ちで買った武器の隠れ性能が発揮されるなんてことを知らない小僧の経験が出てくる。そのダガー『呪い性能付』だと店主もわかってなかっただろうな、ヒトの血を吸うと斬った相手の経験が身に着くんだぜ。お前の経験がニャームの経験になった、()()()()になったぜ。


「ニャーム、身体に変化はないか?」


違和感があったらすぐにダガーを取れるように心構えを立てておく。呪い属性としては弱い感じだがいざってときは考えがある。


「うーん、なんか身体が軽くなった気がします」


「なら、ちょっと気配消してもう一度同じことをしてみるんだ」


「はい……」


 お、心構えも変わったな。持ち手が暗殺者(アサシン)のそれになった。この町はやけに不思議な縁で絡まれているな、ニャームと言いダガーと言い、おそらくこいつらは元パーティーメンバー、しかも昨日クビにした側の奴らだ。ニャームの成長犠牲としてしっかり成り立ってやがる。


「やったなニャーム、こいつらの経験がニャームの経験になったぞ。ニャームはスカウトの性能とアサシンの性能を持ったハイブリッドアサシンとして生まれ変わる様なことが起きているはずだ」

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