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両手剣士ケインの奮闘 ~始まりはだいたい宿屋から~  作者: ペンネーム宇津井健


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第5話 ギルドで起きた最速の復讐を目の当たりにした受付嬢

 本日は異常()()。いつもは賑やかなギルド内がやけに()()()()。というか特定のパーティーが声高々にニャームさんの悪口を吐いている、あいつは使えないからパーティーに誘わない方がいい、と。妨害行為は推奨できない行為、だけどこの町一番のパーティー「ホーンラビッツ」に口を出せる度胸がある冒険者がいない。昨日クビにしといて妨害するだなんてダメな奴らは何をさせてもダメだと知った。さっきはニャームさんがいなかったけど、あと数分でニャームさんは新たなパーティーカードを受け取るケインさんとやってくる。


 C+クラスのこいつらなんてB-クラスのケインさんなら倒せるだろうし、まさかギルド内で喧嘩は売らないだろうと思っていたことをあっさり破るとは思ってもなかったし、さらには秒でケインさんに倒されるとも思ってなかった。ランクの差は確かにあるけど、ここまで歴然とした差があるとは微塵も思っていなかった。ケインさんのB-クラス、詐称なのでは?本当はAなのではないか?と疑ってしまうくらいにケインさんは強い。


「おう受付嬢、すまんな騒いじまって。売られた喧嘩なので買っただけだ、おかげでいい経験をさせてもらったぜ」


「エルーナさん、ごめんね。ちょっと復讐させてもらっちゃった」


 ニャームさんの雰囲気が変わっている、もともと存在感薄い子なのがさらに存在感が薄れている。背後が透けそうなぼんやりとした存在になっているニャームさんは確実に1時間前のニャームさんと違う。ニャームさんがニャームさんでなくなったかのように、パーティーカードを作っていた、たった1時間ですっかり変わってしまった。


「喧嘩は禁止、すいませんけど隠ぺいしてくれません?禁止行為なので最後まで通してほしいのですが」


「そうだよな、やっぱり喧嘩禁止だよな、あまりにも堂々と喧嘩売ってくるからルール変わっちまったのかと思ったぜ」


「えっと、殺しちゃっていいんですか?」


「ああ、こいつらはやっちゃいけないことをした。ルールもマナーも守らないやつを生かしておいちゃいけないからな。ニャームがやってくれるとこの先色々都合がいいんだが、できるか?無理にはやらせたくないんだが、この先を考えるとニャームにとどめを刺してほしいんだけど、どうだ?」


「いい機会なので殺しちゃいますね。恨むなら私じゃなくて昨日の自分達を恨んでね?」


 そう言って無表情にホーンラビッツのメンバーをいつも持ってる果物ナイフじゃない短刀でサクサク斬り刻んでいる。積年の恨みを晴らすように、無慈悲な表情で無慈悲な行動。まるであの短刀に血を吸わせるように斬りつけ吸わせて。凄惨な光景をギルド内が沈黙と恐怖の眼でニャームさんを捉える。ここにはあのただ弱くて逃げ足と報告がとにかく早いだけのニャームさんは居ない。今ここにいるのは「簡単にヒトを殺せるニャームさん」。生まれ変わったニャームさんと、B-詐称疑惑が出てしまったケインさんというこの町最強と最凶を兼ね備えたパーティー。口は良くないけど行動は正しいケインさんと口は悪くないけど行動が恐ろしくなったニャームさん、町の勢力が飲み込まれる感覚に襲われた。





「殺してくれたことに感謝したいところですが、片付けるまでが殺しじゃありません?面倒ごと抱えられるの困るんですけど」


「そう言われてもなあ、喧嘩売ってきたのこいつらなんだが。もう()()()()()なんだけどな」


「私が片付けますよ、()ったの私だから」


「そう言われて『はい』と素直に俺が従うとでも?」


「思いたいです、思ってください」


「悪いがパーティーの不始末を一人で片付けられると思わんことだ、パーティーの不始末はパーティーで片付ける。食材討伐(うち)はそういうパーティーにしたいんでな、諦めて俺にも片付けさせろ」


「じゃあお言葉に甘えて」


「あ、それとニャーム、そのダガーで俺の右腕をちょっと切ってくれ」


 ケインさんが急に味方を斬れなんて言い出した、何を言っているのだろうか?


「はい、どのくらい斬ります?」


「薄くな?薄くでいいぞ、ちょっと血を吸うだけでいいみたいなんでな」


「では遠慮なく」


 ニャームさんが言われた通りケインさんの右腕を少しだけ血を出すくらいに斬った。ニャームさんが素直すぎる。いやこれは従順なのだろうか?表現が難しい。主従関係のような、熟練のパートナーのような、なんとも表現できない。ああ、もっと言葉を学べばよかった、きっと後悔するとわかっていたのはこの時に表す言葉を持つ勉強をしなかったことだったのだ。後悔は先に立たない、終わったことだから後悔なのだ。今表せられないなら()()()()のだ。食材討伐パーティーは間違いなく大きな勢力になる。一刻も早くギルドマスターに報告しなければ、そう思っていてもこの2人から目が離せない。一挙手一投足が、別人レベルになって見えるこの2人から目を逸らしてはいけないと本能が訴えている。逸らせば殺される、そんなはずはないのに。そして2人がギルドを出たとたんに皆一斉に息を吐いた。溜息交じりの、羨ましいの声もちらほらと。あんたたち昨日までのニャームさんへの目が違うでしょうに。やっぱりパーティーは好きになれない。「食材討伐(あのふたり)を除いて」に変わったけれども。

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