表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
両手剣士ケインの奮闘 ~始まりはだいたい宿屋から~  作者: ペンネーム宇津井健


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

第2話 目覚めのインパクト

 いい感じに酒も回ってきて、ニャームがぽつりぽつりと言葉を吐き始めた。身体が細い理由は元々筋肉が付きづらい体質であること、そのくせ逃げる足は速い、細かいことに気づく、違和感をすぐに察知してその場から逃げることが多かったニャームは斥候でしか生きることができなかった、さらに獲物のヘイトを買っても自分の逃げ足が速すぎてついてこられない獲物は結局パーティーメンバーに行ってしまうこと、先ほどもそれでクビを宣告されたこと、言葉を選んでいたが大体のことはわかった。食うに困ってるなら俺が衣食住出す、報酬も出す、身の安全を保障する。逃げていいと肯定したし違和感をすぐに認められる事を称賛した。酒も久々らしく中々呑まれていてダウンしちまったので取った部屋に寝かせて俺は自室に戻り愛用の剣を立てかけて眠りについた。


 翌日朝、目を開いて最初に目に飛び込んできたのはニャームの寝顔だった。……部屋を間違えたか?俺が寝ぼけてニャームの部屋に来ちまった?それはない、だったら俺が壁に背を向けて寝ていないだろう。ニャームが寝ぼけて俺の部屋に来た?考えられるのはそれだ。気持ちよさそうに寝てるニャームに声をかけづらい。若くはないが齢を感じないニャームの魅力は()()()()()()()()()()()()()()。存在感がそもそもニャームは薄いんだ、無自覚に?だとしたらこいつの斥候能力は群を抜いて凄い。戦闘能力を身に着けたら相当上のクラスまで行くんじゃないか?


「……ニャーム、朝だぞ」


 声をかけたがニャームは起きない。斥候が起きないというのもなかなかの豪胆という事がわかる。本気で危なければ察知して逃げられるだろう。まあ本気で起こす気もないし、今は寝顔を堪能するか。よく見ると可愛らしい顔つきだし、役得だ。


「……すぅ……」


「ニャーム、そろそろ起きろ」


 ちょっとだけ気を張ってみたらパチッと目が開いた、やはりこういう敏感さが凄い。


「あ、あれ?」


「あれ?はこっちの話なんだけどな。寝ぼけて朝駆けとは殊勝だなニャーム」


「あ、あの、いえ、そんなつもりでは……えっと、あれ?」


「昨日ニャームを誘ったケインだ。覚えてないか?」


「あ、あー……」


 覚えてないらしい。寝ぼけてるだけなのか、それともとぼけてるのか。後者でないことを祈りたい。場の都合が悪そうにベッドから起き上がったニャームは服という概念がなかった、またも役得だ。


「あの、すいません……寝るときは服が邪魔に感じてしまって……」


「まあそれはいい。俺のことは覚えているか?」


「はい、うっすらとですけど……」


「まあ、それだけ俺を信頼してくれるならこちらとしては儲けものだ。服は部屋にあるのか?なら俺が取りに行くからベッドの中で待ってろ」


「あ、それは大丈夫です。私見つかりませんから」


「そうか、なら服を着てこい。飯食ってニャームの能力を見たい」


「はい、ちょっと行ってきますね」


 フラッと部屋から出ようとした瞬間、見ているはずのニャームが消えた。存在感どころか視覚からも消えるなんてとんでもない逸材を捨てたのか、なんて勿体ないことをしたんだ?役割をうまく振ればとんでもない活躍ができるはずなのにな。









 1階に降り朝食を2人分頼む。ニャームの懐具合を察して金を払い安心させる。無銭飲食のデメリットなんか背負わせることをしない。俺といても問題ないことをアピールできるなら大体のことはやる気でいる。まずはニャームの信頼を、まあほぼ得てはいるだろうけど高めておくに越したことはないからな。


 見たことのない黄色いものが生野菜とともに出てきた。野菜を生で食うのは久々だ、しばらく野草をそのまま食うくらいだったからだ。


「ニャーム、この黄色いものは一体なんだ?」


「これは『卵焼き』というこの町の名物ですね、この町の卵って生食できる珍しい品種で、まあ食べてみてくださいよ。一回食べたことあるんですけどすっごく美味しかったので」


 卵を生で食えるなんて聞いたことないが、ニャームの言葉を信じて食ってみた。旨い、中がトロトロしてやがる。程よく熱した卵がこんなにも旨いものだったとは思わなかった。卵はよく熱するものだとしか考えてなかった、考えてすらなかった()()()()()だ。ニャームと出会ったのも新しいことだし、どんどん新しいことに挑戦していくとするか。肉体成長の限界を迎えているおっさんになっても、新しい物事にはワクワクするもんだ、だから冒険者稼業なんてやってるんだけどな。


「どうした、ニャームは食わないのか?」


「あ、あの……本当にいいんですか?」


「むしろ食ってくれ、食わなきゃ逃げ足も鈍るだろう?食える時に食っとかなきゃ勿体ないぞ。遠慮なんかいらん、これからたくさん働くんだ、じゃんじゃん食え」


 ニャームの視線はほとんど卵焼きに行ってたからな、遠慮なんてする必要はないんだ。ここぞとばかりに食ってほしい。腹が減っては何もできないんだ、身体を大事にしないとそのまま死に繋がる稼業だからな。食い終わって腹ごなしとギルドへパーティー新設申請しに行かねえと。パーティーネームも決めなきゃならないしニャームの能力も把握したいし俺の能力も把握させたい。急にやることが多くなったが嬉しい悲鳴の方だろう。俺の口が意外と回ることも分かったし、これからどんどん仲間を増やせるんじゃないか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ