ラサリオン神聖紀4 〜ラサリオン殿下の九宝玉
ラサリオンのもとに九人の絶世の美女がやって来てから。
ラサリオンは、夜毎順番にひとりずつ、おのれの居室に招いた。
最初に呼ばれたのは、九人の中で最年長のエセルだった。
居室ではラサリオンの対面に、ラサリオンが座しているものと同質の椅子が用意されていた。
そこに座り、ラサリオンに促されたエセルは、その日に至るまでのおのれの人生を、亡夫との出会い、恋、夫婦であった日々、そして別れをも含めて、涙を交えながら語った。
ラサリオンは何も語らない。ただ、静かにエセルの話を聴き続けた。
語り終えると、ラサリオンに誘われて、ベッドをともにした。寛いだものではあったが着衣のまま、一夜ラサリオンの胸に抱かれた。
ラサリオンは何もしなかった。
居室に入ったとき、エセルは緊張の極みにあった。
が、話を続けているうちにその緊張感は無くなっていった。
そして、ラサリオンに静かに抱かれた一夜、エセルはかつて夫にも感じたことのない安らぎ、絶対的な安心感と幸福感に包まれたのだった。
次の夜はリセラが、その次の夜はトワ(永遠)が。
最年少のシャオリン(小鈴)が居室に呼ばれるまで、同じことが九夜、繰り返された。
九人の中で再び居室に呼ばれたものは誰もいなかった。
九人の美女は、みな分かっていた。
これは一夜限りのことであると。
だが九人は、そのままラサリオンの居室が存在する皇宮の一角にとどまった。
人びとは、彼女たちを、「ラサリオン殿下の九宝玉」と称した。
帝国ラグーンの民びとにとって、ラグーンは世界と同義であり、草原は自らの世界とは異なる領域という意識しかなかった。
だが、様々な部族が雑多に暮らしていたという草原が、突然統一されたという出来事。その統一が、十六歳の若き草原の王子により、極めて短時日の間に成されたということは、帝国において、大きな話題となった。
それはまるで……
帝国の民たちは思った。
ラサリオン殿下が成されるであろうようなことではないか。
草原が統一された翌年。
エルサーナの精神が感応した。
ついに、その時が来たか。
エルサーナは草原を発ち、帝国の都に向かった。
同行したのは、
弟である嫡子エルラシオン。
同母妹セレナ。
教師ルーレアート。
そして妻であるマンドハイの四人だった。




