表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の馬鹿  作者: 火浦マリ
太陽王から革命へ編
PR
55/93

グラク四世、笑うか泣くか――革命の終わりと余韻

 パリの空は鉛色だった。


 かつての王宮は荒れ果て、宮廷の栄華を彩ったシャンデリアも壁画も、今や冷たい風に晒されていた。




 ルイ十六世が断頭台に倒れ、王妃マリー・アントワネットも群衆の前で首を落とした。


 「自由、平等、博愛」の旗がはためき、群衆は叫んだ。だがその声に、あのころの笑いはなかった。




 笑いは恐怖と怒号の中に飲み込まれ、パンの匂いすら血の匂いにかき消されていた。




 そんな中で――道化がひとり、群衆に紛れて立っていた。


 顔はあのグラク三世と同じ。だが、彼は胸を張って叫んだ。




「俺はグラク四世! 三世の息子だ!」




 群衆がざわめく。


「また同じ顔だ……」


「道化の一族は不思議だな」


「だが、この時代にも笑いをもたらすのか?」




 民衆の目に疲労と不安の色が滲む中、グラク四世はにやにやと笑って見せた。




「俺は馬鹿だが、馬鹿だから死なない! 笑うか泣くか、どっちにするかはお前ら次第だ!」




 群衆の間に、わずかに笑いが漏れた。


「なんだ、それは……」


「泣くしかない世の中で、こいつは笑うのか」




 彼は広場の片隅でパンをかじりながら続けた。


「俺はパンの味を忘れない。パンを食えば、泣いてても笑えるだろう? 俺は馬鹿だから、それでいいんだ」




 その言葉は、怒号と恐怖で満ちたパリの広場に、不思議な余韻を残した。




 その日の夕暮れ、断頭台の影は長く伸びていた。


 人々は泣くべきか笑うべきか、わからないまま家路についた。


 ただ一人、グラク四世だけが肩を揺らして笑いながら歩き去った。




「笑いは死ぬかもしれない。だが馬鹿は死なない。次の時代でも、俺はまた腹をすかせて歩くだろう」




 そう言って彼は、民衆の群れに紛れて消えた。




 血と涙の時代が過ぎ去る時、人々の心に残ったのは――たったひとりの“永遠の馬鹿”の笑い声であった。



太陽王から革命へ編完結です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ