08 守護霊を召喚!
「占いクラブ? なんで?」
「それがね……」
歩きながら『守護霊召喚』について話すと、セナは楽しそうに笑った。
「へぇ~! そんなのあるんだ」
「うん。ぼくたちが体験したのは占いから、どんなのか分からないけど。でも、占いはほんものっぽかったんだ。急に水晶が光りだしたりしてさ」
「ふ~ん。この時代にも、まだ魔法が使える人間がいるんだね」
「魔法? 占いって、魔法なの?」
「うん、ざっくり言うとね。ほら、みんながみんな使えるわけじゃないでしょ」
「うん、たしかに」
そんなことを話しながら占いクラブのある棟に向かうと、なが~い行列ができていた。
「なんの行列かな?」
近づくうちに、なんとその列は、占いクラブに続いてることが分かる。
「わあっ! 大人気って、ほんとだったんだ」
列にならんでるのは、ほとんどが女の子。列の先頭には、看板をもったユウジさんがいて、
「順番にご案内するので、ならんでお待ちくださ~い」とよびかけていた。
「うーん。これにならぶのは大変そうだね」
「うん。どうしよう。どうにかならないかな?」
なかをのぞきこもうとするぼくらを、ユウジさんがとめる。
「ちょーっとまった、お二人さん。先着順だよ」
「でも、」
ぼくはふり返って、ようやく気が付いた。
ユウジさんが両手にもってる看板には、『占い師カレンの館 先頭はこちら!』と書かれてたんだ。
「ぼくたち、占いじゃなくて、守護霊召喚をしてほしいんですけど」
「おお! マジで!?」
ユウジさんは看板ごと両手を上にあげた。
「ってことは、オレのお客さんじゃん! そういうことなら、君たちは一番だ! ささ、なかに入った、入った~」
ぼくたちは一切またされることなく、なかに入れてもらえる。
(もしかしてユウジさん、占いクラブのなかじゃ、あんまり人気がないのかな? そういえば、守護霊召喚だけ『タダ券』だったもんね。うーん……)
うまくいくのか心配になってきたところで、ぼくたちは部屋のすみっこに案内された。ユウジさんがどこからかイスを二脚もってきて、すわらせてくる。
「いやあ~久しぶりのお客さんでうでがなるなあ~。それで君たち、だれを呼び出したいの?」
「えっと、アネッサを——」
言いかけて、ぼくは気が付いた。
(そうだ。呼び出すなら、別にアネッサじゃなくていいじゃん)
「——じゃなくて、ぼくたち、ツルギを呼び出してほしいんです」
「ああ~……ツルギかあ」
ユウジさんはしぶい顔をして、頭をかいた。
「う~ん、やってみるのはいいんだけど……。実は、前にもたのまれて、呼び出そうとしたことがあるんだ。けど、なんどやっても成功しなかったんだよ」
「あっ、たぶんそれ、ツルギの剣に、はねかえりの魔法がうちこまれてるからだよ。先輩じゃなくても、たいていの魔法使いじゃ呼び出せないよ」
「えぇっ! そうなのか」
セナの言葉に、ユウジさんはうれしそうに笑った。
「じゃあ、オレの力不足じゃなかったってことか!」
「うん、たぶんね。——ねぇぼくたち、ツルギじゃなくていいから、アネッサを呼び出してほしいんだ」「アネッサ?」
先輩は首をかしげてから、ポンッと手をたたいた。
「ああ、あの古めかしくも色気のあるハーブ魔女か! それならオレにもできる気がするぞ。——よしっ、じゃあさっそく魔法陣書くから、二人はそこでまっててくれ」
うでまくりするユウジさんを、えんび服姿のナオトさんがニヤニヤしながらこずく。
「おい、そんなえらそうなこと言って、できるのかよ。お前の召喚成功率、30%だろ」
「あっ、しーっ! 久しぶりのお客なんだから。それに、やってみなきゃ分からないだろ。30%は成功するんだ」
(30%……。てことは、やっぱり失敗する可能性のほうが高いんだ)
これでうまくいかなったら、次はどうしよう。
早くもぼくが頭をなやませているかたわらで、ユウジさんは、ぶあつくて古そうな本とにらめっこしながら、床にマジックで、魔法陣をえがいていく。
ナオトさんがコソコソ教えてくれた。
「こいつの家、いちおう由緒正しい魔法使いの家なんだ。力があるのはほんとうなんだよ。まあ、弱いのもほんとうだけど」
「そこ! 聞こえてるっつーの」
ユウジさんは真剣な顔で魔法陣をかききると、立ちあがって、上から見下ろした。
こしに手をあてて、まんぞくそうにうなずく。
「よし、かんぺき。じゃあ、さっそく召喚するぞ」
コホンッ、コホン、とせきをしてから、両手を合わせる。目をつむると、聞いたことのない言葉をつらつらとなえはじめた。
「———#$%&*¥#……」
すると、うっすら魔法陣が赤光りしはじめる。
魔法陣の文字を追うように、ちょっとずつ光が強くなっていき、ポツン、ポツン、と赤光りする文字がふえていく。
「おっ、これはいけるかもしれないな」
ポツリ、とナオトさんがつぶやくのを聞いて、ぼくの期待も高まっていく。
(よかった! 今回は、成功する30%のほうみたいだ)
けど、あともう少しですべての文字が赤くなると思ったところで…………今度はひとつ、ふたつ、と赤く光る文字が消えはじめた。
「*+&¥%%$!&%……!」
ユウジさんは、もりかえそうとでもするように、声を大きくする。じり、じり、と光る文字もふえていくけど、やっぱり消えてしまう文字も多くて、ついては消え、ついては消えをくりかえす。
セナが、ぼくにしか聞こえないくらい小さな声でつぶやいた。
「……うーん、やっぱり足りないか。仕方ないなあ」
「え?」
なんのことだろう、と思って横をふり向こうとしたとき、今度はナオトさんが声をあげた。
「おおっ! いったぞ!!」
あわてて魔法陣を見ると……なんとっ、さっきまでの様子がウソみたいに、すべての文字が強く光ってる! 部屋中が真っ赤にそまるほど強い光に、カレンさんの占い目当てにならんでいた女の子たちも、ふしぎそうにこっちを見た。
みんなに注目されるなか、とうとう魔法陣のなかに、うっすらひとかげがあらわれる。
長くてウェーブのかかった赤い髪に、ぷっくりしたくちびる。真っ黒なローブをはおったそのひとは、こっち——というよりたぶん、セナを見て、おもしろそうに笑った。
『ふーん、だれかと思ったら。なつかしい顔じゃないか』




