04 占い結果
「コホン、コホン。えっ~占いクラブにようこそ! オレたちのクラブでは、占いはもちろん、錬金術や悪魔ばらい、守護霊召喚なんかも取りあつかってるんだ。それじゃあ、さっそく体験してもらうとして……」
ユウジさんはイスを引いて、ぼくたちを、おかっぱ頭の女の人の前にすわらせた。
「こちらはオレたちの期待のエース、カレンさんで~す! なんとっ、カレンはすでに、守護霊と仮契約を結んでるんだ」
「仮契約っていうのは、えっと……」
入学ガイダンスでおそわったことを、どうにか思い出そうとしていると、えんび服の先輩がやさしく説明してくれた。
「卒業と同時に、校長先生に祝福されて結ぶのが『本契約』。『仮契約』は、そのひとつ前の状態っていうのかな。正式に契約を結んだわけじゃないけど、将来的に結ぶ約束をしている状態のことだよ」
「あっ、そうだった!」
「オレたちは、卒業までにどうにか、契約を結ぶ守護霊を見つけないといけないけど、カレンの場合、ほとんどさがす必要がないってことなんだ。それって、すごく気持ち的にラクなんだよなあ~。オレたちはこれから、必死でアピールしなくちゃならないからさ」
ポンッと、ユウジさんは、えんび服の先輩のかたに手おいた。
「説明ありがとう、ナオト。——じゃあカレン、さっそく二人を占ってやってくれよ」
「はあ~」とカレンさんはふかいため息をついた。
「けっきょく、ひとまかせなのね」
「そう言うなって。仕方ないだろ、お前はこのクラブきっての実力派なんだから」
「まあ、いいけど……。占いはいつもやってるし」
カレンさんは、黒目の大きな瞳で、ぼくたちをひたと見つめた。左手にはめられた指輪——仮契約をあらわすものだ——が、キラリと光る。
「わたしの占いは、水晶を使ったものよ。あなたたちの今後を、この水晶で見ていくわ」
ゴクンッ。
(ドキドキしてきた。ふんいきが、ものすごくぽいんだもん……!)
カレンさんが水晶に目を落としたとたん、水晶はあやしく光りだす。
ぼくたちが息をのんでいると、青白くてらされたカレンさんの後ろから、ひとりの守護霊がすぅ……とかげろうのようにあらわれた。
女の人のように見えるけど、ベールをはおっていて、はっきりと顔は見えない。頭からおでこには、宝石のつぶがたれさがっている。
「ああ、見えた。見えたわ!」
カレンさんは、とつぜん大きな声を出した。片方の目を手でおおって、食い入るように水晶を見つめる。
次に口を開いたとき、その声には、別の女の人の声もまじって聞こえた。
「……あなたたちは、近い将来、ひとつの別れをむかえる……。そして、近づいてくるかげがひとつ……。このかげは、あなたたちを助けようとするけれど、ほんとうの目的は別にある……。大きなかげに飲みこまれないよう、注意が必要よ。そして、時にはあきらめもかんじん……」
ふぅ、とカレンさんが息をはくと、水晶の光が消えて、守護霊もどこかに消えていった。
ドキンッ、ドキンッ、と自分の心臓がはねる音が、耳のすぐ近くで聞こえる。
「なんだよ、もう少しいいこと言えばいいのに。ちょっとこわかったぞ」
「仕方ないでしょ。わたしは、見えたことをそのまま伝えただけだもの」
カレンさんはツンとすました顔で、紅茶をすすった。
ユウジさんはかたをすくめて、まだ放心しているぼくたちを見る。
「どうだった? カレンの占いの的中率は、なんと九十九パーセント……! 今日は休業日だからだれもいないけど、ふだんは行列ができるくらい大人気なんだぜ」
そういって、パンフレットをわたしてくれた。
「これ、オレたちの活動記録とか、クラブ紹介をのせてるんだ。割引きチケットもついてるから、よかったらまた来てみてくれよ」
ぼくたちは両手にパンフレットをもって、ろうかに立った。
後ろには、赤いカーテンがかすかにゆれて、たれさがっている。
「さっきのって……」
「う、うん。なんだか、すごい体験をしちゃったね。ぼく、ちょっぴりこわかった……」
ヒョンタはぶるぶるとふるえるうでをさすった。
気のせいかもしれないけど、春なのに真冬みたいにつめたい風が、ピュ~と通り過ぎっていた気がする。
「そういえば、割引きチケットがあるって、言ってたっけ」
パンフレットを開くと、最後のページに、『……✂……』のマークと、ピンクの文字がおどっていた。
『悪魔ばらい 30%オフ』
『タロット占い 半額』
『守護霊召喚 タダ券』
『友だち紹介 70%オフ』
『カップルにて来店 50%オフ』。
チケットは、ひとつひとつ切り取れるようになっていた。
他には楽しそうに笑う集合写真とか、文化祭かなにかの出店、それと、占いについて説明する文章が、短く書かれてる。
ゴォーン、ゴォーン……と夕方をつげる鐘がなって、門からぱたぱたと、男子生徒が走ってきた。
「みんな、ビックニュースだ……!! ツルギが、聖騎士ツルギが、この学園に来るぞ!」




