表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

02 はじまる不思議な学園生活

「うわあ~っ、すっげ~!」


ぽかん、とぼくたちは口をあけて立ちつくした。


(……すごいや)


  真っ赤なじゅうたんがしかれたろうかに、天井にはシャンデリア。窓は、一面ステンドグラスになっていて、色とりどりのあかりがふりそそいでる。

 ここは、学園のなか。ぼくたちは二日間かけて、ようやくたどりついたんだ。


(まるでお城か、貴族のやしきみたいだ)


  チャラーン、チャラーン……と遠くで美しい鐘の音がする。


「さあ、立ち止まらないで、前に進みましょうね~。これから入学セレモニーがおこなわれる、講堂に案内しますよ。列をみださず、ついてきてくださ~い」


  『先生』の声に、ぞろぞろと列が動き出す。前と後ろには、同い年の子たちがたくさん。

 たしか、こういう子たちのことを『同級生』っていうんだよね。

 ツトムがこうふんしたように、体を乗り出した。


「わっ、すごいですよ、よく見たらこのステンドグラス『、守護霊伝説』をあらわしてます!」

 

 ツトムが指さしたほうを見てみると、そこにえがかれていたのは、かんむりをかぶった王様と、ひざまずく六人の守護霊たち。

 するどい剣に、きたえぬかれた大きな体、きれいな弧をえがく弓に、いかめしい盾と、古木のつえ………。それぞれの武器が、ひときわ大きくえがかれてる。

 リュウが首をかしげた。


「守護霊伝説? なんだっけそれ?」

「大昔、守護霊たちが生きていた時代のいつわですよ。この場面はおそらく、王様が(やまい)にかかったと知らされる直前ですね」

「へぇ~っ!」

「あ、あれ? あの、ひとりだけ、後ろを向いてる守護霊は?」


 ヒョンタが指さしたのは、ひとりだけ輪から外れてる守護霊。

 うす茶色の小さな頭に、ぶかぶかの緑色のローブと、つばの大きなぼうしをかぶっていて、かたわらには、体より長くて、先がねじまがったつえをもっている。


「あれは……。おそらく、伝説の守護霊じゃないでしょうか」


 ツトムは右手で眼鏡のふちをもって、身を乗り出した。

「伝説の守護霊が、なぜ姿を見せないのか——それに関しては、いくつか説があるんですが、その一説に、他のシックスたちと、意見が対立してしまったという説があるんです。あれはきっと、その様子をあらわしたものですよ!」

「へぇ~!」


  ツトムの解説に感心していると、リュウがとつぜん、「あっ!」と反対方向を指さした。


「おい、見てみろよ! 向こうに大きな銅像があるぜ! もしかして、有名な守護霊かな⁈」

「あっ、リュウ、ダメだよ。列をはみだしちゃ———」


  あわててとめようとすると、リュウの足元から女の子の顔があらわれる。


「うわあっ!」

『あなた! 列をみだしてはダメだと、カトリーヌは言ったはずよ』


  女の子は地面から体全体を出すと、リュウに向かって指をつきつけた。

 てっぺんが四角くて黒いぼうしをかぶっていて、よく見るとその体はすけている。


(……び、びっくりした……! 守護霊だったんだ……)


  まだドキドキしてるぼくたちを前に、女の子はどこからともなく、しなる棒をとりだした。

 右手にもつと、リュウの足元をぴしぴしたたく。


『早く列にもどって! ほら、早く。分からないの?』


 リュウは、あわてたように飛びすさった。


「わ、分かったから、ごめんなさい!」

『分かりました、でしょう? まったく、教育がなってないわね』


 そのとき、前方から悲鳴が聞こえた。 列のなかからとつぜん火がふき出して、天井高くまであかあかと燃えている。

「かっ、火事だあ~!」とたちまちあたりがおおさわぎになった。


『あきれた、きっと、火おこしゾインの仕業ね! 今朝、守護する対象者が亡くなったと聞いてはいたけど、もう学園にあらわれるなんて!』


  女の子の霊は、列をすべるように、すっと前にとんでいった。


「な、なんだよあの女。おっかねえっ~」

「先生の守護霊なのかな?」


  ツトムが、手にもっていた分厚い図鑑を、ものすごい速さでめくり出す。


「あれは、たしか——あっ、いました! 『新任教師レイン』です! 『職業は教師。ランクは☆☆ですね」


 ランクっていうのは、守護霊の強さだったり、地位をあらわしたもの。

 一番上が☆五つだから、二つってことは……。


「あれ? 新任って、新しい教師ってことでしょう? なのに☆が二つもあるの?」

「ええ。期待の新人なんです! 手にもっている棒は魔道具で、魔法を打ち消す力があるんですよ」

「へぇ~!」


  もりあがるぼくらのすぐ横で、またもや悲鳴が聞こえた。


「うっ、うわあっ!」

「ヒョンタ⁈ どうしたの?」


  あわててふり向くと、ヒョンタがぼう立ちになって、体をぶるぶるふるわせてる。


「ヒョンタくん! 大丈夫ですか?」 ツトムが心配そうに背中に手をおく。

「った、たすけ……」


 ヒョンタはなにか言いかけると、カクンとうなだれた。


「ヒョンタくん!」

「ヒョンタ⁉」


 ぼくらは青ざめて、助けをよぼうと先生を見る。そのとき、かたに手がおかれた。


「——大丈夫さ。しばらくの間、体を借りてるだけだからな」

「え」


  ふり返ると、ヒョンタがニッと笑っていた。その声は、まぎれもなくヒョンタの声。だけど、顔や仕草からなにまで、ヒョンタなのに、ヒョンタじゃない!

 ヒョンタはラジオ体操でもするみたいに、うでをゆっくりふったり、背中をそらしたりした。


「う~~~んっ、とこせ。いやあ~なんだこいつ、ほそっこいなあ。ちゃんと食べとるのかあ? せっかく長い体をしとるのに、もったいない」


  ヒョンタは高らかに右手をあげた。すると、豆電球がともるみたいに、指先に光があつまっていく。


「ここは、わしがうまく活用してやろう。——ほ~れ!!」


  かけ声とともに、ヒョンタの指先から光の玉がとびだす。

 「わあ~っ!」とその場から、歓声があがった。

 なんと、光の玉は花火のように打ちあがって、ぼくたちの真上で、あざやかな光の雨をふらせたんだ!


「ほ~れ、ほ~れ、美しいだろう~」


  ぼくたちはびっくりして、口をあんぐり開けた。


「なっ、なにこれ。これ、ヒョンタがやってるの⁈」

「いえ、もしかすると——」


  ツトムがなにか言いかける。そのとき、前からレインがとんで来た。


『こらっ、モグじい! 悪さしないでよ』


  レインが棒をたたきつけようとすると、ヒョンタの体から、おじいさんの霊が飛び出してきた! シルクハットをかぶっていて、お腹のあたりは、たてじまの服がはちきれそうなほどでっぷりふくらんでいる。


『ほっ、ほっ~い! これだからレイン嬢は頭がかたい。せっかくの入学記念なんだ。ドハデにやればいいじゃないか』

『こっちはスケジュールがぱんぱんなのよ! よけいなことをしてるヒマはないの!』

『よけいなことねぇ~。これのどこがよけいなんだ。ほれ、みんなもよろこんどるだろ?』

『そういう問題じゃ、ないんだってば!』


 レインが棒をふりまわすと、おじいさんの霊はかたをすくめて、逃げるように飛んでいった。


(今のって……!)


  ツトムが目をきらきらさせた。


「もしかして! あの守護霊が、ヒョンタくんにのりうつっていたんではないでしょうか? わあ~っ、はじめて見ました! ああ、でもそうか、ここは学園で、未契約の守護霊がたくさんいるから……!」


  ツトムは熱心に手帳にメモする。


「そ、そっか。——あ、そうだ、ヒョンタ!」


 思い出して、あわててふり向くと、ヒョンタは苦しそうに背中をまるめていた。


「ヒョンタ、大丈夫……?」


  顔をのぞきこんで、ひょうしぬけする。

 その顔はすっかり上気して、ほほはピンク色にそまっていたんだ。

 ヒョンタはいきおいよく顔をあげると、こうふんしたように声を大きくした。


「——す、すごいや! ねぇ、みんな見てた? ぼく、魔法を使ったんだよ!」


  ぼくたちは顔を見合わせる。


「たしかに、すごかったけど……。体は大丈夫なの?」

「うん、ぜんぜん平気! のりうつられてる間はびっくりして、息の仕方もわすれちゃったけど」


  晴れやかな笑顔をうかべるヒョンタのまわりに、わっとひとが集まってきた。


「ねぇ、今のすごかったね!」

「さっきの霊、なんだったの?」

「のりうつられるって、どんな感覚だった⁉」


  みんながおしかけてきて、ぼくたちはあっという間におしつぶされる。

 ぎゅうぎゅうで、ほとんどすきまもないなか、ツトムは必死に図鑑をめくった。


「先ほどの守護霊は——あっ、見つけました、『きっかいの奇術師モグドラ』です! 『職業は奇術師。ランクは☆☆☆』ですね! 子どもたちに大人気の、旅するエンターテイナーですよ。手の平に、実は小さなステッキをかくしもっていると言われていて——うわあっ」


 ツトムの声がとぎれて、聞こえなくなる。

 レインが空中で、ジタバタと手足を動かした。


『も~うっ! 静かに、前に進みなさいって言ってるでしょう!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ