第18話 記録を開く日
翌朝、スターリット・プロダクションは先に動いた。
午前八時十二分。
芸能ニュースサイトに一本の記事が出た。
人気若手グループ周辺で内部トラブルか
元担当スタッフが外部へ情報提供、事務所は厳正対応へ
見出しに、私の名前はない。
LumiRiseの名前もない。
だが、記事本文を読めば、関係者ならすぐにわかる内容だった。
「最近ファンミーティングで話題を集めた若手女性アイドルグループ」
「担当スタッフが現場判断をめぐり上層部と対立」
「契約内容についてメンバーに不安を与えた可能性」
「外部記者との接触も確認されている」
「事務所関係者は、タレントの活動に支障が出ないよう対応していると話す」
どれも、断定を避けている。
だが、印象は明確だった。
問題を起こしたのは私。
巻き込まれたのはLumiRise。
会社は被害を抑えようとしている。
よくできた記事だ。
悪意がある。
私は記事を保存し、掲載時刻、媒体名、記者名、引用されている「事務所関係者」の表現を記録した。
八時十五分、片桐弁護士から電話が来た。
「見ましたか」
「はい」
「想定通りです。会社側に抗議文を出します。同時に、こちらのコメントを準備します」
「会見は?」
「今日、開きましょう」
言葉が、静かに落ちた。
昨日まで可能性だったものが、現実になった。
「時間は」
「十六時。会場は押さえます。配信も準備します。相沢さん経由で、労務問題に関心のある媒体を中心に案内します」
「LumiRiseは」
「出しません。名前も原則伏せます。ただ、記事で特定されかねない表現が出た以上、『未成年者を含む若手グループ』という一般化した言い方は避けられないかもしれません」
「彼女たちに伝える必要があります」
「直接の接触制限があります。保護者経由と、片桐事務所からの一般通知にしましょう。あなたからは緊急性があるため、最小限の説明に留めるなら許容範囲です」
私は頷いた。
「わかりました」
通話を切ると、LumiRiseのグループチャットはすでに動いていた。
優芽。
この記事、私たちのことですよね。
奈々。
怖いです。佐伯さんが悪いみたいに書いてあります。
澪。
ふざけてる。
花音。
まず落ち着こう。スクショ保存しました。保護者にも共有します。
澪。
佐伯さんに連絡していいやつですか。
花音。
緊急だと思う。
私は深呼吸をして、短く送った。
記事は確認しています。
片桐弁護士と対応します。
本日、私から事実説明の場を設ける可能性があります。
皆さんは個人で反応しないこと。
この記事について聞かれた場合は「事務所および保護者と確認中です」とだけ答えてください。
保護者へ共有し、すべて記録してください。
すぐに既読がついた。
澪。
事実説明の場って会見ですか。
私は少し迷い、答えた。
その可能性があります。
優芽。
佐伯さん一人で?
片桐弁護士が同席します。
奈々。
怖いです。でも、佐伯さんが悪いって思われるのは嫌です。
花音。
私たちは何をすればいいですか。
予定通り体調を整えること。
個人発信しないこと。
会社や媒体から質問された場合は、即答せず文面で確認すること。
そして、自分たちの言葉を失わないこと。
花音から、少し間を置いて返信が来た。
わかりました。
私たちは、私たちの言葉を守ります。
私はスマートフォンを伏せた。
これでいい。
彼女たちを前に出さない。
私が出る。
それが今日の役割だ。
午前中は、ほとんど準備で過ぎた。
片桐事務所から届いた会見資料を確認する。
冒頭発言。
時系列表。
会社への通知書。
自宅待機命令の写し。
担当変更通知の写し。
LumiRise本人意思文書は、実名部分を伏せた要約にする。
保護者による契約確認申請も、個人名を伏せる。
RVEとの契約に関する「ネガティブ拡散も成果対象に含む可能性」は、文言そのものの写真は出さない。情報の存在と、法務確認が必要な内容として示す。
切り抜き動画については、実際の動画は出さない。
代わりに、公式が出した前後説明と、投稿時刻、削除時刻、拡散経路の概要を示す。
莉子の証言は、匿名証言として一部だけ。
瑠璃のコメントは、本人名義で出す。
ただし、瑠璃自身は登壇しない。
片桐は何度も言った。
「出しすぎないこと。会見は裁判ではありません。すべてを証明しようとすると、証言者を危険に晒します。今日は、第三者調査が必要だと社会に理解してもらうための場です」
私は頷いた。
出しすぎない。
感情を乗せすぎない。
でも、弱くしすぎない。
難しい。
私は冒頭発言を何度も読み直した。
そのたびに、余計な言葉を削った。
怒りを削る。
悔しさを削る。
残すのは、事実と目的。
昼過ぎ、白石瑠璃から実名コメントの最終稿が届いた。
私は、過去に過密な活動の中で喉に不調を来したことがあります。
当時、佐伯美月氏は医師の診断と休養を優先し、無理な稼働を止めてくれました。
その判断があったからこそ、私は今も歌い続けられています。
タレントを守る判断は、活動の妨げではありません。長く活動するために必要なものです。
私は、体調不良や涙や不安が、本人の意思に反して消費される業界であってほしくありません。
この問題が、個人攻撃ではなく、若いタレントが安心して活動できる仕組みを考えるきっかけになることを願います。
白石瑠璃
私はその文面を読んで、静かに目を閉じた。
瑠璃の声だ。
誰かに書かされたものではない。
私は返信した。
確認しました。
ありがとう。
片桐先生と最終確認の上で使用します。
すぐに瑠璃から返事。
はい。
美月さん、ステージに立つ前は深呼吸です。
私は少し笑った。
会見はステージではありません。
見られる場所に立つなら同じです。
その通りかもしれない。
午後三時半、私は会見会場に入った。
都内の小さな貸し会議室。
広すぎない部屋に、記者席が二十ほど並んでいる。後方に配信用のカメラが一台。机の上には、私と片桐の名札。
佐伯美月
弁護士 片桐由佳
自分の名前が白い紙に印字されているのを見て、少しだけ現実感が薄れた。
私は芸能マネージャーだ。
本来なら、名札はタレントの前に置かれる。
私は袖に立ち、時間を確認し、飲み物を用意し、カメラ位置を確認する側だった。
今日は違う。
私が座る側だ。
片桐が隣に来た。
「大丈夫ですか」
「怖いです」
「正常です」
「止まる合図ですか」
「確認して進む合図です」
私は小さく頷いた。
その言葉は、もう私たちの合言葉になりつつある。
会見開始五分前、相沢が記者席の後方に立っているのが見えた。
彼は私と目が合うと、小さく頷いた。
応援ではない。
記者として見る、という合図だった。
それでいい。
今日、必要なのは同情ではない。
事実を見てもらうことだ。
十六時。
片桐がマイクを取り、会見が始まった。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。弁護士の片桐由佳です。本会見は、佐伯美月氏に関する一部報道および、若年タレントの安全管理・契約説明・外部プロモーション施策に関する問題について、現時点で説明可能な範囲をお伝えするものです」
片桐の声は落ち着いていた。
「なお、所属タレント個人のプライバシーおよび安全を守るため、個人名や詳細な活動内容については伏せる部分があります。また、現在確認中の事項について断定的な表現は避けます」
そして、私に視線を向けた。
「佐伯さん、お願いします」
私はマイクの前で深呼吸した。
照明は強くない。
それでも、視線が集まる感覚は重かった。
「佐伯美月です」
声は少し低かったが、震えてはいなかった。
「私は芸能マネージャーとして、担当タレントを売るために守る仕事をしてきました。体調、睡眠、食事、怪我、未成年者の学校、本人の意思。そうしたものを確認することは、活動の妨げではなく、長く活動するために必要な業務だと考えています」
記者たちがペンを動かす。
「しかし、担当していた若手グループに関して、過密稼働、本人の意思に反するキャラクター付け、SNS上のネガティブな話題化を利用するような施策、悪意ある切り抜き動画、契約説明の不透明さが重なりました。私はそれらについて記録し、確認を求めました。その結果、降格、担当外し、自宅待機を命じられています」
一度息を吸う。
「本日お伝えしたいのは、私個人の処遇だけではありません。若いタレントが、自分の契約や活動内容を十分に理解しないまま、外部プロモーション施策に組み込まれ、体調不良や怪我、不安、涙まで話題化の材料にされる危険があることです」
私は片桐が用意した資料の一部を示した。
名前は伏せられている。
しかし、時系列は明確だった。
「こちらは、私が担当期間中に記録した主な出来事の時系列です。過密スケジュールの確認、未成年者の夜間稼働への懸念、怪我による医療機関受診、本人意思に反するキャラクター施策への拒否、SNS不仲説、切り抜き動画への対応、契約内容確認を求める保護者の動き、そして私への処分です」
次に、片桐が会社への通知書の概要を説明した。
悪評流布の停止要求。
記録保全要求。
第三者調査の必要性。
未成年者への不利益取扱い禁止。
記者席からシャッター音が聞こえる。
片桐は続けた。
「本件では、外部プロモーション会社との契約において、SNS上のネガティブな拡散も成果指標に含まれる可能性が指摘されています。現時点で当該契約の詳細をここで開示することはしませんが、未成年者を含むタレント本人および保護者に十分な説明がなされていたか、第三者による確認が必要です」
記者の一人が顔を上げた。
空気が少し変わった。
ネガティブ拡散が成果指標。
それは、言葉として強い。
私は続けた。
「私は、会社や特定の個人を一方的に断罪するためにここにいるのではありません。必要なのは、事実確認です。誰が、どの施策を、どの契約に基づき、本人たちにどう説明し、どこまで同意を得て実施したのか。若いタレントの心身の安全が、売上や話題化より後回しにされていなかったか。それを第三者が確認する必要があります」
ここで、白石瑠璃のコメントが配布された。
記者席がざわついた。
白石瑠璃。
名前の重みは大きい。
片桐が説明する。
「白石瑠璃氏は、本日登壇しません。ただし、ご本人の意思により、コメントを実名でお預かりしています」
記者たちが一斉に紙を見る。
私はその様子を静かに見ていた。
瑠璃の言葉が、部屋に広がっていく。
タレントを守る判断は、活動の妨げではない。
長く活動するために必要なもの。
その一文が、私の胸にも改めて響いた。
冒頭説明が終わると、質疑に入った。
最初の質問は、予想通りだった。
「佐伯さんは、会社に恨みがあってこの会見を開いたのですか」
私はマイクを持った。
「個人的な感情が一切ないと言えば嘘になります。担当から外され、自宅待機を命じられたことに、悔しさはあります。ただ、本日お話ししているのは、感情ではなく記録に基づく問題です。体調不良、未成年者対応、契約説明、SNS施策。これらは個人的な恨みではなく、業務上確認されるべき事項です」
次の質問。
「所属タレントを巻き込んでいるのでは?」
「巻き込まないために、個人名や詳細を伏せています。本人たちが矢面に立たされることは避けなければなりません。一方で、本人や保護者が自身の契約や活動内容を確認することは正当な権利です。それを『巻き込み』と呼ぶべきではないと考えています」
別の記者。
「外部記者への情報提供はあったのですか」
「媒体関係者と連絡を取ったことはあります。ただし、所属タレントの個人情報や社内資料を不適切に提供した事実はありません。安全上の懸念や業界構造について、相談したことはあります」
片桐が補足する。
「情報漏洩という表現が一部で使われていますが、現時点で会社側から具体的な漏洩資料や日時の提示は受けていません。こちらは開示を求めています」
次の質問は鋭かった。
「外部プロモーション会社というのは、RVEプロモーション企画室ですか」
会場が少し静かになる。
私は片桐を見た。
片桐が答える。
「現時点で特定の社名を断定的に問題視する段階ではありません。ただし、複数の外部関係者が施策に関与していたこと、SNS上の話題化やイベント演出と連動する形で不自然な炎上が発生したことは確認しています。社名を含め、第三者調査で明らかにされるべきと考えています」
相沢が手を挙げた。
「週刊トーチの相沢です。過去にも同様の不仲演出やSNS炎上を利用した施策が行われた可能性があると聞いています。過去案件との関連は?」
私は答えた。
「匿名での証言があります。過去に、メンバー間の不仲を匂わせるSNS投稿と、それを利用した配信企画により、若いタレントが心身に大きな負担を受け、活動継続が難しくなったという内容です。証言者の安全のため、現時点で詳細は伏せます。ただし、同じ構造が繰り返されていないか、調査が必要です」
別の記者が手を挙げた。
「佐伯さんは今後、独立するつもりですか。今回の会見は、新事務所設立のための布石では?」
私は少しだけ息を吸った。
来ると思っていた質問だ。
「私自身の今後の職業選択については、現時点で決定したものはありません。ただ、タレントの安全管理、契約説明、未成年者保護をきちんと制度化したマネジメントのあり方が必要だと考えています。仮に将来、私がどこで働くにしても、その考えは変わりません」
「担当グループを引き抜く意図は?」
「ありません。所属タレントの今後は、本人たちと保護者が契約内容を理解した上で、自分たちの意思で判断すべきことです。私が先回りして決めることではありません」
片桐が補足した。
「本会見は、引き抜きや移籍勧誘を目的とするものではありません。その点は明確に否定します」
質疑は四十分ほど続いた。
厳しい質問もあった。
「マネージャーがタレントに寄りすぎたのでは」
「芸能界では多少の炎上も戦略ではないか」
「数字を取れなければ活動は続かないのでは」
私は一つずつ答えた。
「タレントに寄りすぎることと、タレントの安全を確認することは違います」
「炎上を戦略とする場合でも、本人の理解と同意、心理的安全への配慮が必要です。未成年者を含む場合はなおさらです」
「数字は必要です。だからこそ、短期的な炎上ではなく、長く応援される信頼を作るべきだと考えています」
最後に、片桐が締めた。
「私たちは、スターリット・プロダクションに対し、第三者による調査、記録保全、所属タレントへの不利益取扱いの禁止を求めます。また、佐伯氏への事実に基づかない悪評流布がある場合は、法的措置を検討します」
会見が終わった瞬間、体から力が抜けそうになった。
だが、まだ終わりではない。
記者たちはすぐに記事を書く。
会社も反応する。
SNSも動く。
ここからが、本当の外の戦いだ。
控室代わりの小部屋に戻ると、片桐が水を差し出した。
「よく答えました」
「硬すぎませんでしたか」
「ちょうどいい硬さです。怒鳴らなかった。泣かなかった。断定しすぎなかった。それが良かった」
私は水を飲んだ。
手が少し震えていた。
怖かったのだと、終わってからわかる。
スマートフォンを見ると、通知が大量に来ていた。
まず、瑠璃。
見ました。
美月さんの言葉で話していました。
私のコメントも、ちゃんと届いています。
次に、莉子から瑠璃経由で。
名前は出ていないのに、私のことをなかったことにしないでくれて、ありがとうございました。
少しだけ、息がしやすいです。
私は目を閉じた。
それだけで、今日会見を開いた意味があったと思えた。
そして、LumiRiseのグループチャット。
花音。
会見、見ました。
優芽。
佐伯さん、すごかったです。怒ってるのに冷静でした。
奈々。
私、泣きました。でも怖い涙じゃなかったです。
澪。
「短期的な炎上ではなく、長く応援される信頼」って、私たちのことですよね。
花音。
私たちは、自分たちの意思で契約確認を続けます。
佐伯さんに言われたからではなく、私たちのために。
優芽。
怪我も涙も燃料にしないでって、ちゃんと言ってくれてありがとうございました。
奈々。
怖いって言っていいって、もっと信じられました。
澪。
私たちも、切り取られた一部だけで全部を決めません。佐伯さんのことも。
私は画面を見つめたまま、しばらく返信できなかった。
接触制限。
わかっている。
でも、これは緊急対応ではない。
だから返信しない。
代わりに、胸の中で言った。
ありがとう。
あなたたちがいたから、私は今日、前に立てた。
夕方六時前、スターリットが正式声明を出した。
当社元従業員による会見について
本日、一部元従業員が当社に関する会見を行いました。
当社としては、事実と異なる内容が含まれていると認識しており、詳細を確認の上、厳正に対応いたします。
所属タレントへの安全配慮、契約説明、コンプライアンス体制については、適切に運用しております。
所属タレントおよび関係者への誹謗中傷はお控えください。
元従業員。
まだ退職していない。
自宅待機中の社員だ。
片桐がすぐに反応した。
「元従業員」は不正確です。訂正要求を出します。
私は頷いた。
細かいようで、重要だ。
会社は私をもう外の人間として扱い始めている。
そこにも意図がある。
私は声明を保存した。
スターリット声明_元従業員表記。
夜にかけて、SNSは大きく動いた。
佐伯さんの会見、冷静で逆に怖いくらい説得力あった
白石瑠璃がコメント出したの大きい
ネガティブ拡散も成果指標って何?
若いアイドルを炎上耐性テスト扱いしてたなら最悪
事務所の声明、「元従業員」って何?まだ自宅待機中では?
LumiRiseの名前出すな、守れ
一方で、攻撃もあった。
逆恨みマネージャーの暴露商法
売れない責任を会社に押しつけてるだけ
タレントを盾にして独立狙い?
白石瑠璃も巻き込まれてかわいそう
予想通りだ。
火は大きくなった。
だが、今度は一方的に燃やされているわけではない。
こちらの記録も、言葉も、同時に広がっている。
夜八時、片桐から連絡があった。
「スポンサー数社が、スターリットに説明を求め始めています」
「もうですか」
「白石瑠璃さんのコメントが効いています。それから、未成年者とネガティブ拡散成果指標の組み合わせは、企業にとってかなりリスクが高い」
「LumiRiseのスポンサーですか」
「一部はそうです。ただ、まだ表には出ません」
予定より早い。
会見の目的は第三者調査を求めることだった。
だが、スポンサーが動けば、会社は無視できない。
黒崎たちは、数字で動く。
ならば、スポンサーの説明要求は最も効く。
私は静かに息を吐いた。
「片桐先生、ここから会社はどう動きますか」
「二つ考えられます。一つは、外部調査を受け入れるふりをして時間稼ぎ。もう一つは、佐伯さんを懲戒解雇し、さらに強く切り離す」
「後者でしょうね」
「私もそう思います。備えましょう」
通話を切ったあと、私はノートを開いた。
今日の記録を書く手は、少し重かった。
会見実施。
目的:一部報道への事実説明、若年タレントの安全管理・契約説明・外部プロモーション施策の問題提起、第三者調査要請。
白石瑠璃、実名コメント提出。
匿名証言の存在を示すが詳細非開示。
スターリット声明:「元従業員」と不正確表記。
SNS上で反応拡大。スポンサー説明要求の動きあり。
次段階:会社による懲戒・切り離しへの備え。
最後に、私は今日の自分の言葉を思い出した。
短期的な炎上ではなく、長く応援される信頼。
それはLumiRiseのことでもあり、私が作ろうとしている場所のことでもある。
スカッとするには、まだ早い。
会社はこれからもっと強く出る。
真壁も黙っていないだろう。
RVEの契約も、まだ表には出しきれていない。
でも、今日は一つだけ確かだった。
黒崎たちが作った「問題マネージャー」という物語は、崩れ始めた。
記録を開いたからだ。
切り取られた数秒ではなく、積み重ねた日々を示したからだ。
そして、裏方の声に、瑠璃の声、莉子の声、保護者の声、LumiRiseの沈黙の意思が重なったからだ。
私は窓の外を見た。
夜の街は、いつも通り明るい。
その光の下で、まだ誰かが燃やされているかもしれない。
だから、ここで終われない。
今日、記録を開いた。
明日からは、その記録をもとに、嘘を一つずつ崩していく。




