第15話 外に出る準備
自宅待機二日目の朝、私は会社へ向かわなかった。
当たり前のことだ。
命令書には、当面一週間の自宅待機と明記されている。業務用端末も返却済み。会社のカレンダーも、社内チャットも、共有フォルダも見られない。
それでも、朝七時を過ぎると、体が勝手に出社の準備を始めようとする。
黒のパンツスーツを手に取りかけて、止まる。
今日は現場に行かない。
LumiRiseの控室にも、スタジオにも、テレビ局にも行けない。
私はクローゼットの前で数秒立ち止まり、結局、白いシャツに紺のカーディガンを羽織った。戦闘服ではなく、作業着のような服。
今日は外へ出る準備をする日だ。
スターリットの外へ。
黒崎たちの管理の外へ。
そして、いつかLumiRiseが自分たちの意思で立てる場所を作るための準備を。
キッチンで味噌汁を温め、ご飯をよそい、卵を焼いた。体温を測る。三十六度四分。睡眠は六時間。昨日より少し眠れた。
私は個人用スマートフォンを開き、LumiRiseのグループチャットを見た。
朝の体調報告が並んでいる。
花音。
起床しました。睡眠六時間半。体温36.4度。昨日の申請について総務から受付返信が来ました。
優芽。
起きました! 睡眠七時間。足首痛み一。父が今日事務所に説明を求めるメールを出すそうです。
奈々。
起きました。睡眠七時間。体温36.5度。お母さんが総務から返信をもらいました。少し安心しました。
澪。
起床。睡眠六時間。契約確認申請、受付済み。返信内容は保存しました。
四人は、私に直接質問していない。
会社の接触制限を理解し、自分たちの間で報告を回している。
私は返信しない。
それでいい。
見守ることと、口を出すことは違う。
守るとは、いつまでも手を握り続けることではない。
自分たちで立てる足場を残すことだ。
それでも、胸は少し痛んだ。
彼女たちの現場にいない朝は、静かすぎる。
八時半、片桐弁護士からオンライン面談のリンクが届いた。
今日の議題は三つ。
一つ目、私への自宅待機命令と悪評流布への対応。
二つ目、LumiRiseと保護者による契約開示請求の進め方。
三つ目、将来的な独立または新体制移行の可能性。
最後の項目を見たとき、私はしばらく画面を見つめた。
独立。
これまで、頭の片隅にはあった。
けれど、あえて言葉にしてこなかった。
言葉にすれば、現実になる。
現実になれば、責任が生まれる。
芸能事務所を離れることは、ただ会社を辞めることではない。
タレントの契約、違約金、権利、楽曲、グループ名、衣装、ファンクラブ、SNSアカウント、スポンサー、スタッフ、保護者、学校、税務、労務、コンプライアンス。
夢だけでは一日も回らない。
けれど、今のスターリットに残れば、LumiRiseはまた同じ火の中に投げ込まれる。
ならば、外に道を作る準備は必要だった。
九時、片桐弁護士との面談が始まった。
画面越しの片桐は、昨日と同じく落ち着いていた。背景には法律書が並び、机の上には分厚いファイルが置かれている。
「佐伯さん、まず確認です。会社からの自宅待機命令には従っていますね」
「はい。会社関係者への接触も、緊急時を除き控えています」
「良いです。LumiRise側からの連絡は?」
「グループチャットは見ていますが、私からの返信はしていません。体調や契約確認の報告は、本人同士で共有しています」
「その対応で継続してください。あなたが直接指示を出すと、会社側は『命令違反』『扇動』と主張してきます」
「はい」
片桐は資料を見ながら続けた。
「次に、会社側の悪評流布について。黒崎常務の発言、宮内さんのメモ、相沢記者が聞いた広告代理店筋の話。これらは重要ですが、現時点ではまだ証拠として強いとは言い切れません」
「録音はありません」
「だからこそ、今後同様の発言や連絡があれば、発信者、日時、相手、内容を積み上げます。あなたの評判を毀損する内容が代理店や制作会社に流れているなら、差止めや通知書を検討できます」
「通知書を出すタイミングは?」
「早すぎると相手に手の内を見せます。まずは保全です」
保全。
片桐もまた、記録の人だった。
「LumiRiseの契約開示請求については、保護者が入っているのが強いです。特に三枝奈々さんは未成年ですから、事務所側は説明責任を避けにくい。開示された書類を、保護者側が専門家へ相談する流れを作りましょう」
「私が中に入らないほうがいいですね」
「現時点では。その代わり、保護者が個別に専門家へ相談できる窓口を用意することは可能です。あなたが直接ではなく、片桐法律事務所として案内できます」
「お願いします」
片桐は頷き、少し間を置いてから言った。
「そして、独立の可能性です」
私は背筋を伸ばした。
「まだ、LumiRise本人たちに話す段階ではないと思っています」
「その判断は正しいです。現所属契約がある以上、あなたが独立や移籍を具体的に誘導すれば、会社から契約違反の誘引、引き抜き行為と主張される可能性があります」
「はい」
「ただし、仮に将来、本人たちが契約解除や移籍、独立を選択する場合に備え、受け皿の準備を検討すること自体は違法ではありません。あなた自身の今後の職業選択でもありますから」
受け皿。
その言葉が、私の中で形を持ち始める。
「芸能事務所を作るには、何が必要ですか」
片桐は少しだけ笑った。
「夢の話ではなく、実務の話でいいですね」
「もちろんです」
「法人設立、資本金、定款、銀行口座、税理士、労務、契約書式、肖像・著作権管理、未成年者対応規程、ハラスメント相談窓口、稼働時間ルール、反社チェック、個人情報管理、スポンサー契約、イベント保険、外部スタッフとの業務委託契約。最低限でもそれだけあります」
「多いですね」
「芸能事務所は、夢を売る場所である前に、他人の人生を預かる事業です」
私は頷いた。
その言葉は、私の考えと同じだった。
だからこそ、スターリットのやり方が許せない。
他人の人生を、数字の材料として扱っている。
「佐伯さんが将来的に新事務所を作るなら、最初に作るべきは理念ではなく、ルールです」
「ルール」
「はい。未成年者の稼働上限、学校優先、体調不良時の中断基準、食事・休憩の確保、SNS運用の心理的安全、本人同意の手続き、外部施策の審査、契約説明の記録。あなたがスターリットで戦ってきたことを、社内ルールとして最初から書くのです」
私はノートに書いた。
新事務所規程案。
未成年稼働。
休憩。
食事。
体調。
SNS。
本人同意。
記録。
片桐は続けた。
「ただし、LumiRiseを前提に作らないこと。まずは、あなた自身がどんなマネジメントをしたいのかを整理してください」
「わかりました」
「そして、資金計画です。理想だけではタレントを守れません。家賃、人件費、レッスン費、衣装費、交通費、弁護士費用、税務、保険。最低半年から一年分の運転資金が必要です」
「現実的ですね」
「現実を見ない理想は、すぐに人を傷つけます」
その言葉は重かった。
守りたいと願うだけでは守れない。
準備がいる。
数字がいる。
契約がいる。
ルールがいる。
私はずっと、会社の中で戦ってきた。
でも、外に出るなら、戦うだけでは足りない。
作らなければならない。
壊すのではなく、作る。
面談の最後、片桐は言った。
「佐伯さん。今すぐ独立を宣言してはいけません。でも、準備は始めてください。会社に残るにせよ、出るにせよ、選択肢を持つことがあなたを守ります」
「はい」
「そして、LumiRiseが将来どの道を選ぶかは、彼女たち自身が決めることです」
「わかっています」
「その前提を忘れなければ、あなたは大丈夫です」
面談が終わったあと、私はしばらくノートを見ていた。
独立準備。
その四文字を、ページの中央に書く。
その下に、少し迷ってから会社名の仮案を書いた。
ルミナ・マネジメント
光を意味する言葉。
だが、LumiRiseに寄せすぎている。
私は線を引いて消した。
まだ違う。
LumiRiseのためだけの事務所ではない。
誰かを燃やして光らせるのではなく、自分の足で光の中に立てる人を支える場所。
私はもう一度書いた。
アステル・マネジメント
星。
小さくても、自分で光るもの。
悪くない。
ただし、まだ仮だ。
名前より先に、ルールを作る。
私は一枚目に「新事務所準備リスト」と書き、項目を並べた。
一、法人設立手続きの確認。
二、資金計画。
三、マネジメント契約書案。
四、未成年者保護規程。
五、稼働時間・休憩基準。
六、SNS運用ガイドライン。
七、外部施策審査フロー。
八、ハラスメント相談窓口。
九、医療機関・心理相談先リスト。
十、協力スタッフ候補。
十番で、私は手を止めた。
協力スタッフ。
思い浮かぶ顔があった。
宮内。
宣伝担当。
衣装担当。
ダンス講師。
カメラマン。
相沢は記者だからスタッフではない。
片桐は弁護士。
瑠璃は所属アーティスト。
莉子は証言者。
今すぐ声をかけることはできない。
引き抜きや接触制限の問題がある。
だが、将来、もし必要になったら。
私はそこに「候補者名は現時点で記載しない」と書いた。
慎重すぎるくらいでいい。
昼過ぎ、相沢から連絡が入った。
佐伯さんに関する悪評の出どころ、広告代理店の大崎周辺でほぼ間違いなさそうです。
ただし記事化はまだ早い。
別件で、RVEとスターリットの契約に関する周辺取材を進めます。
私は返信した。
了解しました。
私は弁護士を通して対応します。
LumiRise本人や保護者には直接接触しないでください。
必要がある場合は、本人側の同意と専門家同席で。
相沢。
わかっています。
佐伯さん、独立する気はありますか?
私は画面を見つめた。
記者は鋭い。
いや、昨日までの流れを見れば、当然の推測かもしれない。
少し考えて、返信した。
今はまだ準備以前です。
ただ、自分の職業選択として可能性は検討します。
その話は記事にしないでください。
相沢。
当然です。
もし本当に作るなら、芸能労務を前面に出した事務所は珍しい。
業界には必要かもしれません。
必要かもしれない。
その言葉に、少しだけ背中を押された気がした。
芸能労務を前面に出した事務所。
夢がないと言われるかもしれない。
堅すぎると言われるかもしれない。
でも、夢を守るには労務が必要だ。
契約が必要だ。
睡眠が必要だ。
食事が必要だ。
休む権利が必要だ。
午後二時、奈々の母、朋子さんからメールが来た。
総務から、契約書・追加同意書・説明記録の開示について、来週面談を設定したいと連絡がありました。
神田部長も同席すると言われましたが、不安です。
片桐弁護士に相談してもよろしいでしょうか。
私は接触制限を意識しながら、慎重に返信した。
保護者として専門家へ相談することは可能です。
私から詳細な助言は控えますが、片桐法律事務所へ相談希望とお伝えいただければ窓口を案内できます。
面談内容は文面で事前確認し、可能なら議事録作成を求めてください。
これが限界だった。
しかし、十分でもあった。
同じような相談は、その後、優芽の父、花音の母、澪本人からも来た。
四人全員が、保護者または本人として専門家へ相談する方向に動き始めた。
スターリットにとっては、想定外だろう。
タレント本人は契約を読まない。
保護者は事務所を信じる。
マネージャーは会社に従う。
その前提で作られた仕組みに、本人たちが文書で質問を投げ始めたのだから。
午後四時、私は新事務所準備リストをさらに具体化していた。
資金。
ここが一番現実的で、苦しい。
自分の貯蓄でどこまでできるか。
退職金が出るかどうかは怪しい。懲戒に持ち込まれれば出ない可能性もある。会社と争うなら弁護士費用もかかる。
スターリット時代に築いた人脈はある。
だが、黒崎が本気で悪評を流せば、仕事は来ないかもしれない。
スポンサーも代理店も、最初は警戒するだろう。
ただ、まったく道がないわけではない。
瑠璃を守った実績。
LumiRiseのファンミ成功。
現場スタッフからの信頼。
過密スケジュールを減らして反応率を上げたデータ。
安全管理が売上を妨げないことを示す数字。
私はそれらを一枚にまとめ始めた。
マネジメント実績資料。
白石瑠璃については、本人許可がない限り詳細は書けない。
LumiRiseについても、社内情報を出せない。
だが、自分の職務経歴として一般化することはできる。
過密稼働の見直し。
未成年者対応。
SNS炎上初動管理。
ファンミーティング構成改善。
怪我対応と代替演出。
反応率向上。
タレント本人の意思確認。
これらは、私の仕事だ。
誰にも奪えない。
夕方、宮内から個人メールが届いた。
佐伯さん
今日、社内で「佐伯さんとは連絡するな」という通達が口頭でありました。
ただ、文書では出ていません。
総務部長はかなり困っている様子でした。
LumiRiseの保護者からの申請が複数来て、社内がざわついています。
私からは、これ以上頻繁に連絡しないほうがいいと思います。
でも、必要な記録は残しています。
佐伯さん、負けないでください。
私は読み終えて、すぐには返信しなかった。
宮内を危険に晒してはいけない。
ただ、彼女の勇気を無視することもできない。
連絡ありがとう。
今後は無理に情報を送らなくて大丈夫です。
あなた自身の安全を最優先にしてください。
記録は、あなたを守るためにも残してください。
送信。
宮内からの返信はなかった。
それでよかった。
夜になると、白石瑠璃から連絡が来た。
美月さん、少しだけ相談です。
私の来月のライブ、事務所が急にセットリスト変更を求めてきました。
喉に負担の大きい曲を増やせと言われています。
「佐伯がいなくても歌えるところを見せろ」と神田部長から。
私は画面を見て、静かに怒りが湧くのを感じた。
瑠璃への圧力。
私への当てつけ。
彼女の喉を人質にするようなやり方。
私はすぐに返信したい衝動を抑えた。
接触制限がある。
瑠璃は所属アーティストだ。
ここで私が具体的に指示すれば、会社はそれを使う。
私は片桐に相談するべきだった。
まず瑠璃に短く返す。
私から具体的な業務助言はできません。
ただし、喉の状態、医師やボイストレーナーの見解、過去の不調履歴を文書で整理し、会社へ提出してください。
必要なら専門家へ相談してください。
無理はしないでください。
瑠璃。
わかっています。
自分で出します。
もう「佐伯さんが止めたから」じゃなくて、「私が歌い続けるために必要だから」と言います。
私はその文面を読んで、胸が熱くなった。
そうだ。
瑠璃も、自分で言える。
私がいなくても。
それが本当の意味で、彼女が守られた証拠なのかもしれない。
私は片桐にも状況を共有した。
片桐からはすぐに返信があった。
佐伯さんから直接介入しない判断で正解です。
白石さん本人が医師・ボイストレーナーの意見を添えて会社へ提出する形が望ましい。
圧力メッセージは保存してください。
私は瑠璃へそのまま転送するのではなく、専門家相談を勧める一般的な文面だけを送った。
夜九時、LumiRiseのグループチャットに四人の一日の報告が並んだ。
花音。
契約確認申請について、母と片桐先生に相談することにしました。
優芽。
父が「契約は読むためにある」と言っていました。ちょっと怖いけど頼もしいです。
奈々。
お母さんが、面談に一人では行かないと言ってくれました。
澪。
契約書の「成長過程、葛藤」の部分について、質問をまとめました。送る前に母に見せます。
誰も私に直接助言を求めていない。
それぞれが、保護者や専門家へつないでいる。
正しい。
私は返信せず、ただ画面を見守った。
すると、優芽が続けた。
佐伯さん、見てるだけでいいです。
私たち、ちゃんとやってます。
私は息を止めた。
見ていることに気づかれている。
澪が続ける。
返信不要。記録係さんも休んでください。
奈々。
ご飯食べてください。
花音。
私たちも今日は早く寝ます。佐伯さんも休んでください。
返信不要。
私は本当に返信しなかった。
ただ、スマートフォンの画面に向かって小さく頷いた。
彼女たちは、ちゃんとやっている。
私は、その事実を信じなければならない。
深夜前、私は新事務所準備リストの最後に、新しいページを追加した。
タイトルは、守るための事務所に必要なもの。
そこに、箇条書きではなく文章で書いた。
タレントを商品と呼ばないこと。
休むことを敗北にしないこと。
食べることを怠慢にしないこと。
怪我や涙を宣伝素材にしないこと。
未成年者の学校と家庭を邪魔者にしないこと。
契約書を隠さないこと。
本人が理解するまで説明すること。
SNSの数字より、本人の心を優先すること。
売るために守ること。
守るために、数字も見ること。
裏方を軽んじないこと。
そして、誰かの声を奪わないこと。
書き終えたあと、私はしばらくそのページを見つめた。
これは理念だ。
片桐は、理念より先にルールと言った。
その通りだ。
でも、ルールの土台には理念がいる。
何のためのルールなのかを忘れた瞬間、制度は人を縛る道具になる。
スターリットにもルールはあった。
契約書も、同意書も、承認フローも。
だが、それらはタレントを守るためではなく、会社を守るために使われていた。
私はそういう場所を作りたくない。
まだ何も始まっていない。
法人もない。
資金も足りない。
仕事の保証もない。
LumiRiseを受け入れられるかどうかもわからない。
そもそも、彼女たちが将来何を選ぶかは彼女たちの意思だ。
それでも、外に出る準備を始める。
選択肢がなければ、人は従うしかなくなる。
選べる場所を作ること。
それが、今の私にできる反撃だった。
日付が変わる少し前、相沢から最後のメッセージが届いた。
RVEとスターリットの契約について、別ルートから追加確認が取れそうです。
ネガティブ拡散成果報酬の件、かなり危ない。
ただ、真壁側も動いています。
佐伯さんへの悪評だけでなく、過去の担当タレントにも圧力が及ぶ可能性あり。気をつけて。
私は返信した。
了解しました。
こちらも弁護士を通して動きます。
記事化はまだ待ってください。
相沢。
待ちます。
でも、長くは待てないかもしれません。相手が先に潰しに来る。
私は画面を閉じた。
黒崎は私を業界から消すと言った。
須藤は代理店へ話を回している。
真壁も動いている。
瑠璃への圧力が始まり、LumiRiseの契約確認で会社は揺れている。
時間はない。
でも、焦ってはいけない。
私はノートの最後に、明日の予定を書いた。
一、片桐弁護士へ自宅待機命令への対応確認。
二、保護者相談窓口の整備。
三、莉子証言書の保管方法確認。
四、瑠璃の圧力記録の整理。
五、新事務所設立に必要な費用試算。
六、スターリットとの交渉に備えた時系列整理。
そして、七つ目。
独立準備を進める。ただし、誰の意思も先取りしない。
私はペンを置いた。
窓の外には、深夜の街の明かりが揺れている。
渋谷の坂の上にあるスターリットのビルも、どこかで光っているはずだ。
あの場所で、私は長く働いてきた。
夢を支える場所だと信じたかった。
でも今、あの光は少し違って見える。
人を照らす光ではなく、人を焼く照明になってしまったのなら、別の灯りを作るしかない。
小さくていい。
派手でなくていい。
けれど、そこに立つ人が、自分の足で立てる場所。
外に出る準備は、もう始まっている。




