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右腕が疼くので、ちょっと世界救ってきます。 ―黒焔の黙示録(アポカリプス)―  作者: 針々


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第三節 黒焔は天を焦がす《アビスエイジ・ザ・インフェルノフレイムバーン》


「おい、ちょっと待てよねーちゃん!」

ギルドを去ろうとしていた、我ら《閃光の聖獣》(シャイニング・スターエンジェルス)

そのメンバーの一人である、セレナを呼ぶ声が聞こえる。

その声の主の方向をみると、モヒカン頭に半袖のレザー、古びたパンツを着ている男がいた。


「うっほー!滅茶苦茶いい女じゃねぇか!」

その男は下品な言葉遣いと、下賤な視線でセレナをじっと見つめる。


「ねーちゃん、俺らと一杯やらねぇか?

 もちろん金は出すぜ?」


「いえ、急いでいるので結構です。」

視線を合わすこともなく、冷たく言い放つセレナ。


「いいじゃねーか、ちょっとくらい。な?な?」

この場を立ち去ろうとするセレナの腕を、モヒカン男が掴もうとする。

その時――


ガシッ!


男の腕がセレナの腕に届くまでに、俺が男の腕を掴んだ。


「あ?んだてめぇ?」


「我の名は宵ノ宮 絶影、悪いな冒険者よ、この従者は我の貸し切りなのだ。」


「………」

俺からの助け舟を冷たい視線で見るセレナ。

どうやら彼女の心を雪解け(アイスエイジクライシス)させてしまったようだ。


「あ?なんか文句あんのか?」


「フッ、いかにもモブらしい戯言(せりふ)だな。」


「んだとてめぇ?表出ろ!」

男に連れられ、ギルドの外に出る俺とセレナ。


(フッフ、我の力を試すにはちょうどいい…)


「てめぇ、覚悟はできてんだろうなあああ?」

こちらを振り向いた瞬間、モヒカン男は急に殴りかかってくる。


(動きは直線的、単細胞生物だな)


その瞬間―、右腕の包帯を少しだけ緩め、

魔法の詠唱を開始する。


(2割いや、1割といったところか…)


「漆黒の黒焔よ、愚かな罪人に地獄の獄炎を与えよ!


 《アビスエイジ・ザ・インフェルノフレイムバーン》!!!!」


右手を前に突き出し、攻撃態勢を取った。


「う、うわああああ!」

怯むモヒカン男…

だが…



なにも起こらない。



「へ?」

「あれ?」

唖然とするモヒカン男…と俺。


「てめぇ、妙な真似しやがって!!」

怒りに身を任せたモヒカン男が、こちらに迫ってくる。


「なるほど、この街の魔素(マソ)が薄すぎて、

 第十禁術(プロビデンス・アルカナ・テンスオーダー)はどうやら発動できなかったようだな。」


「仕方がない、こうなれば防御呪文を――ふごっ!!」

防御詠唱を行おうと思ったその瞬間、モヒカン男のこぶしが右頬にクリーンヒットし、

鈍い音をたてて、そのままふきとばされてしまう。


「ひ、ひたい~~」

おしりを突き出し、上半身は地面につっぷしている、

そのなんとも情けない格好で地面をのたうち回る俺。


「大丈夫ですか?」

全く心配している様子が感じられない声色で

身を屈め、俺の顔を見つめるセレナが語り掛けて来る。


「は、はふへ?

 ほへひうほっへ、はいひょうふひふへほふへきほふっほはふほほへはひふ?

 (あ、あのさぁ?

 こういう時って、普通、最強スキルでモブ敵をぶっ飛ばす展開じゃないの?)」


「スキルも何も、まだ何も説明をしていないじゃないですか。」


「は、はんへほひへてふへほはふへ?

 (な、なんで教えてくれなかったのさ!?)」


「聞かれなかったので。」


(コイツ、クビにしてやる!!)


「どうやら勝負はあったようだな、 

 じゃあねーちゃん、おれと来てもらおうか…。」

勝利を確信し、にやにやとした表情を浮かべたモヒカン男が

俺達に近づき、セレナの手首をつかむ。



「へ、へれな!!(セ、セレナ!!)」


ピシッ


その時、何か踏みつけたような、

また、何かが切れたような音が聞こえた。


「!?」


「その汚い手で私に触れるな。」

静かに、だがすさまじい怒りを表したセレナは

モヒカン男の手を振り払い男に言い放つ。

その声色は俺に語りかける冷たさとはまったく違っていた。


「な、なんだよ…

 あんまり調子乗ってんじゃねーぞ、このアマァ!?」

少したじろぎ、だが気を取り直したモヒカン男は

俺の時と同様に、今度はセレナに殴りかかる。


その時――

セレナが右手を男の方向に向けた。


「《氷雪の槍》(ブリザード・ランス)」

瞬間――

短い詠唱と共に、

セレナの右腕から放たれた、

冷気を放つ青い直線が男の心臓を貫いた。



「う、うぐぅ」

そのうめき声を上げた男は、一瞬苦しみ

そして、心臓から漏れ出る冷気により

みるみるうちに男の体の全身が氷によって包まれた。


「へ?へ?」

氷漬けになった男を見ながら、絶句する俺。




「うをおおおおお!すっげぇ!」


「これ、第何導級魔法だ?」


「あの乱暴者のステイルをいとも簡単に…」


周りを見ると、いつの間にかにギャラリーが出来ている。



そして俺は、完全なモブキャラ(エクストリーム・シャドウ・サイレント・ダークネス・ウォーカー)となっていた…。















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