第四節 我が右腕に宿りし力《アンリミテッド・ダークネス・オブ・ブラックサン》
ギルドでの一件を終えた我ら《雷鳴の追跡者》(ボルテクス・インシデーター)は、
観衆からの質問を振り切り、アルフの町はずれにある森に来ていた。
「セレナ嬢、先ほどの術は一体なんなのだ?」
「女神の付き人である以上、ある程度の護衛能力が必要です。
そのため、私は氷系統の魔法を修めています。」
(めっちゃかっこいいじゃん
くっ……その設定、採用だ。)
「ふ、ふん。なるほどな、
いやしかし先ほどの魔法はなかなか見事だったぞ。
我の第十禁術には劣るがな、はっはっは。」
「そうですか。それは残念です。」
全く残念そうでなく、心がこもっていない感想を答えるセレナ。
「ごっほん、では本題に入ろう。
この世界に召喚されるにあったって、
我に与えられし、いや、我が掴みえた能力とはいったいなんなのだ?」
「言い方がいちいち癇に障りますね。
凍らせますよ?」
「ヒッ」
「冗談です。
貴方に与えられた能力でしたね。
あなたのスキルそれは…」
「ゴクリッ」
セレナの次の言葉を喉を鳴らして待つ。
「『疼き』です。」
「へ?なんて?」
「だから『疼き』です。」
「いや、ちゃんと聞こえてる、
なに疼きって、てかそれ動詞じゃん?
どんな能力なんだよ!?」
「生物・物体を疼かせる能力です。」
「え、疼きって、なんかむずむずする的な?」
「はい、貴方良く言ってるじゃないですか。
右腕が疼くとかなんとか、
本当に疼くことができてよかったですね。」
「いやあれは設定というかなんというか…
ていうか。」
(弱すぎない?その転移者ボーナス!?)
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セレナからスキルの説明を一通り受けた俺は実際に試してみることにした。
今目の前にいるのはスライム
いわずもがな、初心者冒険者が初めに戦うモンスターの一匹だ。
ぴょんぴょん
跳ね回りつつ、こちらに動いてきているスライム
跳躍したその瞬間、俺は右手を突き出した。
「スキル発動!《右腕の疼き(フェイト・オブ・ダークネス)》!!」
LEDほどのしょぼい光が灯り、スライムを包む。
ぷ、ぷしゅーー……
スライムは動きを止めた。
「やったか!?」
(おお!もしかしてこれは、見た目はしょぼいが、じつは一撃必殺の術だったりするのか!?)
とおもったのもつかの間、
ぷるっ。
ぷるるるるるっ!!
先ほどまでより元気よく飛び跳ね始めた。
「え…」
スライムは自分の身体から腕をはやし、身体を搔き始める。
ぷるっ。
ぷるっ。
ぷるっ。
しかし、なかなかかゆい元凶をみつけられないようで、
もどかしげな声を上げている。
俺はその隙に、そこらへんに落ちていた木の棒で
スライムを軽くたたく
ぷぎぃ!
短く悲鳴を上げたスライムは、絶命し
形のない水滴となって地面に吸い込まれていった。
(まあ、攻撃の隙をつくれるのか?それにしても…)
「よわ~~」
「そうでしょうか?杉原様にぴったりのスキルだと思いますが?」
「ケンカを売っているのか?セレナ嬢?
それと、我は杉原ではない、宵ノ宮 (ブレスをたっぷり入れ) 絶影だ!!」
開いた右手で顔を隠し、右ひじに添えた左腕は左手でOKサインを作る。
さっき考えた、この決めポーズ、通称《深淵から覗く絶望》(インビジブル・アビス・ディストピア)を
ビシッと決め、セレナに高らかに宣言する。
【ちなみに、このOKサインはいいよ、という意味ではなく、
お前をKOするぞという絶影からの意思表示である(オタク特有の早口)】
「失礼しました、絶影様。」
セレナは俺の言った意図をきちんと理解したようだ。
「分かればよろしい」
「あと、ケンカならいつでもお受けいたします。
命の保証は致しかねますが。」
「すみませんでした。俺が悪かったです。」
その後、たっぷり6時間をかけて、
我に宿りし新たなる力、
《右腕の疼き(フェイト・オブ・ダークネス)》の力の根源の解明に尽力した。




