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22歳の別れ  作者: yukko
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23/24

翔也との再会

あの22歳の別れ。

あの辛さを哀しさを今も忘れてはいない茜は、店に入る前に落ち着かせるためにゆっくり息を吸いこみ、そして吐き出した。

勇気を振り絞って店に入ると、店の中央付近の窓際の席に翔也が座っていた。

あの頃と同じだった。

待ち合わせて茜を待っている時の翔也の姿だった。

そういうことを忘れられないのが、哀れだと茜は思った。


席に近づくと、翔也は立ち上がった。

そして、「来てくれてありがとう。」と翔也が言った。

その言葉に茜は驚いた。

驚いていると翔也が「そんなに驚くことか?」と言った。

その声、その言葉遣い……全てが若い頃のままだった。

一瞬、茜は錯覚した。

22歳の……あの言葉を聞く前の茜と翔也に戻ったかのように思ってしまった。


「座ってくれよ。」

「あ………うん。」

「元気だった?」

「………お陰様で………。

 今日、貴方は入ってなかったわ。

 他の方の名前だった。」

「うん、インフルらしくて、俺が急遽代役だよ。」

「そうだったの………もっと早く知らないといけなかったわ。」

「それ、どういう意味?」

「秘書として落第って言う意味。」

「そっか………。」

「話って………何?」

「う………うん…………ずっと謝りたかったんだ。

 ずっと……茜に酷いことして申し訳なかったと……謝りたかった。

 茜………ごめん。

 中絶させて………妻と結婚して……妻と縒りを戻した時に……。

 否、戻したいと思った時に別れ話をすべきだった。

 本当にごめん。」

「今更?」

「そうだな……今更だ。

 …………あれから、どうしてたんだ?

 会社辞めたのか?

 勤めてた会社と違う会社に……お前が居てビックリした。

 何があったんだ?」

「色々あったわ……貴方もそうでしょう?

 生きていれば色々あるわ。」

「そうだな…………色々……ある。

 ……………茜に酷いことを俺はした。

 その同じことを……うちの娘はされたんだ。」

「え………お嬢さんが……された?」

「うん、まだ20歳なんだ。

 中絶して、それなのに……捨てられた。

 俺がお前にしたことと同じ………。

 ………天罰なんだろうな……俺が茜にしたことが娘に………。」

「違うよ。」

「えっ?」

「それは違う。」

「茜?」

「貴方が私にしたことと、お嬢さんがされたことは同じであっても違うの。

 貴方がしたからお嬢さんがされたわけじゃないわ。

 した男が悪いの。

 お嬢さんを大切にしなかった男が悪いの。

 貴方が私にしたことで、お嬢さんに天罰が下るはず無いじゃないの。」

「……茜………。」

「そんなことで自分を責めるの?」

「責めないといけないんだ。」

「貴方が後悔しないといけないのは、そんな考えに囚われていることよ。

 今、貴方がしないといけないことは、親としてお嬢さんを守ることよ。

 見守ることよ。

 全て受け入れてあげて……心の傷を癒してあげて……。

 私は親が居なかったから、親に泣き言すら言えなかった。

 言わせてあげて……いっぱい……。」

「茜………本当に済まなかった。」

「そうよ、貴方が謝る相手は私よ。

 今まで捨てて来た女性に、心から謝って!

 そして、大事にして! 家族を………。

 もう二度と誰も悲しませないで! 奥さんやお子さん達を大切に想い続けて!

 そのこと、忘れないで頂戴。」

「………うん………うん…………。」


茜は初めて翔也の涙を見た。

翔也との別れ際、茜は呟いた。


「これで、私の22歳の別れが終わったんだ。」


翔也はスマホで妻に電話をしていて、その言葉に気付かなかった。

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