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22歳の別れ  作者: yukko
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24/24

最後の恋

茜はやっと長かった22歳の別れが終わったと感じた。

自宅でぼんやり過ごしていると、ソファーに座っている茜を後ろから抱き締めて「どうした?」と聞く声がした。


「うん、今日ね。

 契約したの。」

「そっか、良かった。」

「その席に……昔の彼が居たの。」

「えっ? 細川さん?」

「ううん、違うよ。その前の……生まれて初めての彼だった人。」

「その話、初めて聞くよ。」

「うん、言いたくなかったのかな?」

「言いたくないなら言わないでいいんだ。」

「そうね………私……分かったことがあるの。」

「何?」

「私ね、恋の上書きが出来ないのよ。

 あの人達のこと、忘れられない。

 翔ちゃんも……大和さんも……。」

「そりゃ、そうだろう。真剣に愛した人を忘れられなくて当たり前だ。

 俺も亡くなった妻を今も忘れられない。」

「それは、貴方が死別だから……。」

「死別とか関係ないよ。どんなに真剣だったか、だけだ。

 それくらい愛したんだろう?」

「………うん、そうね。」

「……早く風呂に入れよ。 疲れてるんだろう?

 ゆっくり入れ。」

「うん、そうする。」

「あ…………そうだ。」

「何?」

「今度の土曜日、伊織が来るんだ。家族で………。」

「分かった。」

「土曜日、頼むな。」

「了解。」


茜は入籍しないで一緒に暮らしている男性が居る。

彼は同じ会社の工場で働いている。

高卒で50歳。

長年連れ添った妻を癌で失った。

茜との出逢いは会社。

何時しか茜を目で追っていることに気付いた。

それからは、息子と娘に「父さん、好きな人が出来た。付き合いたいと思ってる。駄目ならハッキリ言ってくれ。諦める。」と言った。

息子も娘も「お母さんが亡くなってから元気が無かったから、いいと思う。」と言葉を返してくれた。

ただ「籍は入れないで欲しい。お父さんの配偶者の欄、お母さんだけにして!」と娘が涙を浮かべて言った。

娘を悲しませたくない気持ちを、そのまま茜に伝えた。


「あの………私に何故そのようなお話を?」

「俺と付き合って欲しいからです。」

「えっ?」


真面目な男で少し不器用でもある。

家族を大切に想っていること、そして最初から結婚出来ないことも伝えてくれたこと……それが茜には「いい人」に見えた。

茜は彼の想いを受け入れた。

そして、今、一緒に住んでいる。

その家は茜の家だ。

彼の家は息子と娘の為に残してある。

そこには亡き妻との想い出が詰まっている。

息子と娘の為、茜とは別の家で暮らすと決めた。

彼の名は、森田憲吾。

彼とこれから先、どうなっていくのか茜には分からない。

それでも、今の生活を大切にしたいと茜は思っている。

22歳で初めての恋が哀しく終わり、二度目の恋も空しく過ぎ去った。

この恋を茜は人生で最後の恋であれば良いと思っている。


⦅翔ちゃん………元気でね、ご家族皆さんが幸せでありますように……。

 大和さん………御元気で……どうか幸せで……。

 私は、傷ついたけど……その分、得た物もあったわ。

 付き合ってた頃、幸せだった。ありがとう。⦆


そう思ったのは、翔也に会ったからだろう。

上書き出来なくともいいのだ。

全てが茜の人生だから………。


「我が人生に悔いはない!」と言える人生を、残りの日々を送りたいと茜は思った。

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