中小企業
茜が入社した会社は製造業の中小企業だった。
退職日に挨拶に向かう時、茜は⦅日本を支えているのは中小企業だと大和さんは言ってた。これから私が微力でも、日本を支えている企業で働けるのは良かった。これが最後の職場になると思うから……頑張らないと!⦆と心密かに自らを鼓舞していた。
会社に着くと、社長自らが出迎えてくれた。
「中森課長!」
「社長、私は【ただの中森茜】でございます。」
「あ……………そうでした。
でも………どうしても中森課長なんですよね。」
「社長、他の方々が聞いておられます。
中森とお呼び下さい。」
「ええ―――っ! 嫌……です……けど………。」
「どうか、中森とお呼び下さい。」
「はぁ…………では、中森さん………。」
「はい、社長。」
「これからよろしくお願いします。」
「それは私の言葉でございます。
今日から、何卒よろしくお願い致します。
何も分からない年だけ取った新入社員と御思い下さい。」
「そんなことないです!」
「社長………そのお言葉はプレッシャーが増大致します。」
「あ………課長でもプレッシャーとかあるんですね。」
「社長………中森と………。」
「あ………つい………。」
「社長、どうか皆さんを紹介して下さい。」
「あ………では、紹介しますね。
私の隣に居るのが私の父で会長です。」
次々に紹介して貰い、翌日からは研修が始まった。
社長・中谷絢は「研修ですか?」と言った。
茜は会社の業務を全て理解するために時間が欲しいと頼み込んだ。
「顧問として招聘させて頂きました。」
「それは、どうでしょう?」
「どう、とは?」
「会社のことを全く知らないのに、顧問として働けますでしょうか?
先ずは皆さんと共に働かせて頂いて、その立場に相応しいと皆さんが思って下さ
った場合ではないでしょうか?」
「…………実力は存じております。」
「それは、あの会社での私でございまして、これからの会社にとっての私は未知数
でございます。
中途採用の社員としてお考え下さい。
給与も賞与も全て、そのようにお考え下さい。」
「それでは収入が激減に………。」
「それで良いのです。
その積りで参りましたから………。」
「社長、中森さんの言うようにさせて貰うのが良いと思います。」
「会長………。」
「そのようにして頂ければ私も気持ちよく働かせて頂けます。
どうかよろしくお願い致します。」
「では、中森さん、役職も無い平社員で宜しいのですね。」
「はい!」
「………中森さん、よろしくお願いします。」
「はい、私こそ、よろしくお願いいたします。」
建築資材の製造業で茜は働き始めた。




