花奈②
大和の家に着くまでに茜は気持ちを落ち着かせる努力をした。
花奈に会った時も、ずっと自分に言い聞かせた。「大人の対応を!」と………。
二度目の恋だ。
一度目の悲しく辛い想いを思い出して、「あの時の辛さを思えば頑張れるはず!」と自分に言い聞かせた。
頑張れば頑張るほど言葉は丁寧になった。
大人だからこそ丁寧な言葉遣いをした。
「大人の対応」でないといけないから……。
でも、花奈たちと別れてから涙で頬を濡らしそうになった。
耐えた。涙を流さないように耐えた。
大和の顔を見た時、茜は精一杯に「いい女」であろうと思った。
茜を見た時、大和は抱き締めた。強く………。
「茜っ!」
「…………大丈夫、よ。」
「ほんとか?」
「うん。」
「あいつ、なんで茜に会いに……子どもを連れてまで……。」
「養育費のこと、よ。」
「養育費! 再婚しても支払うって言ってある。」
「心配みたい。途絶えたら………って………。」
「それでも!………それでも、それを言う相手は俺だ。
………ごめん、茜。」
「ううん…………可愛かった。」
「うん?」
「あの子………可愛かった。」
「茜………結婚したら……子どもが俺は欲しい。
茜も、そうだったら嬉しい。」
「再婚するかどうかの返事をしないといけないの。」
「えっ?………………誰に?」
「奥さん………。」
「………奥さんじゃない。もう離婚してるんだから……。」
「そうね。」
「花奈に言われたのか?」
「うん、1週間、返事の時間を貰ったわ。」
「俺から返事をする。再婚するって返事するから!」
「………後悔しない?」
「何が?」
「私と結婚すること、後悔しない?」
「しない!」
「無理してない?」
「無理なんかしてない。
俺は茜と再婚する!」
そう言って直ぐに大和は花奈に電話した。茜の前で………。
『何?』
「お前、茜に会いに行ったんだってな。」
『告げ口したの? 信じられない! なんなのあの女!』
「結婚するんだから二人で話し合うんだよ。」
『あの女の肩を持つんだ。』
「当然だ! 返事を言う。再婚する! 茜と!」
『そ、それじゃあ、養育費はどうなるのよ!』
「今まで通り支払う。」
『本当に守る気あるの?
そっちに子どもが出来たら払えないって言わないでよね!』
「守るよ。必ず支払う。」
『戸籍の父親の欄、大和よ。だから、義務があるのよ。』
「俺の子じゃないけどな。
『えっ?』
「俺の子じゃないよな。
不倫したたんだろう。」
『な、何言ってるのよ。」
「分かったんだよ。もう1年前のことだけどな。
今の旦那にそっくりだから、調べた。
俺の子じゃないって判定が出た。」
『や……大和……酷いわ。』
「酷いのはどっちなんだ?
お前、産んでから離婚を申し立てて出て行ったよな。」
『あ……あ………あ…………。』
「俺の子じゃないのに支払ってるんだ。文句言うな。いいな。
それから、もう二度と茜を待ち伏せするなよ。
俺は茜を妻に迎える。
お前は何も言う権利など無い。分かったか!」
そう言って大和は電話を切った。




