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22歳の別れ  作者: yukko
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11/24

転職とプロポーズ

気が付くと茜は広報部オウンドメディア運用の係長になっていた。

ただ無我夢中で仕事をした結果だった。

茜は思う。

⦅統括本部長の言葉通りだわ。仕事は裏切らない。⦆と………。

茜と同期で総合職で入社した社員は既に課長だ。

途中で総合職になった差が出た結果だ。

⦅致し方ない。当然のことだ。⦆と茜は思っている。

友人達は子育てに仕事に忙しい。

会社で茜と同時期に総合職になった女性達は、茜のように独身の者だけが係長になった。

結婚して出産した者は、昇進出来なかった。

夫が育児休暇を取得してくれても、どうしても夫には代われないことがある。

それは、妊娠と出産だ。

妊娠と出産は代わることが出来ない。

だから、どうしても後れを取る。

これだけは、どうしようもない。

その間はプロジェクトから外される。

産む性だからである。

男性の育児休暇の取得率は確かに上がった。

それでも、アメリカ大統領ではないが、【ガラスの天井】はまだ存在している。

そんな時、退職した統括本部長・芦田早苗が本格的に仕事に復帰したと聞いた。

今は副社長という役職で、秘書を求めているという噂だった。

茜は⦅行きたい!⦆と思った。

茜は相談した。


「細川副部長、相談させて頂きたいことがございます。」

「仕事か? それともプライベート?」

「仕事でございます。」

「今夜、食事をしながら……でいいかな?」

「………それで、結構でございます。」

「じゃあ、メッセージを送るから、そこで……いいかな?」

「はい、承知致しました。」


3歳上の細川大和は茜の上司だ。

広報部の副部長である。


◇◇◇◇

茜はメッセージで送られた場所へ向かった。

そこは、大和の自宅。

茜は合鍵で家に入った。

まだ家の中に灯りは点いていない。

スーパーで買って来た食材で茜は急いで夕食を作った。

⦅会社で良かったのに……今日は行く日じゃないのに……。⦆と思いつつ、キッチンに立っている。

玄関ドアが開いて、大和が帰って来た。


「茜、これでも急いで帰って来たんだぞ。」

「お帰りなさい。」

「ただいま。」


抱き寄せようとする大和の手を茜は擦り抜けた。

「えっ?」と驚き、空を切った手を所在なく下ろした。


「夕食を作ってるの。」

「うん、ありがとう。」


「ありがとう。」と言って、尚も大和は茜を後ろから優しく抱き締めようとする。

茜は大和の手を軽く叩いて止めさせる。


「一応、彼氏なんだからさ。

 甘えさせてくれよ、な。」

「今日は御邪魔する日じゃないのに……。」

「いいじゃないか! 少しくらい。」

「急に変更したら、困るのは貴方でしょう。」

「………それは……そうかもしれないけどさ。」

「父親が……離婚したといっても母親以外の女と一緒に居るのを見たら……

 可哀想でしょう。」

「俺は! 俺はちゃんと紹介したいんだけど!」

「あの子の気持ち、ちゃんと考えてる?」

「これでも、一応パパなんだ。」

「うん、ちゃんとパパしてるのは分かってる。」

「ちゃんと紹介したい。

 いい加減、『うん!』って言ってくれないか?」

「ちゃんと、あの子に聞いてからね。」

「分かってる! 分かってるから……。」


大和は離婚していた。

産まれて間もない子の親権は元妻が持っている。

元妻は離婚後間もなく再婚した。

どうやら産まれてきた子は再婚相手の子どものようだ。

DNAは分からないが……大和は養育費を払っている。

そして、子どもとの面会もしている。


「食事が終わったら、私の相談の話をさせて頂きます。」

「あぁ……つれないなぁ………もう、仕事モードかよ。」

「じゃあ、一つ聞かせて。」

「何を?」

「どうして私を選んだの?

 私は美人じゃないし、いい所ないわ。」

「ええ――っ! 人を好きになるのに理由あるか?」

「無いの?」

「うん、俺は無い。無かった。

 俺は、気が付いたら目で追ってた。茜を………。

 ………え………茜はあるのか?」

「…………誠実そうだと……思ったから……。」

「誠実………そうか…………。」


大和は茜の一方通行だった恋を聞いた時、「世の中はそんな男ばかりじゃない!」と茜に言った。

そう、最初に断られた時の理由だったからだ。


「細川副部長、お話があります。」

「もう、職場モードかよ。」

「細川副部長。」

「はい、はい………何でしょうか?」

「転職したいと思っております。」

「え! 何でだ! 何が不満なんだ。」

「不満などありません。

 広報部で様々なことを学ばせて頂いております。」

「じゃあ、何でだ?」

「前の統括本部長、御存知ですよね。」

「当然、知っている。」

「芦田さんが秘書を求めていらっしゃると伺いました。」

「もう聞いたのか………うちの総合職の女性を一人推薦して欲しいと……。」

「事実ですね。噂で終わるのではないということですね。」

「茜! お前、カマ掛けたのか?」

「はい、そこまでは知りませんでした。

 副部長、推薦して頂けるような実力は私にあるでしょうか?」

「俺にお前を推薦しろと?」

「出来ましたなら、お願い申し上げたいのです。」

「…………俺のことは?」

「はい?」

「俺とのことはどう思ってるんだ?

 結婚したいと思ってるんだが……俺は!」

「………………あれは……プロポーズだったの?」

「あれを! あれを何だと思ったんだ?」

「エイプリルフールだったから………冗談だと……。」

「ああああああああ! 俺の馬鹿!」

「えええええええええええええ!」

「心を新たにして……今一度!

 茜、俺と結婚して下さい。」

「…………………………………………。」

「返事は?」

「待って…………。」

「何時まで?」

「もうちょっと待って……ビックリして………。」

「俺は離婚して、子どもも居る。」

「知ってる。」

「だから、子どもに養育費を支払い続けないといけない。」

「あの子にとって当然の権利よ。」

「初婚じゃないから苦労掛けると思う。」

「生きていれば誰でも苦労するわ。」

「新しい職場で苦労したら、俺は支える。」

「本当に?」

「当然だ。それが夫婦だから!」

「じゃあ!」

「うん。」

「推薦してくれるの?」

「結婚してくれるのか!」

「おい! プロポーズの返事が先だろう。」

「あ……………そうよね。」

「人生初のプロポーズを二度もしたんだぞ。」

「前の奥さんの時は? プロポーズしなかったの?」

「しなかった。プロポーズされたんだ。」

「うわぁ~~~っ、モテモテね。」

「でも、離婚されたぞ。

 ………ってか、前の奥さんとのことはどうでもいいだろう。

 返事は? OKってことで、いいんだよな。」

「………うん、私で良ければ………。」

「しゃ――っ!」

「所で、推薦は?」

「そっちよりも結婚の話の方が重要だと思いますが? 茜さん。」

「だって、結婚と同時期の転職になるんですもの。

 早く転職して仕事を覚えたら結婚ということにした方が良いと思います。」

「じゃあ、推薦します。」

「じゃあ、って何?」

「なんとなく言っただけだよ。

 推薦しますので、同時に結婚のことを進めます。

 決定事項なので、変更は不可! いいな。」

「では、転職についての推薦はお任せします。

 結婚につきましては、細川さんのお子さんとの面会を一番先にお願いします。 

 あの子の気持ちを大切にして欲しいの。」

「茜――っ、愛してる。」


その日の大和は情熱的に茜を愛した。

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