(85) 届いた小さな小包
修が事故に遭い、ICUに入院していたときのことだ。彼の職場に小さな小包が届いていた。
だいぶ後になって優美が持って来たとき、二人で首を傾げた。友人間や知人のなかに、その苗字に心当たりがある者は誰もいなかったからだ。名前のところには「ツル」とだけあった。
既に修の両親は亡くなり、兄弟もいない。彼自身が顔と名前を知っている親戚縁者も皆無だった。
中には小さな桐の箱が入っており、その中には奇妙な形の緑色の石が収まっていた。拙い筆跡で送り主の住所が書かれていた。それは母親の実家がある県だったので、母方の親戚か何かだろうと予想し、腕のギブスが取れない修に代わって優美に代筆してもらい、手紙を出してみた。
ほどなくして返事の手紙が届いた。差出人はツルの長男だった。
手紙によると、ツルは修の母方の大伯母にあたる人物であり、その土地で〝ゴミソ〟とか〝カミサマ〟と呼ばれる民間の霊能者だったという。百歳を過ぎたある日、「姪の君枝(修の母親)のひとり息子を守るために送ってやれ」とお告げがあり、長男に託したのだそうだ。箱の中身は、ツルが古くから譲り受け、大切にしてきたという勾玉だった。
ツルは詳しいことを誰にも告げぬまま、少し前に大往生を遂げたという。
「既に君枝さんも亡くなられているので、古い手紙や住所録をひっくり返し、やっとの思いで探して送らせていただきました。無事に届いたようで安心いたしました。母ツルの気持ちとして大切にしていただければ、母も草葉の陰で安心することでしょう」
手紙はそう結ばれていた。
そう言えば昔、遠い親戚にそんな人がいるという話を、母から聞いたことがあったような気がする……修はそんな記憶をうっすらと思い出していた。




