(77) 山崩れ
何日も続く宿雨に降り込められ、山の廃寺らしき所で、幸い雨風はなんとかしのげたが、三日四日と降り止まぬ大雨となった。バケツをひっくり返したような大雨…当時の〝車軸を流すような雨〟に、ただ身を寄せ合うしかなかった。
今風に言えば〝秋雨前線と台風からの雨雲が重なり、接近と共に線状降水帯が発生し、台風の直撃は避けられたが、数十年に一度の災害級の大雨となった〟ということになる。
夜中には、遠く山が低く唸るような音も聞こえた。
翌朝、やっと雨がおさまると、手持ちの乾いた薪と干し飯で久しぶりの温かい粥を作り、幻䗲と真白は、一息ついて山の廃寺を後にした。
ぬかるむ泥道を草鞋を土の塊のようにして進むと、臭いが変わった。泥の臭いの中に、山が腐ったような生臭い臭いが混じる。これは、山崩れの前兆や、山崩れの現場で、幻䗲は何度か体験している。近年は木を切り倒し、はげ山が多くなったせいか、山崩れの現場を見ることが多くなっていた。
雨が止んだ後でも油断はできない。場合によっては引き返して別のルートを取らなければならない。
何故かはわからないが石の灼けるような臭い、そして生木を裂いた臭いに変わると、この先は既に山崩れが起きていることを確信した。
山崩れの現場は、幅はそれほどではないが、山の上から大岩と共に土砂、木々が落ちるように崩れたようだった。下の方には建物の残骸が見えるから、多くはないが、一軒か二軒の家も巻き込まれたようだ。
土砂が削ぎ取られたことで、上の傾斜は以前よりきつくなってあるようで、引き続き崩れる恐れもあって、ここは引き返して遠回りをするしかなさそうだ。
恐らく巻き込まれたであろう人に手を合わせ、後の真白に引き返す事を知らせようとした時、真白が何かを見つけて声をあげた。
「何か……誰かいる!」




