↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『海澪 -千年の縁-』  作者: 木峰圭介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
73/94

(71) 白い娘

 幻䗲(げんりん)が人の気配に気付くと、緊張して向き直り、大錫杖(しゃくじょう)を掴んだ。山賊が戻って来た可能性がある。山の中で野盗らしい集団に合うことも度々あるが、やつらは弱者を狙う。熊幻䗲(くまげんりん)を敢えて襲う度量など持っていないが、用心にこしたことはない。

 人の気配は、ぼろを纏った娘だった。襲われた家族の一人だろうか?それなら不思議だ。若い娘を拐わずにおくなどありえない。

 娘は幻䗲(げんりん)が二人を弔う様子を見て安心したのだろう。警戒しながらも、姿を現した。

 その手には、山で摘んできたのであろう瑞々しい野草の花束が握られていた。娘は静かに近づくと、幻䗲が築いたばかりの生々しい柴の山へ、その花をそっと置いた。それは、彼女なりの、精一杯の弔いだったのだろう。

 幻䗲(げんりん)は、その娘の姿を見て、山賊の輩が娘を手放したのか、どうにか理解をした。娘の肌は、病人のように、見る人によれば死体のように白く、髪は老人のように色が薄い。瞳も盲(めしい)のように黒さがなかった。

 山賊は娘を拐(さら)ったはいいが、その人とは思えない怪異さに気付くと、恐れたのだろう。おそらくは、その祟りを恐れ、殺めることどころか、身ぐるみ剥ぐ事すら恐れてできなかったのだろう。殺めた老人の服まで剥いだというのに。

 幻䗲(げんりん)は、かつて、みやこの東の市で、娘のような白い異人を見たことがあった。山の怪異でも妖かしでもない。それは、花を手向け、涙を流すことでも明らかだった。

 幻䗲(げんりん)は、「大丈夫」と言い、娘に手を差し出す。娘はおずおずと彼の手をつかんだ。

 もう一度「大丈夫」と言い、娘の手を握った。その手はちゃんと温かかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。