(64) パパのナイフなんていらない
「このナイフは? 手作りっぽいね」
明音が尋ねる。
「わたじさん、つまり海澪のパパが、龍の宮を離れる時につぐに残したナイフですよ。つぐ姫は、ずっと肌身離さず持ってたんです」
「パパは嫌い! ママを捨てた!」
途端に海澪は不機嫌になる。
「でも、あんなに大事にしていたのに、なんで送ってきたんだろう。海澪に送るなんて……僕達が人間界にいるからなのかな?」
「何か海澪ちゃんに役に立つかもしれないって、さっき言ってなかったっけ。人の世界にいれば、何か繋がるかもってことじゃない。海澪のママは、海澪にパパの事も知ってもらいたいんじゃないかな」
明音は推測する。
「別に、知りたくない。……ねぇ、ママの鱗を一枚持っていていいかな?」
「もちろん!」
「友達に、自分でぬいぐるみ作る子がいるんだよ。星来ちゃんの這子を改造してもらおうか? ポシェットみたいに入れられるようにするとか。星来ちゃんがよければだけどね」
「いいね。依代に使わせてもらってるだけだから、物があれば、形が変わっても大丈夫。何なら変身も慣れてきたし、ステラなら動けるしね」
「ナイフも、御守り代わりにするなら、なんとかしなきゃね」
「パパのナイフなんて、御守りにしたくない」
「ママの笄とセットにできればいんじゃない? 修ちゃんにも相談してみよう」




