(63) 龍鱗が海澪の元に
明音と海澪、星来は、午後の街を歩いて、修の部屋に向かって歩いていた。
「恵蓮兄さんと繋がった!」
突然、星来が大声をあげた。
「恵蓮兄さんって誰?」と明音が尋ねる。
星来が説明をする。
「僕達、六人兄姉なんです。兄さんが、阿留、恵蓮、太雅、姉さんが、舞緒、明寿。で、恵蓮兄さんがつぐ姫、海澪のママに会えたんです」
星来は興奮して説明を続ける。
恵蓮が、密かにつぐ姫に出会えたこと。つぐ姫が螺鈿細工に忍ばせておいた印籠の箱の〝龍鱗〟の効果が切れたのだろうということ。つぐ姫は、まだ人間界に流されているので、充分龍の力は出せないから、これが精一杯だけど、自らの三枚の龍鱗を剥がしたこと。何か海澪に役立つかもしれないと、わたじから預かった刀子とともに送ったこと。
説明している間に修の部屋に到着して、鍵を開けて三人は中に入る。
「星来には聞こえるのに、わたしには話が出来ないの?」
と、海澪は不満げに言う。
「それはわからないけど……あっ、印籠の箱から音がしたよ」
海澪が、ゆっくりと蓋を開けた。
五色に輝く、大蛤くらいの大きさの鱗が三枚、そして小刀が入っていた。
「これって、ママの鱗?」と、一枚を手にして海澪が言う。
「そうですよ。龍の姿の時は、もっともっと大きいんですけど……これです」
「ママ……」
海澪は、泣きそうな声を出している。生まれてすぐに別れた海澪にとって、母親の記憶がない。
「これって、取る時、痛くないの?」
「僕は見たことないけど、髪の毛と違うから……痛いと思うけど。この小刀で取ったって言ってたし」
「ママは、わたしのために、無理したのかな…」
明音も身を乗り出して、別の意味で目を輝かせる。
「今まで、見たことある『龍の鱗』はさ、大きな松ぼっくりだったり、せいぜい穿山甲 の鱗だろうってものばかりだったんだけど……すごいすごい!触っても大丈夫?」
明音はおそるおそる一枚を拾いあげる。五色に光るのはきっと成長線か何かの構造色なのだろう。玉虫厨子みたいだ。濡れたような光沢もある。薄く研ぎ澄まされた螺鈿のようだが、とても軽く、透明感すらある。そして……気のせいかもしれないが、ほんのり熱を帯びているように感じる。
穿山甲 :全身が鎧のような鱗に覆われた珍しい哺乳類。その鱗は漢方薬の生薬(山甲珠)としても流通し、日本でも古くから龍の鱗の正体として寺社に伝わることがある。




