⑹ はつ姫
海澪の暮らしていた蓬莱の島に、式神を飛ばしたのは、龍界を実質的に治めている、はつ姫だった。
はつ姫は、海澪の母親のつぐ姫の姉。海澪は、たった一人の姪になる。
海澪は、龍神である母、つぐ姫が、人と交わって生まれた禁忌の子供だった。海澪を密かに生み、星の子と言われる古くからの者に預け、蓬莱の島に暮らしていることは、はつ姫も知っていた。
子供に罪はない。黙認していた。
つぐ姫の方は、罪を贖うため、人の世界に流されていた。時間の流れが違う人の世界で、十八ヶ月務めれば、龍界では、およそ十五年。もうすぐ帰ってこれる。
帰ってくることと、母娘が一緒に暮らせるかは別の問題だった。海澪が成長して、人としての気が強くなって、見過ごせなくなってしまったのだ。
蓬莱の島は、人と龍界の境にある。
人から見れば、遥かに目にすれど近づくと霧に隠れてしまう、仙人の住む島。龍界からは、治外法権、力を及ぼしにくい島。
はつ姫が飛ばした式神も、本来の力を込める事が出来ず、落とされてしまったけど、海澪達が、幸いにも人の世界に隠れた事は確認出来た。
人の世界にまでこの世界の影響を及ぼしたくはない。ましては、神話の世界が消えかけている未来。
ただ、星の子の一人がついている。とすれば、いつか戻って来るに違いない。
ひとまず、安堵と不安を抱えるはつ姫だった。




