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『海澪 -千年の縁-』  作者: 木峰圭介


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(53) 待花《まちばな》

 龍界には「待花(まちばな)」と呼ばれる花がある。

 宵を待って、一夜限りの花を咲かせる。そして、蕾がほぐれる時に、小さくポンと音をたてる。

 白く咲けば月待草(つきまちくさ)、黄色に咲けば夕星草(ゆうづつくさ)。月と星を待つように、逢えぬ者を待つ花であった。


 妹のつぐ姫(ひ)は、夕星草(ゆうづつくさ)とともに、姉のはつ姫(き)は、月待草(つきまちぐさ)とともに人間界に流された。

 心ある人間が、花の中にいる小さな姫をみつけることになる。


 黄色に輝く夕星草(ゆうづつくさ)を見つけ、中に居るつぐ姫(ひ)を見《》つけたのは、旅役者、白拍子(しらびょうし) (✽6)の一行だった。

 人界への流刑の時間は約1年半だが、龍界では十五年もの時間が過ぎてしまう。


 一方、白く輝く月待草(つきまちぐさ)を見つけ、中に居るはつ姫(き)を見つけたのは、旅の僧侶の一行だった。

 はつ姫(き)の刑期は人の世界で三月(みつき)ほど。龍界では数年だから、問題が一通り片付くまでは関わるなということだろう。


 人の世界では、龍神としての力は封印される。

 龍界に戻る時には、人界の事を忘れてしまう。

 流刑とはそういうことだった。


 

 


白拍子(しらびょうし) (✽6):  男性の正装(水干・烏帽子)を纏い、歌い踊る女性芸能人。伴奏者や警護らと一行を組み、各地の街道や宿場町を渡り歩く「旅芸人」としての側面も強かった

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