(51) 恵蓮《けいれん》の思いつき
星の子の次兄恵蓮は、星来に持たせた螺鈿の印籠が、意思の中継の働きをしないことに悩んでいた。今、海澪と星来がどういう状況なのかかわからない。同じように作られた唐櫃は、きちんと人の時間と空間を移動できたはずだ。つぐ姫がわたじに持たせた玉櫛櫃も、わたじがつぐ姫の分霊に対応できれば、時間と空間を超越できたはずだ。
足りないものがあるから、人や物どころか意思、情報の中継すら出来ないのに違いない。
木猫と同じように対応するフィジカルな錨にあたる物なのか、こちらとむこうを繋ぐ〝縁〟のようなものなのか。
正確な時間と場所さえわかれば、直接行けるのに……
恵蓮は行き詰まっていた。
『人を跳ばすのはなんて厄介なんだろう』
なら、なぜ?と思いかえした。
『唐櫃はなぜあんなにも跳べた?』
勿論、自分達が力を合わせてここから脱出させた。それにしても千年先は想定の他だった。
星来はまだひとりでは跳べないはずだったが、そろそろできるようになっても不思議ではない。
海澪の龍の血が目覚めた? 人の気が強くなって隠しきれなくなったが、本人も気付かず同時に龍の気も強くなった。
両方未熟だったが、相乗作用が働いた?
『縁……そうだ、母親のつぐ姫なら……』
人の世界に流されて、龍神としての力は封印されてはいても、母親のつぐ姫ならピンポイントで時間と場所を特定できるかもしれない。
つぐ姫に会いに行こう。




