(50) 私も守る
「海澪なんか、生まれてこなければ良かった!」
星来と同じベッドで眠ったその夜、海澪は夢を見た。もう十年も前に実際にあったことだ。
海澪はまだ幼く、見た目では星来と同じくらい。普通なら、仲良くできる年頃とみんな思っていたけども、星来は海澪を避けていたように見えた。二人とも人見知りな性格だとして、誰もたいして気にはしていなかったし、海澪も幼かったし、何とも思っていなかった。
ある時、些細なことで言い争いになった。原因は全く覚えていない。ただ、感情をあらわにすることのない星来が言った。
「私は……つぐ姫が大好きだった!」
と言った後、勢いで
「海澪なんて、生まれてこなければ良かった!」
そう、海澪は、今でも思い出してしまう一言だった。
『星来は、私を憎んでいるの?』
海澪は、その時は深く傷付いたが、やっと星来の気持ちもわかる気がする。
可愛いがってくれたわたじがいなくなり、慕っていたつぐ姫も突然いなくなる。何千年の年を生きても、つぐ姫が母親のような存在になっていたのだろう。母親の記憶がほとんどない海澪以上に喪失感があったのだろう。
今は、幼い妹ような見た目なのに、海澪をこんなにも、必死に守ってくれた。
これからは、海澪が星来を守ってあげたいと思う。
翌朝、目覚めた海澪は、何も言わず星来の隣に座る。星来も何も言わない。
海澪がそっと手を握る。
すると星来が少し驚いて言う。
「……どうしたの?」
「これからは、私も守る」
海澪は笑って言った。




