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(48) 歌垣の準備
わたじも正式に成人して、村の若衆組の一員となった。村の掟を守り、年二回の歌垣|《✽5》の祭りを仕切るのも若衆組だ。兄のわた助に付き添って、少し前から手伝いをしていたが、これからは、胸を張って参加できる。
秋の歌垣は次の満月と決まり、近隣の村への告知、港を見下ろせる例の小山の広場周辺の整備、休むための仮小屋の設置、振る舞う濁り酒等の準備と、漁の合間に交代で進めていく。
自分の村から三十人ほど、他の村から合わせて、およそ百人程度が集まる。
わたじの父親は相談役で、実質、兄のわた助がリーダーとしてまとめていた。
歌垣: 平安庶民は一夫一婦が基本だが、歌垣の夜だけは、遠方の男女が集まり、既婚・未婚を問わず、即興の歌で求愛し、大自然のなかで睦み合うことが許された。夜這いと同様に、女性には絶対的な拒否権があり、乱暴な男は地域から厳しく排除された。これらは決して不道徳なものではなく、狭い血縁の弊害を防いで新たな生命(労働力)を授かるための、共同体が公認した祭りであった。




