(46) 阿留《ある》と龍継《りょうけい》の話し合い
「阿留兄さん、久しぶりです」
わざわざ、面会の龍の宮に足を運んでくれたのは龍継の方だった。
「星の子らは本当に長命なんだな。昔と全然変わらないじゃないか」
「龍継殿は、すっかり立派になって、見違えました」
「〝殿〟は止めてくれよ」
「それじゃ、〝兄さん〟も無しにしましょう」
久しぶりの対面は、時間を溶かして、和やかに始まった。
「部下からも聞いているよ。はつ姫もつぐ姫も残念だった。勿論、海澪のこともだ」
龍継は、本当に残念そうに言う。
「決まりなんだ」
決まりはシンプルだった。
龍界には人の血は入れない。
龍が人と夫婦になるなら、人の世界に住む。しかし、龍の正体は誰にも悟られてはならない。配偶者にも子供にもだ。もし悟られたら、龍は人の世界にはいられない。残された人々は、龍と関わった記憶をなくす。
海澪は人の血が入っているから、龍界には住めない。
海澪が人の世界で暮らすなら、龍にかかわる記憶を消さなければならない。海澪自身が龍の血を引いているから、海澪の全ての記憶を消さなければならない。
海澪という存在がなくなるに等しい。
消さなければならないとは、そういうことだ。
蓬莱の島は、仙人が住む。人が訪れることは難しく、龍界からは治外法権的な存在だ。ある意味龍神に守られている土地である一方、人の世界からの緩衝地帯的存在。
だから、人の血を持つ海澪がいられる可能性はあるかもしれない。しかし、常に監視の対象になるだろう。それに、幼いうちはともかく、狭く、そんな窮屈な蓬莱の島は、本当に海澪のためになるのだろうか。
融通がきかないくらい実直な龍継に、どう説得するかで、 阿留は考えあぐねていた。




