(42) |優美《ゆうみ》と修のドライブ
優美には、事故の前に、最後まで愛美には言えなかった事があった。
ひと月振りに、連休を利用して 優美は、愛美を訪ねて行った。
行きは良かったが、帰るとなると、数十年に一度という、季節外れの大雪の予報になった。
列車は翌朝から軒並み予防的運休予定となり、高速も都心の多くは通行止め、大きな渋滞が予報されたが、一日早く出発して下道も使えばなんとかなりそうという事で、仕方なく、修が仕事の休みを調節して、車で優美の家まで送り届ける事になった。
普段なら列車で三時間ちょっと。ドアツードアでも、朝出れば昼前に、夕方出ればその日のうちに着く。高速でもそんなものだった。
既に雪も降り始め、連休後半、ナビで検索すると、六時間。下りは少しマシだろう。昼過ぎに出て、帰りはサービスエリアで仮眠をとっても明日の午前中には戻れるだろうと、修は考えていた
行ける所までのつもりで高速にのって、十キロも走らないうちに、完全に止まってしまった。事故渋滞だろう。路肩を緊急車両が何台も追い越して行った。
愛美から電話があって、 優美が話した。
「早速、渋滞につかまっちゃった。もう一時間、一キロも動いてないのよ。事故渋滞みたいだから、抜けたらしばらくは空いてると思うけど…」
既に雪は積もり始めている。車が通らない道は、そのまま雪が重なっていく。空いているのが、逆に厄介になる事もある。
優美の方は、少し嬉しい気持ちもあった。以前から悪からず思っていた、修と二人っきり。修の隣の、いつもなら愛美の座るシートで、修の横顔を見ながら、他愛のない話しができる。
眠気覚ましのドリンクを開けたり、お菓子の袋を切ったりするのを後ろの席から、眺めていた優美だったから、自分が修のお世話をしてることに、少しドキドキする。
愛美のように天真爛漫な笑顔ができればいいのに…と思いながら、いつもよりは、明るい優美だった。




