(38.1) 村での様子
夜中のわたじの褌祝いの宴を、つぐ姫もはつ姫は、離れた所で見ていた。
山の上の焚き火の明かりがなくても、二人でわたじの舟を港まで送ることはできた。わたじはずっとそれには気が付かないだろう。それでも良かった。二人は、宴の明かりが消えるまで、静かに見守っていた。
それからは、時間さえあれば、つぐ姫はわたじの舟に寄り添っていた。わたじ一人の時はほとんど無かったから、目立たないようにはしていた。
つぐ姫が鼻歌を歌っていると、仲の良い明寿には、「毎日が楽しそう、明るくなった」と笑われたが、つぐ姫自身も幸せな気分を感じていた。
一方で、陸に上がったわたじは、幼いこいしの所に通うことが多くなっのが、つぐ姫にとっては少しだけ、心を乱されている。
村の様子も少し変わった。
役人と、それにおもねる有力者が私腹を肥やしてるのは相変わらずだが、新参の問丸 の男達が現れるようになっていた。
親しげに漁民に話しかけたり、相談にのっているが、不穏な噂もあった。近隣の村では若い娘の神隠しの話や、海賊に襲われたという話もあり、時代が乱れていく兆しが、更に強くなっていた。
問丸:当時は「問」と呼ばれた平安末期の港湾流通業者。地元の役職(問職)から発展した者のほか、野盗や海賊と結託して勢力を伸ばす新参者も存在した




