(33) 髪を乾かす
「修ちゃん、海澪ちゃん髪を乾かしてあげて」
優美の声がして、海澪がバスルームから出てきた。
ラフな半袖のジャージとショートパンツ。この季節の部屋着としては最適だろう。外にだって行ける。
「星来ちゃんはこっちでやってるわね」
修は返事をして、海澪をソファーに座らせ、手慣れた感じで長い髪を乾かしていく。風量最大で音がうるさいので、会話はなし。シャンプーの匂いが鼻をくすぐる。優美の使っているシャンプー、リンスのはずだが、少し違う気がする。
風量を少し落とすと、少しは会話ができるようになる。
「便利でしょう。これが無かったら、乾かすのが大変だよね」
「お姫様じゃないから、普通にそのまんま。でも夏場でも半日は乾かないんです」
「驚く事ばかりでしょ?」
「ちょっとだけ…周りの人の気持ちが分かるから、みんなが普通に驚かないものは、こんなもんだって、なんとなく分かるんですよ」
分かる気がする、と修は思う。外国に行って、中身が何だかわからない料理も、周りが普通に食べてると違和感なく口にできる。あとで〝〇〇だったよ〟って言われて、びっくりする、という感じだろう。
それでも、やはり、海澪が驚いたことはたくさんあった。
地面がどこまでも固い、町の人が多い、建物が高い、牛のない牛車の箱だけが走ってる、そしてなによりも、夜なのに外も、部屋の中も明るい事だ。
そして、さっき聞いた、気になる事を尋ねた。
「私って、修さんの奥さんに似ているの?」




