(29) こいし
わたじの一人だけの出港を見守る〝こいし〟は、幼さが残る十歳の少女だった。
親戚筋ではないが、親同士が気が合い、ゆくゆくは二人を夫婦にと、こいしが生まれてから常々話していた。正式な許婚ではないが、二人は、幼い時からよく一緒に行動していた。子供でも出来る手伝いで、燃料になる柴刈りや流木を拾ったり、海藻、キノコを採ったりしていた。
特にこいしの方はわたじを慕い、お互いの家を行き来して、遊び疲れては一緒に昼寝をしたり、残りの握り飯飯をつまみ食いするのも常だった。
肌を寄せ合って、兄妹同士のように、暖を取りながら一緒に眠るだけではなく、次第に夜這いの真似事をして、大人の兆しや湿りをまさぐったり合って、褥で睦み合う事も、親達は知って微笑ましく見守っていた。
わたじが褌祝いを無事済ませ、若衆組に入り、こいしの初経が始まれば、夜這いが先か祝言が先かという事になるに違いない。
東の空すらまだ暗いまま、港でわたじの舟を見送り、こいしは近くの小山に一人登って行った。港と海が見渡せるこの場所で、今日はわたじの無事を祈るつもりだった。
わたじの帰る舟を一番に見つける。そして、港まで駆け降りて、迎えに行くのだ。
(AIによるイメージです。時代設定、キャラクター設定を汲んでない場合があります。これから登場するエピソード、登場人物のネタバレがある場合があります)




