⑵ 逃避のはじまり
海澪は、ある島の海の近くで暮らしていた。
山の方には、仙人と呼ばれる賢者が住んでいて、時折り関わることもあった。その場所は、仙境とか蓬莱と呼ばれていた。
母は理由あって、一緒には暮らせなかった。父は、出て行って、戻って来なかったと聞いている。
かわりに、幼い時から、六人の兄妹のような仲間と、家族のように暮らしていた。
ある日、六人があわただしく相談をし始める。
「見つかった」
どうやら、海澪が大人になったことで、知られたくない秘密が漏れてしまったということらしい。
どうしたらいいのか?6人の意見は別れた。
海澪もこの島とも、仲間とも離れたくなかった。
「他の世界など行きたくない!」
その島は、まさに海澪の故郷だった。
その相手側の目標は海澪だった。海澪は、存在してはいけない人物。
大急ぎで準備が整えられた。
海澪達が住むのは、神話のある世界。人の住む世界とは、時間と空間が絡み合って存在する。
どこも時間は流れている。過去と未来は前後ではなく、隣り合って存在している。生き来をするには接点を探し、出口を作り、それを越えなければならない。
螺鈿細工を施された唐櫃が用意された。大きめのスーツケースとかチェストケースのようなもので、急ごしらえの出口になる。
同じ螺鈿で飾られた印籠のような小箱は、情報だけを交換できる、今のスマホのようなものらしい。
島は賢者が作る結界で守られ、特に海澪のまわりは、六人によって隠されていた。既に式神が入り込んでいるらしかった。猶予はなかった、
唐櫃はスペース的な余裕はなかったので、6人の末っ子にあたる星来が、身を変えて海澪に付き添うことになった。
「大丈夫!」
あわただしく唐櫃に潜り込むと、蓋が閉じられた。
行き先は、人の住む日本。おそらく千年の先。




