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(15) はつ|姫《き》の思い出
つぐ姫とわたじの出会いから、更に少しさかのぼる。
姉のはつ姫も、妹のつぐ姫と同じように人の世界に興味を隠せない時期があった。
はつ姫は、ネコザメに姿を変えて、興味のないふりをしながらも、時折、人の世界に近づいていた。
ある大潮の引き潮の時に、潮溜まりに残されてしまったことがあった。
もとの姿に戻れば、潮溜まりから抜け出すのは容易ではあったけど、日はまだ高く、引き潮の磯には、海藻や取り残された魚や蛸などを捕る人も多くいたので、やはり、姿を現すのは憚られた。
思案していると、一人の少年が近づいて来た。
敵意はない。捕るためではないのはわかった。
「怖がらないで。潮が満ちるまでまだ時間があるから、海に戻してあげるよ」
姿を変えたネコザメには鋭い歯もない、おとなしい鮫だと知っているのだろう。
はつ姫も、背ビレの刺をそっとねかせた。
少年は、両手で優しく抱きかかえ、大海につながる場所に静かに移動した。
はつ姫は、人に触れたこともない。まして、抱きかかえられるなど思いもしなかった。
温まった潮溜まりより、人は温かい。胸がドキドキした。
その少年が、幼い時のわたじだった。




