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『海澪 -千年の縁-』  作者: 木峰圭介


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(13) 千年前

 時は千年をさかのぼる。


 沖の島にある、龍の宮に龍神の二人娘が住んでいた。

 姉は、はつ姫(き)。周りからは、〝はつ姫(ひめ)と呼ばれていた。龍の島を束ねる龍神のサポート…マネージャーのような役をしている。責任感のある真面目なタイプ。

 妹は、つぐ姫(ひ)。つぐ姫(ひめ)と呼ばれ、明るいバイトリーダーみたいな役だろうか。好奇心旺盛、自由奔放なタイプ。

 特につぐ姫(ひ)は、人の世界に興味津々で、時間があれば、人の世界の近くまで行き、時に人の姿で、時に海亀の姿に隠れ、人の世界を訪ねていた。


 つぐ姫(ひ)は、ある春の日、人の世界の誰もいない砂浜で、海亀の姿のまま、日を浴びて、気持ち良さにうとうととしてしてしまった。

 ふと気が付くと、三人ほどの悪童にもてあそばれている。

 少し近くには、磯の海松(みる)でも採っていたのだろう人もいる。

 『しまった、面倒くさいな』と、つぐ姫(ひ)は思った。

 姉と違い、裳着(もぎ)の儀 (✽1)はまだとはいえ、悪童くらいは懲らしめるくらいの神力はある。本来の龍の姿を垣間見せるだけで、慄(おのの)かれるだろうけど、やはり、むやみに現すのは憚(はばか)られた。

 「これ、こどもら。いざ、その亀をば放ちてよ(逃がしておやり)」

 一人の漁師の若者が、たしなめるように悪童達に声をかけた。

「亀は万年の生をつなぐという。優しく放してやれば、後に良いこともあろう」

 悪童達は渋々といった風で、亀を海に返した。

 身を変えていたつぐ姫(ひ)は、一瞬で胸が熱くなってしまった。

『人に恋するなんていけないことなのに…』



裳着(もぎ)の儀 (✽1): 男子の元服にあたる女子の成人式。13〜14歳で行われ、結婚できる年齢になったことを意味する

 

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