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第二十一話 捜索

「はあ、はあ、はあ!」


燦々と照りつける太陽の下、荒い呼吸が響く。


「群体型ってホントめんどくさい!」


――ドドドドド


地面を揺らしながら、大量のモンスターが追いかけてくる。


数が多すぎる。


一体一体は弱い。だが問題はそこじゃない。


「どれがボスよ……!」


群体型のボスは雑魚に紛れている。

そして、ボスを倒さない限り、ゲートは閉じない。


麗奈は歯を食いしばる。


「もういいかしら?」


追いかけてくるモンスターの数が数え切れなくなったところで……

麗奈は足を止め、振り返る。


「まとめて吹き飛ばす!!」


麗奈は背負っていたイグニスを取り出し……


弓を引く。


赤黒い光が弓に宿り、空気が焼ける。

熱が、肌を刺す。


(やば……ちょっと出力上げすぎたかも……!)


だが、止めない。


「いっけえええ!!」


――バンッ!!


放たれた炎の矢が、一直線に群れへ突き刺さる。


次の瞬間――


――ドォォォォンッ!!!!


爆発。


衝撃が大地を抉る。


巻き込まれたモンスターが、まとめて消し飛ぶ。


「……はぁっ……!」


爆風が収まり、視界が開ける。


残っているのは、わずか。


「もうボスは倒したわよね……?」


警戒しながら周囲を見る。


数秒。


――ピシッ


ゲートにひびが入る。


「あっ……」


ゲートが、崩れ始めた。


「やっと終わった……!」


張り詰めていた力が、一気に抜ける。


その瞬間――


――ピロンッ


スマホが鳴る。


「ん?」


通知。


しかも、緊急。


(嫌な予感……)


画面を開く。


次の瞬間。


「ええぇっ!? 協会が爆発された!?」


表示されたのは――


崩壊した建物。

煙を上げる、日本ハンター協会本部。


「ちょっと、なにこれ……」


一瞬、思考が止まる。


だがすぐに顔を上げる。


「行かないと……!」


麗奈は駆け出した。


***


「やばっ……!」


協会に到着した瞬間、麗奈は足を止めた。


人、人、人。


野次馬で溢れている。

それだけじゃない。


警備。ハンター。報道。


明らかに異常な数だった。


「これ……」


見上げる。

建物のあちこちから煙が上がっている。


ニュースで見た通り――いや、それ以上だ。


生々しい。


「……ひどい」


思わず呟く。


(これ、本当に人がやったの……?)


現実感がない。


そのとき――


「聞いたか?犯人」


「Sランクらしいぞ」


「は?誰だよ」


ざわめきが耳に入る。


「和田誠也ってやつらしい」


「……え?」


麗奈の動きが止まる。


「和田誠也……?」


その名前。


さっき、確かに聞いた。


「櫻田さんの……知り合いの……」


頭の中に浮かぶのは、軽い調子で笑っていた男。


こんなことまでするなんて……


(なんで……?)


理解が追いつかない。


そのとき――


周囲の大型モニターが一斉に点灯した。


『――聞こえるか』


低い声。


ざわめきが、一瞬で静まる。


画面に映し出されたのは――


和田誠也。


「……!」


麗奈は息を呑む。


『まず、これはハンターに向けた声明だ。俺の考えに賛同するなら、邪魔をするな』


『お前らはこれを、頭のおかしくなったSランクが起こしたテロだと思っているだろう』


『だが――違う』


一拍。


『これは、革命だ』


ざわめきが広がる。


『ハンターは常に人手不足だ』


『そのせいで、一人一人の負担が大きすぎる』


『なぜだ?』


『どうして、こんなにも苦しい?』


わずかに声が低くなる。


『答えは簡単だ』


『誰も、ハンターになりたがらないからだ』


『生活に困っていない人間は、命を懸けてまで覚醒しない』


『だから――』


『今のハンターは、常に足りていない』


一瞬の沈黙。


『じゃあ、どうする?』


『どうすれば、この状況を変えられる?』


間を置かず、言い切る。


『簡単な話だ』


『全員を、同じ土俵に上げればいい』


『俺は覚醒を、強制する』


ざわめきが一気に広がる。


『怖いか?』


『当たり前だ』


『だが安心しろ』


『今まで戦ってきた連中は、ずっとそれを背負ってた』


『お前らも、同じ場所に来るだけだ』


最後に――


ほんの少しだけ、優しく。


『ようこそ、“こっち側”へ』


言葉は淡々としている。


だが――内容が異常だ。


「……そんなの……!」


誰かが呟く。


そこで映像が止まる。


――ブツッ


画面が暗転した。


静寂。


誰も言葉を発さない。


あまりにも、現実離れした宣言だった。


「……」


麗奈は、ただ立ち尽くす。


覚醒は誰にでもできる。


だが――


成功する保証はない。


失敗すれば、死ぬ。


「そんなの……」


小さく呟く。


「許されるわけないじゃん……」


握った拳が震える。


「止めなきゃ」


協会が爆破されたことで情報の共有が難しい。

そのため、和田を見つけるのは至難の業だ。


だが、麗奈には因果固定がある。

これで和田を見つけるという結果を固定さえできれば見つけることができる。


しかし、因果固定もそう便利なものではない。

このスキルを発動するには原因となる行動が必要になる。


北に進むという原因を固定した時、和田が北にいればある程度の微調整ののち見つけることが出来る。


しかし、和田が全く別の場所にいたら、不可能性が高まり消費する魔力が倍増、またはスキルそのものが発動できなかったりする。


そして、もしスキルが不発に終わると魔力だけを無駄に食う。


スキルを発動する前に、どのくらい魔力を消費するか、なんとなく分かる。

そのため、魔力消費の少ない結果は始める前から成功すると分かるが、魔力消費が多いとそれが成功するのかどうかも分からない。


今の麗奈の魔力量からチャンスは一回。

失敗すればもう和田を見つけられないかもしれない。


道は北か南の二つ、時間的にまだそんなに遠くは行ってないはず。


どちらに行ったかは……


運だ。


「南?」


ぽつりと呟く。


北か、南か。


単純な二択。


(どうしよう……)


正直、分からない。


考えても、答えなんて出ない。


和田がどっちに行ったかなんて――分かるはずがない。


「……でも」


麗奈は小さく息を吐く。


(迷ってる時間、ないよね)


時間が経てば経つほど、距離は離れる。


そうなれば――もう追いつけない。


(だったら……)


ぎゅっと拳を握る。


「直感でいい」


考えるのはやめる。


こういうときは、だいたい――


最初に浮かんだ方が当たる。


「南」


理由なんてない。


ただ――


「なんか、こっちな気がする」


それだけ。


けど、それでいい。


麗奈は息を整える。


(外したら……終わり)


魔力はもう多くない。


チャンスは一回。


それでも――


「当てる」


南へ走りだす。


その瞬間――


スキルが発動した。

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