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第十六話 新しい武器

「決まったか?」


「はい!これにします」


麗奈が指差したのは、ショーケースの奥――赤黒く輝く、明らかに場違いな存在感を放つ弓だった。


「弓か……悪くねえな」


「最近、遠距離の敵に手こずることが多くて」


「……なるほどな」


短く頷いた櫻田は、そのまま店主を呼びつける。


「これを、買いたい」


「……Sランク魔導武具イグニスですか」


店主は弓を一瞥し、わずかに眉を寄せた。


「あまりおすすめは出来ません」


「なんでだ?」


「矢の着弾点で爆発を起こす構造ですが、制御機構が存在しません。扱いを誤れば、自爆もあり得ます」


淡々とした説明だったが、その内容は軽くない。


「……でも威力は高いんだろ」


「はい。Sランク武器の中でも、トップクラスの火力を保証できます」


一拍の間。


櫻田は視線を横に流す。


そこには、迷いなく弓を見つめる麗奈の姿があった。期待も、不安も、そのまま表に出た分かりやすい顔。


「――問題ねえな」


結論は早かった。


「いくらだ」


「七万ポイントです」


櫻田は躊躇なくハンター証を端末にかざす。


決済音が鳴る。


――やりすぎか?


一瞬だけよぎるが、すぐに切り捨てた。


Sランク武器。本来なら軽々しく渡す代物ではない。だが麗奈が強くなれば、そのまま自分の負担が減る。

ゲート攻略を一人に任せられるなら、それだけで十分に元は取れる。


Sランクゲート一つ分。計算としては、それで釣りが来る。


ふと視線を向けると、麗奈は満面の笑みを浮かべていた。


それを見て、櫻田はわずかに肩の力を抜く。


「……気にするほどじゃない」


誰にともなく、小さく呟いた。


***


そのやり取りを、少し離れた場所から眺めている二人がいた。


「ねえギルド長」


不満を隠そうともしない声。


「なんで彼女はSランク武器で、ボクはDランクなんですか?」


「……あの方は例外です」


足立は即答した。


「私と比べないでください」


「ふん」


横から櫻田が割り込む。


「プレゼントがDランクとはな。落ちたもんだ」


「ええ、ええ」


足立は大げさに肩をすくめてみせた。


「かつては億万長者の仲間入りだったこの私も、今や明日食べるものにも困る身でして」


芝居がかった動きで、軽く頭を下げる。


「どうか、この哀れな私たちにお恵みを」


「食えないやつだな」


「おや、それはダブルミーニング」


「うるせえよ」


短く吐き捨てる。


「もう帰る」


「それは残念。またの機会を楽しみにしております」


軽く手を振る足立を無視し、櫻田は踵を返した。


――やっと終わった。


心底そう思う。無駄に歩かされ、無駄に会話し、無駄に気を使った一日だった。


あとは帰って寝るだけだ。


そう考えた、そのときだった。


――ギュイーン、ギュイーン


けたたましいサイレンが、施設内に鳴り響く。


同時に、重い音を立てて出入口が一斉に閉鎖された。


『ご来館の皆様へ。大変申し訳ございませんが、非常事態のため、出入口を封鎖させていただきます』


無機質なアナウンスが頭上から流れる。


「な、なんですかこれ?」


麗奈が慌てて振り向く。


「ブルー・アーセナル内で泥棒が出たんだろ。運が悪けりゃ強盗だな」


「これは厄介なことになりましたね。犯人が捕まるまでは帰れそうにない」


足立が割って入る。


「まだいたのか」


「出入口が封鎖されては帰れませんから。……どうです?犯人探しでも」


「めんどくせえ。警備がやるだろ」


即答だった。


「ここは無駄に優秀だからな」


「そうですね。こんな場所に置いておくのが勿体ないほどに」


「……俺は寝る。帰れるようになったら起こせ」


言い捨てて、櫻田はソファへ向かう。


「仰せのままに~」


――ドゴォン!!


突如、鈍い爆発音が響いた。


「な、なに!?」


麗奈が声を上げる。


「どっかで爆発しただけだろ」


「だ、大丈夫なんですか!?」


「ここには爆発するもんが腐るほどある。逃げるために使ったんだろ」


「いや、それって大丈夫じゃないんじゃ……」


「……なあ麗奈」


寝転がったまま、天井を見上げる。


「どうしてここがブルー・アーセナルって呼ばれてるか知ってるか?」


「さあ?外見が青だからですか?」


「それもあるが、ただの見た目じゃねえ。魔石で強化されてる」


軽く床を叩く。


「簡単には壊れねえ構造だ。普通はな」


「アーセナルは“武器庫”って意味らしいですよ」


「お前は口を挟むな」


足立を遮り、視線を閉じる。


「まあ、放っときゃ終わる――」


――ドゴォ、ドゴーン、ドゴゴゴ、ドッカーン

――ドガガガ、ドーン、ドーン

――ドドドドドッカーン!!


連続する爆発音。


床が明確に揺れた。


「これでもですか?」


「……」


数秒の沈黙。


「これはちょっとやばそうだな」


体を起こす。


「よっと」


立ち上がり、首を鳴らす。


「様子見に行くぞ」

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