第25回 昔住んでいた街
突然人生を振り返り始めたエッセイもどき、第25回です。
転勤族の方だとこういう街ってめっちゃあるんですよね?
自分と違う道を生きている方々が同じテーマに対してどう思うか気になるお年頃。
私は過去に住んだことのある街が3つありますが、これが転勤族の方だと二桁とか行くんでしょうか。あるいは引っ越しをするのが趣味という方(どうやら住む街を頻繁に変えたくなる人がこの世にはいるらしい)だと10を超えるのか? 怖い。
この「昔住んでいた街」という概念、不思議な感情を抱かせます。
よく使われる単語にノスタルジー(郷愁)というものがありますが、この言葉って結構綺麗に美化された思い出に対して使われる感じがするんです。あの頃の無邪気だった自分とか、よく通った思い出の場所みたいにポジティブに捉える感じ。
ですが、昔住んでいた3つの街にはそこまでポジティブな気持ちはありません。
決して嫌いな場所じゃないんです。
でも好きだったかって言われるとそこまでじゃなくて。手放しに愛着があるわけではない。良い思い出もあるけど、ひとくちに大切な記憶の街とも言えない。
好きでも嫌いでもない、大事ではないけど無縁でもない、良い思い出はあるけど辛かったことも強烈に紐づいている。こういった微妙な感情の先で、でも確かに自分はあの街に生きていたのだという記憶の香りが鼻腔を突く。
不思議です。だからこそ、そんな街のことを少し振り返ってみます。
食の話と絡めると記憶って結構蘇ってくるので、このエッセイのテーマにも合う。
・1つ目の街
またの名を生まれ故郷といいます。日本海側のとある都市です。
今こうして太平洋側の(海鮮的にはしょうもないけど文化は数多楽しめる)都市に住んでいると、まあ地元は田舎って感じですよね。
実際、住んでいた場所は街というよりは町という言葉が似合うところで、地域の中の結びつきみたいなものがそれなりにありました。
でも、地元にいた頃って自分が学業とか色々なもので子供なりに苦しんでいた時代と重なるし、両親という当時の自分からすれば逆らえない絶対的庇護者がいたので束縛の印象が強くて、あんまり良い気持ちにはならない。
高校時代は通学路の途中に繁華街があって、そこのマクドナルドで100円の商品を頼んで一人で一時間くらい粘ったり、休日の部活前に立ち寄ってちょっと楽しんだり、そういうささやかな青春の記憶として残っています。
部活の友達とは帰り道にご飯を食べることもあって、本当に時々だったけど一緒に食事して楽しかったなっていう記憶があります。
食の記憶は、住んでいた町よりも通学途中の街の方が強いという。
でも、本当にこういう食事の思い出って青春だったので、この気持ちはノスタルジーと呼んで美化してしまってもいいのかな。
・2つ目の街
これは大学時代を過ごした街です。
盆地なので夏の暑さが異常でした。死。
大学時代は引きこもって講義に行ってバイトしてそれで終わりっていう。
主体性のなかった子供が大学生活を謳歌できるわけがなくて。
良かったなって思うのは、バイト先近くにアニメ系ショップが集っていたことです。アニメイト、らしんばん、メロンブックス、とらのあなが簡単に歩いて回れるような場所だったので、バイト後にその辺りを歩いて楽しんでいた自分の姿を思い出しては切なくなります。
ささやかな楽しみが自分にもあったんだっていう記憶が存在して嬉しい。
お金を使うにも本当に怯えていた時代だったので……
その頃の食事の思い出ですけど、やはりお金をできるだけ使わないように生きていたので正直そんなにないのですが、唯一覚えてるのは自然の多めな観光エリアに足を運んだ時に、お洒落なチョコレートパンケーキを食べたことです。
なんでや。住んでた場所の近くにある店とかじゃないんかい。
あとそういう時はあっさり金出すんだな。
というか居住地から離れた場所の食事しか思い出せない時点で、よっぽど普段の食生活が悲惨だったんだなって読者に感じさせてまうやろ。おい。
で、今思い出したんですけど近くのドラッグストアで安物のパスタとミートソースを毎週買ってましたね。節制生活が異常すぎるだろ。これが食の思い出……
・3つ目の街
これは社会人になってから住んだ街です。
クソつまんない話で申し訳ないんですけど、この街に住んでいたのは社会で働く苦しさで死にかけてた時期だったので(普通に部屋のドアノブで首吊って死のうかと思ってた)、なんにもいい思い出がないっていう……
別に駅から遠いわけではなかったし、必要な機能は駅前に大体揃っていたし、治安が悪いわけでもないし。要するに可もなく不可もなく。
そこに絶望的なくらいマイナスの思い出が加わったら総合評価はガタ落ちと。
仕方ない。街のせいじゃない。私の運と環境が悪かっただけ。
で、唯一覚えてるのは連載第1回でも書いたとんかつ屋です。
当時以下のように書きました。
「その店は老夫婦が個人経営する小さめのお店で、ご主人が長年の修行で鍛えた手腕でとても美味しいとんかつを提供してくれるお気に入りの店でした。そこで初めて頼んだヒレカツがそれはそれは衝撃的で。」
ここはマジで美味かった。天才的なまでの美味しさ。
本当にこのお店に出会って通えたことが人生の財産。
ただ、それ以外は正直なにも……ない……
で、結局私は3つの街に対してあまりポジティブになれない気持ちを書いてきたわけですが、今の街はどうやら好きになれそうです。というか好き。
初めて自分の意思で住むことを選んだ街という前提はあるのですが、この街に暮らすことで自分が生きやすくなったし、住んでいる期間の中で精神的にも生きやすい方向へ自分を持っていくことができたという自負があります。
なので、好き。
好きな街に住めていることが嬉しい。
……ネガティブなことばかり書いてきた私からすると奇跡的だと思いません?
これってすごいよ。よく頑張ったんだね自分。
というわけで最終的に自分を褒めるという謎の着地を見せたところで終わります。
ではまた。




