ヒロインと悪役令嬢とその義母。仲良しです?
ラナちゃんの受け入れはスムーズに進んだ。
シャウラちゃんに友達を……と言った時には渋い顔で「だったらもっときちんとした家柄から選ぶべき」だと主張していたカウスくんも、光属性の持ち主の保護という観点を持ち出したら納得してくれた。
「闇属性と相反すると言われる光属性……。切り札はどれだけあってもイイですからね」
ちょっと気になることを呟いていた気もするけれど、カウスくんがその気になってくれたおかげでトントン拍子で引越しまで漕ぎ着けられた。
「来たぜ敵きょて───ぇんっ!!」
「ラナちゃん……。そういうこと大声で叫ばない」
割り当てた客室でウキウキと拳を振り上げるアクティブ極まりないヒロイン。いくらわたしと2人きりだからって、はっちゃけ過ぎだ。
「ゲーム云々はヒトには話してないんだから、『敵』なんて言うと誤解を生むわ。それに……人払いしてもどこかで誰が聞いているかもしれないもの。声の大きさには気をつけて」
「あー、カウス様とか? 盗聴器とかあれば、仕掛けてそうだよね、ツィーナちゃんに」
「え。何その恐ろしい発想。家族間で盗聴するほど、ウチの家族は殺伐としてないんだけど」
「家族ってーか、ツィーナちゃんのことならなんでも知ってたいって感じ? うふふふふ。愛だね」
「何それ……」
言われて、一瞬ゾクッとしてしまった。いや、いくら心配性の過保護でも、ねぇ?
(盗聴魔術具って無かったよね? ……って失礼!)
最低だわ、わたし。義息子を疑うとか。
むしろここ、「別に仕掛けられても困らないからドンと来い」と構えるところだ。
(なんか……わたし最近、たるんでる。ダメだな……楽な方に流れ過ぎ。もっと信念を持って突き進まなきゃ! じゃなきゃ、なんのために人生2週目のチャンスもらったのかわかんないよ)
心の中で、頬を叩いて気合いを入れ直す。さすがに、現実で急にそれをやったら貴婦人として失格だろうから、イメトレだけ。
「ところで、本当に家具、これでイイの?」
「イイんじゃない? てか、もっとボロいのあるならボロいのに替えて欲しい。立派過ぎて落ち着かない」
「それはさすがに……。お下がりは住込み部屋で使ってるし、さらにお古となると寄付しちゃうもの」
「はぁ、さすが公爵家は違うね。アタシも住込みの使用人部屋がイイのに〜」
「何言ってるの、子爵家のご令嬢が」
「格式高い公爵家とは違うもん。下位貴族ナメんなよ?」
「わたし、男爵家出身だけどそれなりの物は使ってたよ? もちろん、ここまで立派な家具じゃなかったけど」
「はぁあ!? どんな男爵家よソレ」
標準的な客室を一室宛がって、あとは持ち込まれる私物に合わせてラナちゃんっぽく替えていこう。そう思って、性別や好みを感じさせないシンプルなままの部屋を用意していたのだが、持ち込まれた私物は驚くくらい、少なかった。3泊くらいの旅行かな? と思うくらいの量。ジパニア子爵家の経済状況は予想を超えて悪いらしい。
(ちょっと……カウスくんに頼んで調べてみてもらわなきゃ。公式でもここまでじゃなかったと思うんだけど)
「格差ってのはどこにでもあんの。ま、アタシだってヒロインなんだし? キラキラな世界に慣れなきゃなんないのはわかってんだけどね。でも部屋くらい、気楽じゃなきゃやってらんない」
家主として諸々の費用はこちらで出すと言っているのに、ラナちゃんは頑なにそれを拒否した。曰く、
「友達に借金すんの、好きじゃない。働きを見ての対価なら受け取るけど、それ以上の施しはね? ちゃんとアタシのこと友達だと思ってくれてんの、って疑っちゃうよ」
公爵家令嬢の友人として一緒に家庭教師の教えを受ける、それだけでも有り得ないほどの恩恵にありつけるんだから──と。
わたしのワガママで下宿してもらうのだ、便宜を図るのは当然。むしろ、もう1人の義娘として世話を焼かせていただきたい、そう思ってきたわたしには、衝撃的な言葉だった。
ありがた迷惑。善意の押し付け。見下している──。
「……ごめんね」
「へ? あ! そうだ、アタシのお手伝いなんだけどさ、庭と厨房と、あと試しに書類仕事してみたいんだけど〜」
「……試し?」
故意か無意識かはわからないけれど、ラナちゃんにわたしを責めるつもりはないらしい。わたしが勝手に自己嫌悪。
ダメだなぁ、わたし。すぐに悲劇に酔うこの性格。すぐに出口を見失ってグルグルする。
「書類仕事、好きなの?」
だから、悲劇のヒロインではない、本物のヒロインの切り開く世界に乗ってみた。わたしだって人生2週目、周りの人の大事さを理解している。
「ぜーんぜん? でもさ、ツィーナちゃんが言ったんじゃん。光魔法でやってみろって」
「光魔法? ……あ、隠し事? え、文字に明暗ってある?」
確かに言った。闇魔法で隠せるなら、光魔法は暴けるんじゃないかと思って。
「印刷した系は無理。でも、なんっとなく手書きの長文はいける気ぃすんだよね。なぁんか違和感あってさー。から、練習兼ねて書類仕事やってみよっかな」
「……でも、ウチの書類仕事ってほぼカウスくんだよ? 大丈夫?」
ラナちゃんなら冷たい一瞥を食らったって萌えられそうだから、そういう心配はしていない。純粋に、
「ま、なんとかなんじゃね? 足手纏い上等。てか、正直に光魔法の新たな活用練習のため! とか言っちゃおうと思ってんだよね。成功すればマジ役に立つから、カウス様も協力してくれそーじゃん?」
「あー……あるかも」
彼の能力主義な部分を憂慮していた。しかし、この調子ならうまくやっていってくれそうだ。
「カウスくん、光魔法に興味あるみたいだったから。ところで、シャウラちゃんとはどう?」
「どう、って……まだ顔合わせしかしてないからわかんないよ。でも思ったより大人しそう? 確かにキツい顔立ちだけど……なぁんか、悪役令嬢感全然ないから、一瞬誰かわかんなかった」
「! ラナちゃんもそう思う!? 悪役令嬢感、すっかり抜けてるよね!? 良かったー……」
「中身は知らないけどね? ま、アタシも仲良くなれたらイイなと思ってる」
「今日はお引越し以外予定入れてないし……良ければシャウラちゃんも入れてお茶でもいかが?」
良かった! 本当に! ウチの子、先行き明るくなった!
「あー……やめとく。時間あるなら早速庭師のトコと厨房行きたい。あと、アタシの査定してくれるヒトって誰?」
お金の有る無しに関わらず、手伝いに行く先が気になるのはわかる気がする。あと、労働が適正に評価されるかだって当然気になる。
アルバイトとかと一緒だよね。名目上「お手伝い」とはいえ、実質勤労。仕事と生活は密接に関係している。
(わたしも本腰入れてお仕事したいな〜……。でも、アケルナーに戻らないとやっぱり難しいんだよね)
これでもアケルナーの女主人として社交……は、させてもらえなかったから、細々と領地経営に携わって来た。領民との交流までは止められなかったし、向こうでは許される範囲で、カウスくんの秘書的な、ビジネスパートナー的なことをしていたのだ。
要するに、町興し要員。地元のヒト達と間近に接して士気を上げたり、時にはアイディアを出したり。フォーチュンクッキーなんかはその過程で生まれた。
(ボーロも売り始めたって報告は来てるけど、やっぱり現地を見たいなぁ……。日帰りで行って来ちゃう? ……カウスくん、怒るよね……)
「おーいツィーナちゃーん?」
「あ、ごめん。考え事しちゃって。査定だっけ? 基本的には現場責任者から家令さんに報告が上がる感じだと思う。最終決定権はカウスくんにあるけど、やっぱり一緒に働くヒトじゃないとわからないことってあるでしょ?」
「んー、じゃぁま、愛想売って来ますか」
頼もしいヒロインのガッツポーズ。
静かなアケルナー家に、温かな風が吹き抜けたかのように感じる。
(イイ子だわ、しみじみと)
ステキな化学反応が起こるとイイなぁ。シャウラちゃんにも、カウスくんにも。なんなら……わたしにも。
家族が増えたわけではないけれど、それに似た心踊る感覚。面倒くさいこと、難しいことばかりに思い悩まされていた昨今、ラナちゃんの存在は一際、輝いて感じられた。
(きっと……うまく行く)
きっとみんな、幸せになれる。幸せを感じるものは、みんなそれぞれ違うけれど。大丈夫。
ラナちゃんや、みんなの力を借りて。笑顔溢れる未来を、わたしが絶対作ってみせる。
「末永くよろしくね!」
※※
【Side ラナ】
物心ついた時から、アタシは自分の立ち位置を理解していた。だってこのゲーム、何周したと思ってんの? って叫びたい。小さかろうがアタシが自分を見間違えることはない。
ただ、「自分はヒロインだ」って浮かれたりしないよう気をつけた。
だって、よく言うヒロイン補正やヒロインチートがあるなら、我が家はここまで貧乏じゃないはずだ。いくら、公式設定で「没落しかけの子爵家の令嬢」ってあるとはいえ。もしアタシがこの世界の中心で、世界に愛されたチートヒロインだっていうなら、こんなにまで苦労したりはしなかっただろう。
それでもゲームの内容を知っているから、将来には希望を持っていた。
不遇の貧乏令嬢のままではなく、玉の輿が待っている。激太りして容姿がゲームと激しく変わったり、光魔法が使えなくなったりしない限りは、大丈夫。幼心にそう思って、「ゲーム開始にあたる14歳までを、とりあえず生き抜こう」──騙され体質の両親を眺めながら、そう決意した。
公式の「ラナ・ジパニア」は優しく控えめな少女だ。……と思う、正直、ヒーローのインパクトが強すぎてヒロインの印象はそこまでないが。
でも、提示される選択肢に「なんでもっとガンガンいくヤツないわけ!?」とイライラしたのはよく覚えているから、少なくとも肉食系ではない。
自分が薄く自信もない、薄幸の美少女。ヒーロー達に褒められ、愛され、ようやく輝き出す……まさにシンデレラストーリー。
(まぁ、アタシはアタシらしく生きるしかないっしょ。人任せとか性にあわないもん)
『光属性の美少女』。それだけ押さえておけば大筋に影響はない。
ストーリーを思い出して脳内でおさらいして。街の1人歩きを許される歳になる頃にはもう、アタシはその結論に達していた。
ちなみに、そう思い至ってからのアタシの行動力は、我ながらなかなかのものだった。
まず、我が家の借金の原因、執事とメイド長を解雇した。笑顔の裏は真っ黒だった彼らの、その笑顔を頑なに信じようとする両親には、
「いたっ……あ、ちがうの、なんでもないの……っ! ……だれにもいっちゃダメって……いったらおこられる……っ、なんでもないのぉっ」
怯えた演技をしつつ、青アザをチラ見せ。
年端もいかない娘がたどたどしい口調で外傷を隠そうとする様子は、案の定、子煩悩な両親の逆鱗を直撃した。騙されやすい素直な両親。アタシが外遊びで作った青アザを、執事とメイド長による虐待だと思い込んだ彼らは、2人を見張ることで金銭的不正にも、ようやく気付き……紆余曲折ありつつ、なんとかかんとか一件落着。解雇に至った。
アタシ、マジ悪役令嬢ばりに頑張った。頭使った。すごかった。
それからも、幼いながらに光魔法を使ってバイト先を開拓したり、家のことを手伝ったり。
油断するとすぐ騙される両親を見張るのが、1番疲れる。ヒロインチートどころか、むしろシナリオ強制力が強すぎて我が家は強制貧乏なんじゃないか、ってくらい、ウチの両親ヤバチョロい。
幸いにも成長した弟が真っ当な感覚の持ち主だったから、今では「アタシは外で稼いで来るヒト」「弟は両親を見張るヒト」って役割分担ができるようになって助かっている。
(つっても、ここまで高収入は期待してなかったんだけど)
アケルナー公爵家の居候となって早五日。台所で野菜の皮むきの下働きをしながら、アタシは乾いた笑みを浮かべた。
野菜の鮮度管理だけにしては高額なお駄賃に驚き、柄にもなく他の手伝いもないかとボランティア的に申し出てしまったのだ。だって、試用期間的に3日間の働きを見て上げられた報告書。その結果を受けた雇用通知ならぬ、お小遣い支給予定額通知は衝撃的で……白目を剥いた。
(まぁ、それでこそ悪役令嬢の実家って感じだけど)
金なら唸るほどある。
使用人達まで金銭感覚麻痺してる。
昨日の夕食時、あまりの高額査定に不安になって、本当にイイのかどうかツィーナちゃんに訊いてみた。すると、
「正当な対価よ? だって、ホントはラナちゃん、働かなくてイイのに働いてるし。それに、ご家族と引き離しちゃってるもの」
どことなくズレた答えが返ってきた。
「ね、カウスくん?」
「……仮にも子爵家令嬢で、さらには貴重な光魔法の使い手です。必要ならもっとお支払いします」
「ほら。当主がこう言ってるんだから遠慮しないで? シャウラちゃんから、ラナちゃんはお勉強も頑張ってるって聞いているもの」
「……はい。学びを疎かにする性格ではないと思います」
「ね?」
(「ね」って、何が? 基準おかしくない?)
経済格差ってヤツと身分制度は直結しているのかもしれない。そう思わせられる出来事だった。金ってあるところには集まってるよね。
「ねぇ、逃げたくなったりしないの?」
今日の分の家庭教師の授業を終え、頭リセットのためのティータイム。向かいに座ったシャウラに、アタシは思わず愚痴っぽい声を出した。
「どういう意味?」
「庶民ぽい暮らしに戻りたいとかー、使用人達に見張られないで生活したいとかー」
悪役令嬢としてアタシを虐めるはずのシャウラは、実はなかなかイイヤツだった。
ツィーナちゃんの過干渉気味なまでの愛情のせいか、寂しさを拗らせたところがなくて基本フラット。正直、ツィーナちゃんよりも付き合いやすい。
「別に。彼女たちは自分の仕事をしているだけだもの」
「つっても、どこ行っても誰が居んじゃん」
「大きな家の管理を自分一人でしなければならないより余程イイわ」
「あー、掃除とか? それはヤだわ、クソダルい」
「ラナ、言葉遣い。……帰りたいなら帰ればいいじゃない。お義母様だって止めないと思うわよ」
感情に振り回されないシャウラだから、話しやすいし信用できる。
お茶を飲みながらじっとこっちを見つめる姿に、「ゲーム世界のアタシはこの目が怖かったんだろうな」とは思うけど。整った顔の中の、吊り上がり気味のデッカい目。どこを見ているかわからない猫のような不気味さの正体が、極端に少ない瞬きのせいだと気付いたのは初日のことだった。
「帰りたいってほどでもないんだけどさ。なぁんか、別世界じゃね? 庶民から見たら」
「庶民て……子爵家令嬢でしょう」
「アタシもアンタも、ツィーナちゃんやカウス様に比べれば庶民でしょ。あの二人、なんつーか……浮世離れ? してるし」
「……発言は避けさせていただくわ」
言い淀むシャウラを指さして笑う。アタシ達は市井を知ってるという点では似た者同士だ。
「それが答えじゃん既に。つーかあの2人、お似合いだよね」
「……やっぱりそう思うわよね!?」
「おぉう? ……何その圧」
急に身を乗り出して来た友人に驚かされる。何だこの食いつきは。
(あ、もしかして)
「シャウラも気付いてる? あれ、カウス様絶対ヤバいよね? ツィーナちゃん、ボケボケにも程があるって」
「さすがね、ラナ。……けれど、お義母様もね、気付いていないわけではないのよ。直接お兄様に告白されているんですもの」
「は?」
「『母親とは思えない』って言われたって、お義母様、落ち込んでいたもの。それにね、実はお兄様、お義母様との婚姻許可を申請しているの。なかなか通らないみたいだけれど」
(ちょ、まっ……)
カウス様がツィーナちゃん相手にかなりヤンデレ入ってるのは一目でわかった。あの、据わった暗い瞳。黒い炎がメラメラと燃えているかのような……見ていて、めちゃくちゃキュンキュンする、子宮にクる目。
でも、ツィーナちゃんはそれをガン無視してたから、てっきり気付いてないんだと思っていたのに。
「え、ね、それってツィーナちゃんはカウス様のことどう思ってんの!? 落ち込む意味がわかんない」
カウス様の顔面は好きだ。あのヤンデレっぷりもめっちゃイイ。けど……現実で狙われるのはマジ、キツいと思う。
魔術師クルストはリアルに考えればサイコな変態。百パー犯罪者。でも、カウス様もなかなかに変質者な犯罪者予備軍だ。いくら大好きな顔面だろうと、アタシはどっちのコースも同じくらい拒否りたい。監禁とか、されたくない。
「それがよくわからないのよね。お義母様頑なだから、もしお兄様のことを好きだとしてもご自分のお気持ちを認めないと思うし」
「あーっソレか!」
(アタシ安全圏からヤンデレカウス様を鑑賞するために引っ越して来たのよ!?)
ヒロインはアタシなんだからアタシのことを好きになりなさい、なんてことは思わない。ストーリー改変? どうぞどうぞ。アタシはアタシで幸せを掴むからお気になさらず。
ここが現実である以上、どうせアタシは1人のヒーローしか攻略できない。残りの5人は放置状態という、もったいないその状況で、ツィーナちゃんだろうがシャウラだろうが、ヒーローの誰かを攻略する様子を見せてくれるなら、それほど嬉しいことはない。外野としてゲーム実況を見るようなもんだ、かなり楽しいしそんなの間近で見たいに決まってる。
「しかも……ラナ、あなた、ケネス殿下をご存知?」
「王弟の? 会ったことはないけど見たことはある」
ゲーム画面で。イイよね、ちょっとエロい雰囲気が。
「そう、そのケネス殿下。お兄様の申請が通らないのは……たぶんケネス殿下のせいだわ。大きな声では言えないけれど、ケネス殿下もお義母様に求愛してるの。でもそっちはお義母様、本当に気付いていないみたいなのよね……」
「はぁ!?」
(何その美味しいシチュエーション! 超見たい!)
「ツィーナちゃんてまさかの逆ハーコースなの!?」
「ぎゃく……?」
「あ、なんでもない。気にしないで? てか2人にベタ惚れされてんじゃん。どーすんだろね、ツィーナちゃん」
「……とにかく、わたくしはお兄様を応援しているの。お義母様はわたくしの目から見ても可愛らしくて、危なっかしいわ。王族なんて…………ねぇ? お兄様に見張ってもらわないと心配なのよ」
「わかる気がする」
「やっぱり! ラナならそう言ってくれると思っていたわ!」
我が意を得たり。そんな表情のシャウラに、「そういうことか」と納得した。
さっきのあの圧は、推しカプ仲間を見つけた喜びの圧だ。
「……ふぅん。おもしろいじゃん」
(アタシ的には逆ハーでも美味しいけど。でも、二股ってやっぱリアルに無理あるよね〜)
「アタシも協力するよ」
顔面最推しと、シュチュ最推し。ツィーナちゃんに纏わりついておけば、その2人のあれこれが見られる。高みの見物を楽しめる。
「本当に!? あぁ、良かった……」
(……え)
ホッとしたように破顔したシャウラに目を見張る。なんだコレ、吊り目が和んで年相応に幼い笑顔が……すごい可愛い。激レアを目撃した感が強くてかなり嬉しい。
「ラナが来てくれて良かった。本心よ」
「可愛いなオイ」
公式のシャウラはいっつも偉そうな表情でこっちを見下ろしていた。それがこの変わりようだ。
(あー、もっと早く登場人物達に会いに来れば良かったー)
アタシ、もったいないことしてたかも。いくら生活に手一杯だったとは言え。考えてみれば、公式より幼い推し達に会える貴重な機会だったのに。
(カウス様だって、どことなく線が細いもんね)
「な……急に何?」
「ちょ、赤くなるとかシャウラ、マジ可愛い。アンタは好きなヤツ居ないの?」
「はぁ!? 何言ってるのよ!」
「……怪しい」
「もうっ。知らないっ!」
なんだこの可愛い子。……そうか、大人びて見えてもシャウラは生粋の13歳。転生ヒロインのアタシと違って思春期か。
……うん。こっちの観察も楽しそう。
(アタシもそろそろコース決めなきゃなぁ。現実的に考えるとマーカスコースが無難なんだよ。結婚しても身分的に縛りが少なそうだし、操縦楽だし。リーベルトコースはねぇ……やっぱハードル高いよな〜……)
とりあえず、シャウラと競合しないとイイんだけど。
「ま。まずはツィーナちゃんとカウス様のラブラブ作戦を練ろうよ。アタシの見立てじゃ、ツィーナちゃん、カウス様のこと大好きだもん。素直になれればイチコロじゃね?」
ケネスコースも捨て難いけど、カウスコースがかなり際どいラインで進んで見えた。監禁エンド目前に見えるカウス様をなんとかするのが最善だろう。
「っ! そうよね!?」
ヒーロー攻略に、攻略鑑賞。加えて、ツィーナちゃんを主人公に据えての乙ゲー。ヒロインを操作する感覚でツィーナちゃんの誘導するのもおもしろそうだ。
「ぜひ一緒に頑張りましょう!」
しかも、意気投合できそうな推し活仲間も目の前に居る。
──わたしね……。
けれど、意気揚々とツィーナちゃんを落としに行って、
──……ぽにぃちゃとの結婚を考えているの。
衝撃発言を聞くことになるのは、この数日後。
ツィーナちゃん、カウス様のこと好きなくせに拗らせ過ぎでしょ。なかなか手強い。さて、どうしてくれようか。
(てか、ポなんちゃらって、誰!?)
……乙女ゲームの世界、意外と広くて奥深い。
やはり今週も本日だけの投稿になります。すみません。




