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17アーチ―

 爽やかな朝食の場で突然、爆撃された。


 まあ、結論から言えば家もイサミ達も無傷だった。


 万一のために俺が全力で叩いても大丈夫そうな結界を張っていたからだ。


「と、いう事を前にお前にも話しておいたはずだが?」

「うぐっ……! だって、仕方ないだろ! あの威力の爆撃を防げるなんて思わないじゃないか!」

「この程度の爆撃なんて難なく防げるぞ」

「それはそれでおかしいだろ! こんな結界を張れるのなんて、盾の勇者くらいだぞ!」

「魔王だからな」

「イサミ様ですから」

「はあ……。まあ、イサミだしな……」


 そこは魔王だからと言えい。


 さて。とりあえず、結界は正常に作動した様だし、少し出てくるとするか。


 椅子から立つと不思議そうにアリエスが見上げて来た。


「む。どこに行くんだ?」

「ちょっと挨拶をな」


 その一言で察したのだろう。


 アリエスは一気に真剣な表情になった。


「手伝おうか?」

「いらん。待ってろ」


 この程度、わざわざアリエスの手を借りるほどの事では無いしな。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇   



 イサミの家の周りは視界が阻まれるほど深い森に囲まれている。

 自然と共に生きるエルフ族にとっては


「良い矢倉だ」


 この男、エルフ族一の弓の名手であるアーチ―にとっては最高の狙撃場所(スポット)だ。


 無数に葉が生い茂る木々のおかげでアーチ―を視認する事はほぼ不可能だ。

 さらに、何故かこの森は異様に魔力濃度が高い。それゆえに魔力で居場所を探る事は不可能だ。


 あのお方から、爆撃を依頼された時は動揺したものだ。

 

 だが、任務は遂行する。

 それが仕事であり、忠誠の証だ。


 炎の精霊によって“爆撃効果”を付与された矢を標的の家に向けて放った。


 次の瞬間に大爆発を引き起こす。


「……例の言葉を伝えるには及ばなかったな」


 あの爆発では生きているはずがない。


 伝言も任務の内だが、伝える相手が死んでしまったのならば仕方がない事だ。


 いや、そもそもあのお方のお言葉を()()()()が賜る事自体がおかしいのだ。


 そう考えれば爆撃程度で死んでくれた人間には感謝しかない。


 任務は遂行された。

 弓矢を片してあのお方の元へ帰ろうとした時、声が降って来た。


「もう帰るのか。せっかちだな」

「ッ!?」


 咄嗟に他の木へ飛び移って、空を見上げる。


 そこにいたのは全身を黒い装束に身を包んだ、今回の抹殺対象である男だった。


「何故、生きて……!?」

「……まさかとは思うが、本気であの程度の爆破で俺を殺そうと思ったのか?」


 アーチ―が本気で驚いている様を見て、イサミも本気で驚いた。


 あの爆撃はまともに受ければ家は消し飛び、周囲も更地になっていただろう。


 だが、所詮はその程度の威力だ。

 

 アリエスやルナも似た様な事はいくらでも出来るし、俺が叩けば大地が割れるだろう。


「あの矢はエルフ族一の兵器だぞ! 人間如きが生きていられるワケがないだろ!」


 ん? 何か勘違いしているみたいだな。


「俺は人間じゃない。魔王だ」

「……は?」

「やはり知らなかったのか」


 証明するためにイサミは魔力を解放する。


 押し潰されそうな、圧倒的な魔力を前にしてアーチ―は片膝を突いた。


「ッ……こんな魔力、あのお方でも……!!」

「そのあのお方とやらが、これを命令した奴か」


 図星を突かれて、アーチ―の顔が強張った。

 そのわずかな変化をイサミは見逃さなかった。


 指を鳴らす。


「ッッッ!!」


 次の瞬間にはアーチ―が突然の痛みに悶え苦しみ、地面に落ちて行った。

 面倒だが、イサミも地面まで降りながら、アーチ―に痛みの原因を語った。


「お前の神経を過敏にさせた。具体的に言えば、肌を撫でるそよ風でも激痛が走る程にな」


 その間、アーチ―は奥歯を噛み締めて、痛みを堪えていたがこれではつまらない。


「“ズドン”」

「ギャアアアアアアアアアアア!!!」


 指先に圧縮した空気の弾丸でアーチ―の脚を撃ち抜いた。


 通常の何倍もの痛みだ。

 ついに痛みに耐えきれなくなったのか、アーチ―が悲鳴を上げる。


「依頼主は誰だ?」

「ッ、い、言わん……!」


 ほう。痛みに逆らうとは、普段ならば褒めてやるところだが、今は依頼主の名前を知りたい。


 どうやって名前を聞き出そうかと考えていると少し前にアリエスが「エルフの耳は一族の誇り」だと聞いた事があったな。試してみるか。


「なら、耳を斬り落とすか」

「ッ! 貴様は悪魔か!」

「魔王だ」


 効果は抜群だな。

 痛みで動かないのならば、精神的な苦痛で追い詰める。


 指先から放たれた空気の弾丸がアーチ―の耳を掠めて地面を貫通した。


「最後のチャンスだ。今、あのお方が誰かを言えば生きて帰してやろう」


 次は少しデカい空気の弾丸を用意した。

 エルフの耳どころか、頭部の一部も消し飛ばしそうだが知ったことか。


 アーチ―は悲痛に表情を歪めて、涎を垂れ流す程の痛みを感じ、ようやく口を開いた。

 

「エルフ王国第一王女、エヴァ様だ!」

 

 まさかの名前が出て来たな。


 心当たりがあるとすれば、奴隷商館を破壊した一件だろう。

 それとも街の周囲の森を好き放題に荒らしてしまったせいか……。


 どちらにせよこの男はもう用済みだ。

 このままあの街まで送り届けてやろう。


 イサミが指を鳴らすとアーチ―の身体が浮かび上がった。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! これを解いてくれ! 痛くて痛くてたまらないんだ!」


 だが、不思議な事を聞くものだな。


「俺はお前を生きて帰すと言っただけだが?」


 その言葉を聞いて顔を真っ赤にするアーチ―。

 

 これ以上ここにいると五月蠅そうだ。

 風に乗せて、街まで高速で飛ばした。


「貴様ぁああああああ!!」


 去り際のアーチ―の叫びもどんどんと遠くなって行った。


 仮にも魔王の家を爆撃したのだ。


 その程度で済んで幸運だった、とは思えなかったらしい。


 まあ、到着するまでは周囲の風に呑まれて地獄の痛みを味わう事になるだろうがな。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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