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15俺の女

 戦いが終わり、ボロボロの兄弟にはお帰り願った。


「待て! まだアリエスと剣を交えてえ!」

「ルナ姫、どうか私とお茶でも――――」


 などと少し五月蠅かったので、「あ?」と威圧してやると尻尾巻いて逃げて行った。



 ただ、新たな魔王が誕生したと知られたことは厄介だ。

 念のためにあの二人には、俺達の居場所は誰にも言うなよ、と釘を刺しておいたがそれも意味のないことだろう。


 魔王が誕生したとなれば、勇者協会が動き出す。


 アリエス級が何人来ようが、全て返り討ちにする自信はあるが色々面倒だ。


 まあ、遅かれ早かれいずれは通る道か。


 もう考えるのも面倒くさくなって来た。


 その時の俺に任せた!






 その日の夜。

 今日は色々とあったが、いつも通りに美味しそうな夕食が食卓に並んでいる。


 今日はすき焼きだった。

 卵を溶いて、濃厚なたれが染み込んだ肉と混ざり合っていく様を見るのは快感に近い。


 そして、この濃厚な香りが


 頬張ると一瞬で米が欲しくなる。

 急いで米を掻き込むと最高の味わいだ。


 最高だ。最高過ぎる。旨すぎて頬が千切れそうだ。


「イサミ様、願いが一つ御座います」


 そんな時だった。

 珍しくルナが物をねだったのだ。


「言ってみろ。何でも聞くぞ」

「ありがとうございます。では、イサミ様と生涯を添い遂げる権利を下さい」

「ブフォッ!?」


 言われて、一瞬で冷静になった。


 隣ではアリエスが驚きのあまりに口に含んでいた水を戻していた。

 いつもなら汚いと言うところだが、それどころじゃない。


「私は、私は――――イサミ様が好きです」


 両手を胸に当てて、告げた。

 心なしかルナの頬は桃色に染まっている。


「私はイサミ様に生涯を捧げたいです。身も、心も、全てを。可能なら、私はイサミ様の伴侶となりたいです」


 真っすぐに俺の目を見て言った。


 覚悟があり、信念があり、真剣に考えた末のルナ自身の願いだと分かる。


 俺の返答だが――――。


「ん。分かった」


 断る理由が無かった。


 そもそも、ルナはメイドとして働くようになってから、朝に起こしに来たり、俺が舌に合わせて味を変えようと試行錯誤したり、普段から凄く献身的なのだ。


 こんなにも自分に好意を向ける美少女がいてぐっと来ない男がいるだろうか。


 いや、いない。


「なっ、ぇ、え!?」

「何をそんなに驚いてるんだ?」


 アリエスが口をパクパクしながら、俺とルナを交互に見ている。


 ルナが近寄って、何やら小声で話し出した。


「もう。アリエスさんったら、素直になればいいのに」

「にゃ、にゃにおう!?」

「いい加減素直にならないと、今後も増えて行くと思いますよ?」

「ぬっ、だが、私は勇者で……」

「そんな事関係ないですよ」

「でも……」

「今言わないと絶対に後悔しますよ」

「ううぅ」


 こそこそ話しだが、俺は難聴系主人公ではないのでバッチリ聞こえていた。


 話し終わったアリエスが緊張した表情で俺と向かい合う。

 何度も俯いて、また顔を上げてと繰り返して、ようやく決心がついた様だ。

 真っすぐと俺の目を見て告げる。


「イサミ!」

「おう」

「私はお前が好きだ!」

「おう」

「勇者という立場だが、それを捨ててでもお前を支えたいと思っている!」

「おう」

「……それ以外に言葉は無いのか? これでも勇気を振り絞ったんだが」


 言葉と言われてもな。

 まあ、薄々はアリエスの気持ちには気付いていたし、そこまでの衝撃も無かった。


 ただ、こうして二人の女が俺に好意を向け、それを言ってくれたんだ。


 男として、やる事は一つだ。


「きゃっ」

「っ!?」


 右側にルナを、左側にアリエスを、二人を抱き寄せる。


「お前らは今日から、俺の女だ。生涯離れられないと思えよ?」


 二人にキスをして、そのまま寝室に運んだ。

第一章、終結。

第二章は11日月曜日からの投稿です。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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