12同門対決
双方共に並々ならぬ雰囲気を持っている。
「新たな魔王が出たって聞いてきたがよ」
「この様子なら、我々だけで討伐できそうですね」
そして、殺気を放った。
上等だ。俺も昼飯を邪魔されて気が立っている。
思う存分、殺り合おう。
そう思って立ち上がろうとしたが。
「ちょっと待て」
「イサミ様に御用があるのなら、まずは私を通して下さい」
気が付くとアリエスとルナが二人の前に立ち塞がっていた。
だが、アリエスはともかくルナまで――――
「そんなに心配しないでください、イサミ様。私、結構強いんですよ?」
ルナはわざわざ振り返って、笑って見せた。
「どうなんだ? アリエス」
ルナの修行を付けていたのはアリエスだ。
それは炊事洗濯だけではなく、戦闘も含まれる。
アリエスは振り返らずに少し考えてからこう告げた。
「……ルナは、凄いぞ」
それだけ言うと自分の相手に集中してしまった。
アリエスが相対している敵は、いかにも脳筋という
「こちらもやろうか……。兄者」
「ハッ! テメェにそう呼ばれるとは、何年ぶりだァ!?」
その問いにアリエスは答えない。
剣を召喚し、アレックスに切っ先を向けて集中していた。
この二人は泗水流の同門の兄弟子、妹弟子の関係だ。
アリエスはずっと苦手意識を持っており、今もなお克服出来ていない、小さい頃のトラウマそのものだ。
かつてとは違う、成長したアリエスの姿を見てアレックスは感心しながらも、自身の剣に手をかけた。
「それが、テメェの鞘なのか!? あァ!?」
「ああ、そうだ!」
言葉を交わすこともつかの間、次の瞬間には両者は剣をぶつけ合った。
同じ流派と言えども、アレックスの剣は荒々しく、アリエスの剣は流水の様に滑らかな剣だ。
アレックスの猛攻をアリエスが受け止め、いなしている。
「受けてばかりじゃあ、勝てねえぞォ!?」
「そんな事、分かってる!」
ガキンッと鈍い音と共にアレックスの剣を弾き飛ばした。
そのまま剣撃を繰り出す。
「泗水流 一の型 村雨!」
アリエスは俺が生み出した嵐を打ち消した時と同じ、剣を振るう。
「猛虎流 一の牙 喰裂!」
だが、アレックスはそれをいとも簡単に消し飛ばした。
そのあまりに猛々しいアレックスの剣にアリエスは恐怖に震え、唇を噛み締める。
「驚いたかァ? コイツは俺の流派、猛虎流だァ!」
アリエスとアレックスの泗水流は、将来的に流派を捨てる事を許された派閥である。
免許皆伝を受けた門下生は次々に自分自身の流派を開き、新しい世代に託して行く。
いわば、泗水流とは新たな流派の土台なのだ。
当然、アレックスも免許皆伝を受けた後に自身の流派【猛虎流】を開いた。
「お前はまだ泗水流のままかァ?」
「ッ」
その言葉がアリエスの心にグサッと刺さった。
勇者になり、泗水流の免許皆伝を受け、何年が経っただろうか。
アレックスが出て行った頃から、アリエスは一体何をしていたんだろうか。
分からない。アリエスがやって来た事の何が正しいのか、本当に正しかったのか。
ずっと暗闇を彷徨う気分だった。
でも――――。
「おい、手を貸そうか?」
――――あの男と出会ってから、どうでも良くなった。
イサミは魔王らしからぬ魔王だ。
確かに傲慢で、常に惰眠を貪る程怠惰で、いろんなものを欲しがるほどに強欲だ。
魔王らしいと言えば、魔王らしいと思うけれど、魔王とは思えない。
アリエスの知る魔王は他者を貶め、弱者を蹂躙し、大切な人を奪う者達だ。
だからアリエスは剣の勇者に目覚めた時から、魔王を殺す事だけを考えて来た。
全ての魔王を滅却するために。
本当にいつからだっただろう。
初めて会った時?
山賊から村を護った時?
それともルナがこの家になった時?
いつからかは分からないけれど、でもこれだけは確かだ。
「いらん。黙って見ていろ」
――――イサミが、好きだ。
(大切な人がいるから、私は剣を振るえるんだ)
「覚悟しろ、兄者。ここからの私は格が違うぞ」
「ハッ! やって見ろやァ!」
アレックスも獰猛な笑みを浮かべ、アリエスに真っ向から立ち向かった。
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